プロローグ
「ハァッ、ハァッ、きっつ、、、」
普段ろくに出歩かない性格で、その副産物とでもいうべき贅肉がさらに自分の体力を消耗しているのがわかった。
なんで走ってるのかって?その元凶たる贅肉を減らすため、、、ということではもちろんなかった。今の体型で満足してるわけではないし、ダイエットだって挑戦してみたが、この性格だ。続かない。改めてそんな自分に恨みが募り始めている自分がいた。では、なぜそんなに走ってるのかというと人間誰しも生存本能、、、いや、そんなたいしたものではない。ただ、いつもの自分となにも変わらない。目の前の現実から逃げているだけなのだった。
「なんなんだったんだ、、?あれは、、オオカミ?」あの三角のようなピンと立った獣耳を見て、既に絶滅したであろうオオカミをなぜ思い起こしたのかというと、他でもない、ここはオオカミの祀られている神社周辺であり、オオカミの目撃情報が今もなお、あるからであった。
「フッ、とんだ獲物が入ってきたもんだよ」この状況で、こんな冗談をいえる自分にびっくりではあるが、腹をすかせたオオカミと贅肉をたっぷり詰め込んだ人間という画を想像して笑いがこみ上げそうになっていたため、当然のことではあった。
カサッカサッ! 藪の中から、明らかに動物の気配があり動いた音がした。あの時、暗闇の中で確かに獣耳のようなものと2つの光る目がこちらを見ていたことを思い出し、ゾッと身震いした。