第2話 魔法と師匠
すいません、寝坊して、投稿が遅れました。
本当に申し訳ございません!
「さて、魔法の授業を始めるんだけど。リューも増えたことだし、少しおさらいよ。魔法とは何か、馬鹿娘、答えなさい。」
「フンッ、魔力を使って何か事象を起こすことよ。」
「そう、正解。魔法は非常に重要よ。もちろん知っているだろうけど、物を加工することにも必要だし、物を食べられるようにするのにすら必要よ。分かったわね?」
「はい。」
「論より実践、とりあえず、魔法を実際に見せてあげるわ。『接続、我が魔力は世界に浸透する。』」
キルアが呪文らしいものを唱えたにも関わらず、何も起こらなかった。
俺はそれが不思議で周りをキョロキョロ見回してみたが、やはり何も変化はなかった。
「意外と可愛らしい反応をするのね。今のは始動呪文と言われるものよ。これを唱えない限り、どんな魔法も絶対に発動しないわ。」
「重要なんですね。」
「えぇ、ただし、この呪文を唱えることで副作用があるわ。魔法を使えるようになる代わりに、本来ならダメージを負うことがないことでもダメージを負うことになるわ。」
「どういうことですか?」
俺がそう聞くと、キルアは黙って手元にあったタバコを手に取った。
そして、タバコをクシャッと握りつぶした。
「えっ!?」
「驚いた?こういうことよ、本来なら、このタバコもどんなに力を入れても変形することもないわ。だけど、始動呪文を唱えれば、物理的な攻撃で生物以外にダメージを与えることをできるようになるわ。」
今度は、キルアはそばにあった机を殴った。
俺は机を殴ったキルアの手が赤くなっていることに気づいた。
「ただ、副作用は、逆に生物以外でダメージを受けるようになるわ。つまり、私が机を殴ったら、こういう風に手にダメージが入るということよ。」
「師匠、なぜ、生物以外なんですか?」
「いいところに目をつけたわね。生物は生物以外と比べて、保持している魔力量が多いから、この現象が強いのではないかと一般的に言われているわ。」
「言われている?」
「そうよ。本当のことは分かっていないわ。ただ、まぁ、それが1番納得できるということね。」
「なるほど。」
おそらくだが、物理攻撃が無効化される現象は魔力によって発動されていて、それを上回る魔力でないと突破できず、魔法の場合は魔力よりも優先され、物理攻撃無効化現象が打ち消されるということだろう。
これも予想だが、魔力量が相手よりも異常なほど高ければ、魔法を使わなくても物理攻撃無効化現象を打ち消すこともできるのだろう。
「ま、そのことはいいわ。じゃ、魔法の方に移るわね。魔法の実践もしてあげるわ。」
「『炎よ、玉となりなさい!』」
「うわっ!」
「こらっ、馬鹿娘!勝手に魔法を使うな!」
「痛っ!何するのよ!?」
リディアがいつの間に始動呪文を唱えていたのか、いきなり俺の隣で炎の球を作る魔法を使ったので驚いた。
それを見て、キルアがリディアの頭をはたき、炎の球はボワッと一瞬勢いが強くなった後、霧散した。
リディアは痛かったのか、少し涙目でキルアのことを睨んでいる。
手ではたいただけでリディアがダメージを負ったということは、俺の予測が正しい可能性がある。
「まぁ、今、この馬鹿娘が先走って、魔法を使ったけれど、魔法には特定の呪文というものが存在しないわ。自分がその魔法をイメージできる呪文を魔力を込めて唱えれば、発動するわ。まずは、始動呪文を唱えなさい。」
「『接続、我が魔力は世界に浸透する。』」
始動呪文を唱えると、知覚範囲が広がったような感覚がした。
魔力は第6感のようなものらしい。
意識を集中させると、俺から半径1mくらいの範囲ならある程度、知覚できるようだ。
「『火よ、つけ。』」
右手の人差し指を上に向けて、呪文を唱えると人差し指の上から小さな火が発生した。
