表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お化けの一生  作者: EFG
桜が屋敷にいる理由
36/58

除霊師


「…そうなんだ。相馬君もお化けが見える人だったんだ。

 よかったじゃないか。色々相談できるし。」


 相馬との一件があった日の夕食中、ハルは総一郎にその話をしていた。


「全然よくないよ!

 あの人、桜おねぇちゃんを無理矢理、成仏させようとしたんだよ〜まったく!」


 ハルはムスッとしながら、夕飯のカレーを一口食べて、総一郎に言った。


「まぁ、相馬君にも考えがあったんだと思うよ。

 それにしても、「除霊師」か…

 本当にお化けを消せる人っているんだね。

 なかなか興味深いよ…」


 総一郎はスプーンを持ちながら、考えている様子であった。


「…そういう話をしたかったわけじゃないんだけど…

 そういうとこだよ…総一郎…」


 ハルはスプーンを咥えながら、じとっと総一郎を見た。


「あ、そう?ごめんごめん。

 今度、相馬君にも事情を聞いてみるよ〜」


 総一郎はハルの言葉に慌てて、誤魔化すようにカレーを一口頬張った。

 ハルは自分の機嫌を治すようにため息をついて、総一郎に言った。


「まぁでも、確かにお化けを成仏させれるってすごいとは思うけどさ。

 どういう原理なんだろうね?」


 ハルの言葉を聞いて、総一郎は目を輝かせて興奮気味にハルに言った。


「そうなんだよ!不思議だよね!」


 この男は何故そんなにうれしそうなのかとハルは呆れた。


「…しょうがないから、聞いてあげるよ。

 どうせ、なんか思いついてるんでしょ?」


 ハルはカレーを食べながら、総一郎の話に付き合うことにした。


「流石はハル!僕のことよくわかってるね!

 えっとね。僕が考えてる理屈だと、ハルもそういうことができるかもしれないんだ。」

「そうなの?」


「お化けが以前話したように電波のような波の特性を持ってるならね。

 ちょっと難しいかもしれないけど、波を消すにはどうしたらいいと思う?

 例えば、縄跳びを僕とハルが片方づつ待って、ピンと伸ばした状態にしたとして、僕がその縄を揺らして波を作ったとする。

 ハルならどうやって、この波を止める?」


 総一郎はスプーンを揺らしながら、ハルに問いかけた。

 ハルはう〜んと考えて、総一郎に答えた。


「なんとなく、想像はできたけど…

 私なら、総一郎に詰め寄って、縄跳びを取り上げるかな?」


 総一郎は予想外の答えに面食らいながら、ハルに言った。


「な、なかなか攻撃的な発想だね…

 でも、僕は実験のためなら、たとえハルの妨害を受けても、決して揺らすのは辞めないと思うよ。

 さぁどうする?」


 ハルは確かにと、変に納得して、再び考えた。


「ん〜なんとなくだけど、総一郎とは逆に揺らす?」


「そう!その通り!すごいね!

