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演奏を聴きに言った話。

作者: 花月 餡澄

 市立柏の吹奏楽部をご存知でしょうか?

 コンクールでは毎年当たり前のように座奏、マーチング共に全国金賞を取り、出張で海外に演奏をしに行き、楽器屋さんなどまでもスポンサーになっているほどの端的に言うならば、超、超、ちょーうすごい吹奏楽部です。

 部員は220人だとか……多すぎませんかね?


 そんな市立柏……略してイチカシのオータムコンサートに、なんと私たちの学校も恐れ多くも鑑賞させていただけることになりました。

 大丈夫ですかね、楽器下手だからイチカシの人にいじめられたりしませんかね?

 あ、私は吹きませんか。


 とにかく、私たち雑魚吹奏楽部はてってこてってこ柏のホールに向かいます。

 これがまた、距離が意外と長いんですよね。いっぱい人が来るんだから、もっと大通りにホールを建設すればいいのに。


 どのくらい歩いたでしょうか。結構あったと思います。

 体感なので、私の運動能力がないだけかもしれませんが……


 まあとにかく、そんなすこし疲れた体を引っ張ってなんとか自分の席に向かいます。


 ホールに入ってしばらくして、イチカシの演奏が始まりました。

 始まってから数分後私は早速、イチカシのオータムコンサートで船を夢の世界へ向けて漕ぎ出していました。

 かっくんかっくんとヘドバンしつつ、一曲目、二曲目が終わり、三曲目の真ん中で、あることが起こりました。


 演奏は悲しくも静かな部分です(多分)。

 そんな中私の疲れた体は、右足太ももの筋肉を思い切り痙攣させました。

 何を言ってるかわからない?端的に言いましょう。


 弱奏部で、物音一つ立てるのが申し訳ない中、いきなり右太ももがつったのです。


 その時、私の頭は爆発しました。覚醒しきっていない頭では完全に処理落ちします。もちろん、エラー吐き出しまくりです。


 え、え、まって、え?いや嘘でしょおかしいってなんでこんなタイミングで足つんの?いじめ?神様のいじめ?ちゃんと聞いてなかったせいでいじめられてるの?ごめんなさいちょ待ってまじでいたいどうしようっ!


 と、まあ纏めるとこんな感じの、しかしこれより何倍もバカっぽくて長ったらしい文章が頭の中にあふれたその瞬間太ももの痛みが一気に強さを増したように感じました。


 このままではやばい、どうにかしなければ。しかしここはホールの座席です。

 動く場所もありませんし、演奏中なので立つこともできません。

 八方塞がりの袋の鼠です。


 ここで私の無駄なことしか考えていなかった脳みそがようやくまともに動き始めます。

 座ったまんまでお腹を太ももの上の部分につけるようにすれば伸びるのでは──?。


 それしか案がない現状、それをやらないなんてことは出来ません。


 私はグッと深く上半身を沈めました。

 痛みが走ります。これも日頃の運動不足のせいでしょうか。最近、見て見ぬ振りをしてましたが太ってますもんね私……


 とにかく、のびろーのびろーと念じながら続けるとなんとか少しずつ何度も何度も繰り返すようにやると、なんとか気にせずにいられる程度の痛みになりました。


 一安心しつつも、演奏を聴いて(痛みでそれ以降の演奏は一睡もできませんでした。良いのか悪いのか……?)休憩に入ると、となりの席のおばあちゃんが心配したように私に向かって言いました。


「大丈夫?お腹でも痛いの?」


 正確にはお腹ではなく太ももですし、理由がただの運動不足です。


「だ、大丈夫ですぅ……」


 必死に口角を挙げながら震えた声で言うのが、精一杯でした。


 そしてその瞬間に、誓いました。

 運動しよう、と。

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