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63話 エリクサーの発表会だにゃ

 まりのの返事を聞いたフェイザー製薬は早朝からクワズイモの葉から出ていた露を採っていった。中林と不和になった成井部長はこのプロジェクトから完全に中林と鹿野を外して自分を慕っているメンバーのみで色々画策していたので、成井部長の行動が全く判らなくなっていた。


 成井は社長のところへ行き、3本エリクサーを仕入れる事が出来たことを伝え、前回の損失を考えてエリクサーをオークションで販売することを進言して、社長も1本だけ残し、残り2本はオークションでの販売を許可を出した。


 当然薬事の関係もあり、薬とは出せずに一般のオークションサイトとアメリカの有名なササビーに出すことが決定されて、マスコミに発表された。


 それを知った中林と鹿野は絶対になにか天罰がありそうだと思い。会社をやめることを決心して、すぐに退職届けを提出しにいった。


「なんだ中林と鹿野は辞めるのか? せっかくいまからこの会社が伸びていくのにバカだな」


「何度もいいましたが、あの薬を営利目的で使うと天罰がおきますよ?」


「天罰? あはははそんなものあるか……」


「この薬が神の薬以外になんだと思いますか?」


「これは神社の土になんらかの成分を出す微生物がいるんだよ。神様なんているわけないんだ」


「まぁいいです。お世話になりました」


 2人は成井のところから出て


「鹿野、お前もやめなくていいだろ?」


「嫌ですよ、絶対天罰ありそうだから」


「これでまたあの親子に対してなんかマスコミとかがアタックしそうだな。最後に謝りにいくかな」


「私もついていきます」


「じゃ、今からいくか」


 それからしばらくして2人が俺の家を訪ねてきた。来夢が玄関を開けると2人が深々と頭を下げて


「うちの会社がマスコミにエリクサーの話をしまして、もしかしてお嬢さん達に迷惑をかけるかもしれないと思い、謝りにきました。私も納得いかなくて会社は辞めてきたのですが、お二人に迷惑をかけるのは忍びないと思い謝罪にきました」


 この2人は何も悪くないじゃん。むしろ被害者では?


『まりの、この2人に話をして欲しいにゃ。少し姿を見せるにゃ』


 神棚の横に新設してもらった俺用の神棚に光りながら座った


『まりの、いいかにゃ』


「はいなの」


『そこの2人は仕事を辞めたのであれば手伝うにゃ、ちゃんと人助けも出来る仕事をするにゃ』


「猫神様が二人共仕事辞めたらうちで働け、人助けをしろって言っています」


「「はぁ?」」


『ちかいうちに来夢の会社へ入るにゃ』


「もうすぐ出来る来夢ねぇちゃんの会社へはいれって」


 2人は神棚の上を拝みながら


「この子の言っている事は本当でしょうか?」


 俺は黙って2度頷いた。


「わかりました。前向きに検討しますが、気持ちの整理も必要なので今日は失礼します」


 うちを出た2人はすぐに顔を見合わせて

「「あれって、本物だよな(ですよね)?」」


 2人はうなずくしか出来なかった。


 マスコミは当然のようにまりのの事を調べ上げてインタビューをしようとしたが新田が手配した警備員に阻まれてインタビューは一切出来なかったが、しつこいマスコミのリポーターは必ず猫に引っ掻かれ、猫にオシッコをかけられるのが定番になり、まりのにしつこくすると服はボロボロでオシッコ臭くなると噂が立ち、これ以上何かしたら猫神の祟りに合うのではないかと恐れられてだんだん近寄ってくる人も減っていった。それでもしつこいリポーターは俺が全力を上げてプライベートを調べ上げて、他の週刊誌へ情報を送った。まりのに関わったリポーターは不幸になるという噂まで立ってしまったが後悔はしていない。まりのの平和の為には必要なことだ。


 だんだんといつもの日常が戻ってきた頃にオークションが開催されて日本のオークションサイトでは13億で落札され、アメリカに至っては45億で落札された。この金額で治らないと怒るよな……

 まりののせいにされるかな?


