19.予想は外れなかった
有のままに起こったことを話すとワズンさんが勝手な行動をしたら何かに踏まれて押しつぶされて死んだ。
いや、それはわかるけど問題なのはその踏み潰した奴がまだこちらへ敵意をむき出しにしており見逃してくれそうにない事の方だ。
「…何だありゃ?」
「大きいハリネズミ、…かな?」
埃が晴れてきて姿が段々と明らかになる。
四メートルサイズのハリネズミだね?
ただし針の大きさはサイズが巨大なためとても大きくなっており危険そうだ。
極めつけはこいつ左右に四本ずつ足があって計八本の足を持っている所かな?
「普通のハリネズミですね」
「あんな変なのが普通でたまるか…」
サカキさんの突っ込みは放置しておくとして、あれは非常に厄介である。
あんな針山で刺されたら良くて重症、悪くて即死だろうね。
足も八本あるから遅いとかは無さそうだけど実際に動いてみるまでは把握できない。
「急いでください!ハシゴの上はセーフエリアになっていますわ!」
ハシゴの上の方からアンズの声が聞こえる。
という事はハシゴを上り切ったら逃げ切れるのかな?
「方針は決まったな。さっさと逃げるか?」
「そうですね。あいつがどんくさい事を期待しましょう」
そう言ってハシゴへ向かって駆けだそうとしたその時だった。
こちらを睨んでばかりで動いてない化け物が、まだ動いていないけど顔を少し引っ込めている。
足は何故か力強く踏ん張っているようだし…何をしようとしてるのかな?
ジャンプでもする前兆?
そう思って身構えてたけど頭を引っ込めて?
その刹那何かがたくさん全方位に拡散する。
こちらにも無数の物が何か飛んできているのが…まずい!?
「全員柱の陰へ!」
そう言うと私も柱の奥に身を投げ出す。
身を投げたした直後にあちらこちらで何かがぶつかる音やコンクリートの柱がえぐられはじけ飛ぶ音が鳴り響く。
少し視線を上に向けるとコンクリート片や細長い…あれはハリネズミの針?が宙を無数に舞っている。
…ってあれが落ちてくる!?
私は頭を両手で押さえるとそのまま横になったまま耐えた。
背中にコンクリート片がぶつかって少し痛いけど、手足を怪我したりするような事はなかった。
実に運がよかったとしか言いようがない。
すぐに物が落下して地面にぶつかる音があちらこちらで響き渡る。
すいませんヘルメットはあった方がよかったね。ごめんね。
静けさが辺りを支配し始めると私は頭を少し上げるとすぐに状況を確認する。
「サカキさん!吸い殻さん!状況は!?」
「あーー、こっちは頭に何かぶつかってクラクラしてるが無事だ」
「吸い殻さんはハシゴ登ってる最中にトゲが脇腹に直撃して真っ二つですわ!」
吸い殻さんの代わりにアンズが確認を返してくれた。
どうやらハシゴを登りきることはできなかったようだね。
さてと、あいつはどこへ行った?
化け物がいたほうを見たけどもう姿が無い。
という事はあいつは次のアクションに入っているはずである。
地面にはいない。
という事はジャンプして空?
それとも壁際に…?
いた!
壁際どころか八本の足でコンクリートを掴むように壁を歩いている。
先ほど射出してきた針の事は関係なく、背中にはまだ針山がびっしりと生えそろっている。
…ずるい。
そしてこちらを振り向いてこちらの姿を確認すると足を壁から離して丸くなって…。
「サカキさん次来ますよ!避けてください!」
「え?」
どうやらまだ周囲の状況が把握できていないようだ。
サカキさんはあわててきょろきょろしている。
助けるのは無理なので私は見捨てるのを即決すると即座に駆けだした。
地面を抉りながら進む音が背中を通過していく。
いきなり方向転換する事は無いかなと思って後ろを少しだけ確認してみる。
するとサカキさんがいた位置の地面には化け物の進路を辿るようにくぼみができており、その周辺には血糊があちこちに散布されていた。
完全に轢かれた以上即死だろうなと思う。
死んだ人の事はこの際どうでもいいと思考を切り替える。
じゃあここを通り過ぎた化け物はどこへ行ったのか?
そう少し考えていると左手から何かぶつかる衝撃音が響き渡る。
音がした方向へ視線を移すと壁に丸い穴が開いており、トゲが付いた球体がめり込んでいる。
では、そのままこちらへ襲ってくるのかなと距離を取ろうとしたけどそうではないようだ。
壁にめり込んだ体をフラフラと揺らしながら抜け出そうと八本の足をじたばたさせている。
「あれ、これってチャンス?」
どちらにせよこちらは一人だけしかいないしこのままだとじり貧である。
失敗しても失うものは何も無いし私は即座にハシゴに向かって駆けだした。
後ろをちらりと振り返ると壁からは脱出できたようだけど球体からはまだ戻っていなかった。
ただ顔だけは球体の右側から出してこちらを見据えている。
「あの顔は『獲物がいたぜ!』って言っている顔ですわね」
「アンズうれしそうに暢気な事言ってないで引っ張り上げて!」
やがて化け物は球体から戻り足で着地するとハシゴを登っている私の方角へ向き直るとまた丸くなり猛烈な勢いで転がってくる。
このハシゴ高さが三メートル…間に合うかな?
速さも大事だけど踏み外さないように力強く体を上へ上へと持ち上げていく。
背中からは何かが急速で近づいている予感が肌で感じられる。
「ニミリ!飛んでください!」
アンズがそう叫ぶのを聞くと私は次の踏み込みと同時にハシゴを蹴り、手を放し体を宙に浮かせる。
そのままアンズが私の手を掴むとそのまま私の体は穴の上へと引っ張り上げられる。
下の方では何かが衝突した音とハシゴと思わしき金属がひしゃげてはじけ飛ぶ音が聞こえてくる。
…どうやら間一髪私は助かったみたいだね。




