ようやく特訓開始です
「見てて」
マルシーンはそういうと持っていた杖をそっと構える。
ゆっくりとそれを動かし、片方の手を空へ向けた。
すると、マルシーンの手から光がぱっと浮かんで消えた。
「分かった?」
「え? なにが???」
「僕はいま、地脈の気を練ったよね」
なるほど、分からん。
「君には素質は十分ある。 分かってるよね。 意識を集中して杖を見て」
そう言ってもう一度同じ動きを始めた。
意識を。
意識を集中して杖の動きを見た。
なにかぼんやりしたモヤのようなものが杖の先にまとわりついている。
「あ。 なんか見えた」
「でしょ? で、これを身体に送り込んでー」
ぱっ
光がまた放たれて消えた。
「こういうこと。 分かる?」
ぬぬぬ。分かるけど分からん。
「できるはずだから。 やってみて」
僕は静かに息を吸い、杖を構えた。
そっとそれを動かす。
くっと杖になにかが引っかかる感覚を覚えた。
これを身体に……どうやって?
ひとまず杖に意識を向けた。
そして手を空にかざす。
どーーーーーーーーん!!
手からは衝撃波のようなものが放たれた。
「んー……悪くはないんだけど。 やっぱ制御できてないね」
マルシーンはそう言うと、手首に付けていたブレスレットを僕に渡した。
「こうなるだろうなって、持ってきたんだよね。力を制御するタリスマンだよ」
受け取ったブレスレットを身につけもう一度。
しかし、同じ結果。
「まあ、夜まで繰り返してみて」
そう言うとマルシーンは立ち去ろうとした。
「え、もうちょっとテクとか教えてほしいんだが」
「こればっかりは感覚的なことだから。 そのうち分かるよ」
いやいや、まだそこが分からないから教えてほしいんだが……。
「ちょっと面白そうな魔術書、見つけちゃったんだよね。そんなわけでまた後で~!」
楽しそうな声でそう言って走り去っていった。
ちょっと待てや、おい。
……仕方がないので、ひとりで練習をすることにした。
意識を集中して。
そう。そうやって。
僕はしっかりと握った杖を構えた。
特に書くことがない。