 何を考えたのか、治療も公開で行うということになりテレビでの生中継となった。患者はIT企業の社長で結構有名な次田社長で末期のガンで余命宣告も受けているらしく、もうこの薬にすがるしかないという事だった。


 モニターの向こうにはやせ細って病的な感じの次田社長と満面の笑みで迎える

 フェイザー製薬の小滝社長と成井部長の顔が見えた。えらく豪華な薬瓶に入った銀色にきらめく液体を高らかに掲げている。エリクサーは金色なんだよな……


 次田社長は震える手でその薬を手にとり眺めていた。発表があってからフェイザー製薬の株価はうなぎのぼりで5倍近い株価になっており、世間でも噂を信じてエリクサーが出来たという人と、それは眉唾だという人の割合が拮抗していた。ただ吉見総合病院で末期に近い患者が数人水を飲むだけで治ったという話は多数の証人もいたし、実際に

 ちかや 絢香達を調べ上げたマスコミもいたので、今ではエリクサー完成を信じる人が多くなっているような状態だった。俺はとりあえず新田や来夢にはフェイザー製薬の株を全力で空売り注文をさせてある。


 CM開けの中継でいよいよ飲む時間になり、次田社長はじっと眺めていた瓶の蓋を開け、一気に飲み干した。すぐに次田社長の身体が光りそしてゆっくりと光が消えていった。その姿をみた小瀧社長は簡易的なエコーを持ってきて社長の身体を検査技師に調べてもらっていた。次田社長の様子も顔に赤みが指し、健康そうにみえていた。検査技師の診断では、ガンの痕跡は見えないという事で、精密検査をしないといけないが、お昼まであったガンが少なくとも今は消失していると判断された。

 その結果を見て株式の時間外取引ではストップ高になっており、30分の休憩後に次田社長の記者会見が行われる事になった。


 番組ではその30分でパネリストが侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が行われていた。そろそろ30分過ぎたあたりになったが、一向に社長が出てこない。その間CMやなにやらの時間稼ぎが行われていたが、ようやくドアが開けられるとそこから出てきたのはベッドに横たわる老人の姿だった。ベッドごと運ばれた社長はマイクを握ると、ガンは治ったが老化がすごい速さで進みこのまま進めばもうすぐ死ぬだろう。どうせガンで死ぬ運命だったから後悔はないが、この薬は使っては駄目だと言い残し戻っていった。


 記者会見はすぐに打ち切られ、番組では今度は薬に対する批判ばかりを言い出すような事態になった。当然株の時間外はストップ安になり明日以降もしばらくは寄り付かないだろう。


 さらにこのタイミングでフェイザー製薬があの寺でやった所業を暴露する番組もあり、フェイザー製薬のブランドは地に落ちてしまった。

 今回の結果でアメリカでのオークションは落札後中止が決定し、違約金をフェイザー製薬は請求されることになった。


 当然次田社長側からも偽物を飲まされたという事で支払いも無く、日本のオークション会社からも違約金の請求があり責任を取って社長は辞任し、部長は僻地の子会社の平社員として飛ばされた。


 被害にあった次田社長には元フェイザーの中林とまりのに行ってもらい、本当のエリクサーを薄めた物を10本渡してきた。毎月1本飲むと元の年齢相当まで戻る事、これは猫神様の温情で決して一度に飲むこと無く、少しずつ飲むことを約束させた。実際に前に飲んだやつは活性が強すぎて老化が進んだことを中林に説明させたので、絶対無茶して飲むことはないだろう。もちろんガン細胞は完全に消えて10本飲んだら以前の健康体に戻れることは説明している。それと同時に猫神社再建計画の協力者になってもらえることは約束させた。


 だんだん良くなる次田社長について社長は猫神社のご利益を金で買う行為が間違っていたと考え、今は猫神社に感謝しながらお参りしていたら、猫神様からパワーをもらって若返ってきたとインタビューで話をしてくれた。


 エリクサー騒動のおかげで、だんだんと猫神社の協力者が増えてきて夢に近づいてきたような気がする。


これで第3章が終了になります。


明日から幕間を数話投稿します。


引き続きよろしくお願いします。

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