初めての魔法の割にすごいしょぼいが、魔法は魔法だ。
すぐにフッと火は消えてしまったが、結構うれしいものだった。
「ついたわね。それが第一階位魔法よ。」
「第一?」
「あら、説明してなかったかしら?魔法には階位が存在するのよ。」
それからも魔法の説明が続いた。
魔法の階位については、下から順に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、第九、第十が存在する。
そして、魔法は攻撃魔法、防御魔法、操作魔法、加工魔法、治療魔法、付与魔法、補助魔法などが存在する。
攻撃魔法、防御魔法、治療魔法は名前の通り、攻撃、防御、治療を行うものだが、操作魔法は物体に触れずに物体を動かす魔法、加工魔法は物体を変形させる魔法、付与魔法は魔法を物体に付与する魔法。
攻撃魔法の階位は威力と攻撃範囲で決まり、防御魔法は防げるダメージ量と防御範囲で決まり、治療魔法は治療できる傷の大きさや深さ、一度に治療できる範囲によって決まる。
操作魔法は動かせる物体の重さや大きさ、物体操作の精密さで決まり、加工魔法は変形できる物質の硬さと大きさと緻密さで決まり、付与魔法は付与できる魔法の階位や魔法の数で決まり、補助魔法は一度に補助できる相手の数やその効果の度合いで決まる。
魔法師にも階位が存在し、使える魔法の最高階位がその魔法師の階位になる。
つまり、第一と第六しか使えなくても、第六階位魔法師となる。
魔法師は階位が高ければ、高いほど尊敬される。
そして、魔法の呪文は人それぞれなので、自分で一番しっくり来る呪文を探さなければならない。
決まりきった呪文は始動呪文と終結呪文のみ。
終結呪文は『切断、我が魔力は世界を拒絶する。』で、これを唱えることで物理無効化現象が元に戻る。
ざっとまとめれば、こんな話だった。
「で、まぁ、今日はこれで終わりよ。」
「はー、やっと終わった!」
「あ、こら、馬鹿娘!」
リディアはドタバタと走って、部屋から出て行ってしまった。
まぁ、仕方ないかもしれない、俺のせいで復習のみになってしまったのだ。
リディアはまだ9歳だ、今日の授業は面白くなかったことだろう。
「はぁー、まぁいいわ。で、質問はある?」
「えーと・・・さっき僕が使った魔法と姉様が使った魔法は何ていう魔法だったんですか?」
「あれ、言ってなかった?リューが使ったのは第一階位魔法の『灯火』、馬鹿娘が使ったのは第三階位魔法の『炎球』のなりそこないよ。」
「なりそこない?」
「本来の『炎球』は敵に向かって飛ばすものだからね。」
「なるほど・・・ありがとうございました。」
「いいのよ、馬鹿娘と違って、礼儀正しい子は大好きよ。ま、もう質問はないわね。じゃあ、授業は終わり。とっととこの部屋から出ていきなさい。私もやることがあるから。」
「はい、ありがとうございました、師匠。」
俺はお辞儀をした後、部屋を出て、すぐ立ち止まった。
キルアには聞かなかったが、少し不思議に思っていることがあった。
魔法の呪文は決まりきっているものではないということについてだ。
魔法を使うには呪文を唱えないといけないようだが、自分なりの呪文を見つける必要があるというのが不思議だ。
自分なりの呪文を見つけるということは魔法を使用するためのイメージを補完するためだと考えられる。
つまり、詠唱なしで魔法を使える可能性も出てくることになる。
「リューテスラ様、どうなさいましたか?」
「・・・何でもない。」
俺は一旦、考えるのをやめた。
考えるなら、自分の部屋に戻ってからでもいいだろう。
そう考えて、俺はガルドを後ろにつけたまま、自分の部屋に向かって歩き始めた。
お楽しみいただけましたか?
ブックマークや感想、広告の下の☆マークでの評価をよろしくお願いします。