 前から思ってたけど、ハルって賢いよね。

 理解が早いというか、なんというか。」

「ふふん。まぁね。」


 総一郎に褒められたハルは胸を張って、ドヤ顔を決めた。

 総一郎は嬉しそうに話を続けた。


「そう。逆の波をぶつけてやれば、波は消せるんだよ。

 じゃあ、逆の波がどういうものかと言うと、形が同じじゃないとダメなんだ。

 ただし、タイミングをずらした波になるんだよ。

 ちょっと待ってね。」


 総一郎はテーブルに置いてあったペンとチラシを取って、チラシの裏に波の絵を書き始めた。

 ハルも興味が出たのか、席を立って、総一郎の方に移動して、その絵を見た。


 総一郎はまず、二つの同じ形の波を上下に書いて、ハルに見せて、説明した。


「この二つの波をそのまま重ねると、二倍の大きさの波になるのは分かるかな?」


 そう言って、総一郎は二つの波の間に「+」と書いて、二倍の大きさの波を二つの波の下に書いた。


「まぁ、なんとなく。」


 総一郎はうんうんと頷いて、隣にまた同じように波を2つ、上下に書いた。


 しかし、今度の下の波は山一つ分ずれた波になっていた。


「じゃあ、この二つの波を重ねるとどうなりそう?」


 総一郎はハルに問いかけた。


「あぁ〜確かになんか波はなくなりそうだね。」


 ハルは絵を見ながら、納得したようだった。


「うん。こんな感じで波を消そうと思ったら、同じ形の波をタイミングをずらして、ぶつけてあげればいいんだよ。

 だけど、ちょっとでも形が違うと波が残っちゃうんだ。

 音楽プレイヤーのノイズを消したりする機能はこの原理を利用してるんだ。」

「へぇ〜そうなんだ。

 音楽プレイヤーなんて持ってないから、ありがたみが分かんないや。」


 ハルは折角の総一郎の豆知識を台無しにした。


「と、とにかく、「お化けの波」っていうのが存在するとすると、その「お化けの波」と同じ形の波をタイミングをずらしてぶつければ、お化けを消すことが出来るってことなんだ。」


「じゃあ、あいつは「お化けの波」を出してるってことか。

 でも、私にも出来るかもってのは、どういうこと?」


 ハルは総一郎の初めの話に戻した。


「お化けの見える人じゃなくても、少なからず、「お化けの波」と同じ波長の波は出してると思うんだ。

 皆の「思い」が集まってお化けができるかもってのは、前に言ったと思うけど、要は人の「思い」っていうのは「お化けの波」のことで、これが重なることでお化けが見える人には見えるだけの強さになったのかなと考えてるんだよ。

 で、お化けが見える人ってのはその「お化けの波」っていうのを受け取るだけじゃなくて、他の人よりも出せるんじゃないかなってね。

 もしも、「お化けの波」を出せるんなら、訓練次第では出すタイミングをずらして、お化けを成仏させることもできるんじゃないかと思ったんだよ。」


 総一郎は楽しそうに説明した。

 ハルは分かるような分からないような感じだった。


「よくあるお守りとかお札とかは「お化けの波」を半波長分ずらした「思い」を込めてるってことじゃないかなと。

 それに除霊師とか霊能力者とかって、皆、お化けが見えるよね?

 別にお化けが見えなくても、お化けを除霊できる人がいてもおかしくないのに。

 ってことは、お化けが見える人っていうのは「お化けの波」をコントロールして、作り出すこともできるのかもって話だよ。」


 総一郎は気づかぬ内に専門用語が出てき始めていたが、話し終えて、すっきりしていた。


「ん~結局、お化けの見える人はお化けを作れるし、消すこともできるって話?」


 ハルは最後の方は良く分からなかったが、簡潔に今までの話をまとめた。


「そういうことになるね。

 やっぱり、ハルは理解が速いよ。」


 総一郎に褒められたが、ハルは総一郎の話を聞いて、浮かない顔をしていた。



「…じゃあ、私が桜おねぇちゃんを作ってる可能性もあるの?」



 ハルは不安そうな顔をしながら、総一郎に聞いた。

 総一郎は少し考えて、ハルに答えた。


「…可能性としてはあるかもしれないけど、少ないと思うよ。

 だって、ハルは桜さんのことを知らなかった頃から、桜さんのことが見えてたからね。」

「そっか…」


 ハルは納得しつつも少し迷ったが、どうしても気になって、総一郎に聞いた。


「…でも、今、桜おねぇちゃんが成仏できないのって、私が無意識に「お化けの波」っていうのを出してるせいとかってあるんじゃないの?

 私が桜おねぇちゃんを縛ってるってことは無いの?」


 総一郎はハルの様子がおかしいのに気付いて、真面目な顔をして、ハルに聞いた。


「…ハル。相馬君に何を言われたの?」


「い、いや。桜おねぇちゃんを縛っているのは私かもって言われて、ちょっと気になってね。」


 ハルはごまかし笑いをしながら、総一郎に言った。

 総一郎は余計なことを言ってしまったと思った。


「そんなことは無いと思うよ。

 説明しといてなんだけど、今まで僕が話してきたことはただの仮説だからね。

 なんの確証もないし、ただの戯言だと思って、気にしないでいいよ。」

「気にしてなんかないよ!

 ただ、どうなんだろうな~って思っただけだから!

 話は終わったし、カレー食べよ~」


 ハルは少し強がっている様子で総一郎に答えたのだった。


 桜は二人の話を聞く様子もなく、神山に教えてもらった攻略法でゲームに熱中していた。


 続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