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31話 お仕置きだにゃあ~ ジン編

 誰もいなくなった駅前で、伊山は自分の車のドアを全て開けて、ボンネットも開けた状態で猫がどこかに隠れていないかを探していた。時々見えない死角から鳴いてみる。


【おーい誰かこの辺にいるか?】

(にゃ にゃあ にゃあにゃああああ?)


 伊山はビクッとして俺を探している。


【お前誰だ?】

(にゃにゃにゃあ?)


【俺はトラって言うんだけど、こいつは、他のところで俺の友達を殺そうとした奴なんだ。だから今復讐中でよければ手伝って欲しい。あまり近づかないでまわりで鳴き声聞かせるだけでいいから】


【なんだと、危ない人間だな。俺の仲間と少し脅してやるよ俺はチャチャって名前だ】


 チャチャは知り合いを数匹呼んでくれた。もちろんその間の会話を含め伊山には猫の鳴き声にしか聞こえない。しかも猫が数匹に増えて自分を囲むように鳴いている。3人には強がったが、今はとても怖く感じられ、だんだん恐怖で自分が何をしているのかさえ解らなくなったようだ。後ろのトランクからスリングショットを出そうとしている。


【チャチャありがとう! これ以上は危ないから近寄らないがいいよ!】


【大丈夫だ、離れてから脅すから】


 俺は猛スピードで交番へ飛び込み、目の前にいた警察官の裾を引っ張ると警察官も気がついたようで、俺を抱っこして言い放った。


「おっ迷子猫ちゃんですか? かわいいでちゅね!」


 はぁ?


 おっさんの言うセリフじゃねぇ!!


 くそぉしゃべるわけにもいかないし、どうするかな? 机の上に出前に払う準備なのか1000円札が置いてある。おれは警察官の腕からジャンプしてその1000円札を咥えて走り出した。


「おい、窃盗だぞ! 待て! 下津追うぞ!」


 その警察官と下津と呼ばれた若い警察官2人が追いかけてくる。そして俺にちょうど追いついた先では、目を血走りながらスリングショットを猫に向けている伊山の姿があった。俺は1000円札を警察官の肩に乗って目の前に差し出す。警察官もとっさに1000円札を掴んでポケットにいれると、目の前の光景を冷静に判断する。


「おい、そこの男!何を猫に向けている。ゆっくりとそれを下に置きなさい」


 伊山は突然の声がけにびっくりしてスリングショットを構えたまま警察官の方を向いた……


 とっさに下津巡査は銃の安全装置を外して伊山に銃を向けた。


「そのまま下ろしなさい。下ろさなければ撃つぞ!」


 下津巡査の声でようやくハッと気がついた伊山は


「下ろすから打たないで……」


 そう言いながらスリングショットを下に置いた。俺はその間にアイテムボックスにいれておいたシロの血がたっぷりついた毛布を伊山のトランクに放り込んでやった。


「そのまま床に伏せて手を頭の上におきなさい。あなたを軽犯罪法違反で現行犯逮捕します。21時19分逮捕!」


 下津巡査が伊山を制圧逮捕している間に井垣巡査長はトランシーバーで応援を呼んでいた。まもなくパトカーのサイレンが数台聞こえてきた。これで伊山は社会的制裁を受けるだろう。あとからまだいじめる予定だけどな!


【チャチャありがとう! おかげで復讐ができたよ。】


【猫をいじめる奴がいなくなることは俺らにとっても良いことだから気にすんな!またなにかあったら呼んでくれ!】


 そう言い残して仲間の猫とどこかに消えていった。俺はちょうど帰ろうと思った瞬間に後ろから捕まえられた。


「猫ちゃん!ありがとね~猫ちゃんのおかげで手柄をあげられたよ!」


 そう言いながらキスしようと顔を近づけてきた


「にゃああああああああ!」


 大声を出しながら猫パンチを繰り出す!


「井垣さん、その子猫キスされるの嫌がっているから、やめてあげてくださいよ!」


 先程大活躍の下津巡査に助けられた。


「俺のキスを嫌がるとは、お主オスだな!」


 正解! でもメスでも嫌がると思うぞ……



「おい、なんだこの血痕は!」


 遠くの方で大きな声が聞こえた。応援で来た警察官が伊山に問いただす。


「えっ? 何? この血のついた毛布は?」


「こっちが聞いているんだよ。この血はなんだ?誰か殺したのか?」


「知らねえよ!こんなもん!」


「知らんわけあるか? お前の車だろ?」


 無線でやり取りしていた警察官が、照会結果を持ってきた。


「この車は伊山 隼一名義でZ号照会ヒットしました。被疑者の伊山 仁もS1号S2号照会ヒットです」

(Z号照会=暴力団照会 S1号照会=少年犯罪 S2号照会=暴走族)


「いがいと大物を捕まえたのか?親は暴力団で本人は暴走族か悪のエリート街道まっしぐらだな。血痕のついた毛布は犯罪の可能性ありで事務所と自宅と家宅捜索できそうだけど、マル暴にまかせないといけない事案になりそうだ」


 結局大掛かりな事件性もあるとの事で、更に応援の覆面やら強面の刑事さんやらが集まってきて、井垣巡査長と下津巡査は最初の説明をしただけであとは、ほぼ待機の状態だった。そのせいで、俺は井垣巡査長にずっとモフられていた。キスしようとしてきた時だけは全力で拒否したせいか、後半は諦めてやさしくなでてくれたのがとても気持ちよかった。おっさんのくせに撫でるのがうますぎる……


 とりあえず伊山への第1弾は終わったので帰るかな?本当はもう少し早く変える予定だったが抜け出そうとすると上手く捕まえられなかなか井垣巡査長の手から抜けられなかった。流石に書類を書かないといけなくなったらしくようやく離してくれた。これはチャンスだな。おれは井垣巡査長と下津巡査に向かって頭を下げ


「にゃあああん」


 ありがとうの礼をして交番から脱兎のごとく逃げ去った! 捕まったらまた数時間コースだ!

 人影の無い場所を見つけて自宅へと転移した!


『ただいまにゃ』


「おかえり! お風呂用意しているわよ!一緒にはいる?」


『ありがとにゃだけど、一緒は遠慮するにゃ』


「チッ 遠慮しなくていいのに……」


 俺がいなくなった交番では「あの猫、頭が良い猫でしたね?」「そうだな、あの1000円は俺たちをあの現場へ連れて行くためだったんだろうか」と井垣巡査長と下津巡査は話をしていた。




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