18.目的地到着
薄暗くじめじめとした下水道を着々と進んだ先にあったのは開けた空間であった。
途中で下り坂もあったので地下に移動はしているなとは思ったのけど、体育館の広さぐらいの空間がある。
後続のメンバーもあっけに取られているようだけどそれでもきょろきょろと警戒しながら入ってくる。
「ここはいったいなんだろな?」
本当何なのかな?
下水自体はまだ先へと流れているようだけどそれとは別の面積の方が広い。
側道というよりはもはや何かの地下通路のようになっている。
灯りは今までと比べて少しオレンジがかかった白だけど煌々と照らされており、見えにくいとかそういった事は無い。
そして等間隔にコンクリートの円柱が規則正しく並び天井と床を繋いでいる。
「似たような空間が昔あったとは聞いたこはあるが…それよりもはるかに規模が大きいな?」
「それよりも気を付けたほうがいいと思いますわよ。こういう柱の陰の死角になっている所にゾンビがいて気付かないとがぶりと襲い掛かって来るかもしれませんから」
…アンズさん。
そういうセリフは怖がりながら言ってください。
喜々としながら言うようなものじゃないですよきっと。
そして注意しておきながら率先してワクワクしながら柱の陰を覗き込みに行かないでください。
…まあ犠牲になるのはアンズだけだしいいか?
放っておこう。
しばらくすると何もいなかったのかアンズがしょぼんと落ち込みながら帰って来た。
「何もいませんでしたわ。期待外れもいい所です。サービスが足りませんわ」
そう言うアンズの頭にチョップを叩きこむ。
叩き込まれる事を予想していなかったのか綺麗におでこに入れる事ができた。
「ヘブ!」
骨がぶつかる音と共にアンズが痛そうにおでこを押さえる。
恨めし気にこちらを見上げてくる。
「何をするのですかニミリ?」
「うん、何もいなかったのはわかってよかったけど勝手に行動しないでね」
誰がこんな面倒事を押し付けたのかわかってて言っているのだろうか?
天然のように見えるけど私の勘は計算づくではないかと警鐘をならしている。
…やっぱりどこかで一度制裁が必要だね。
「すいません。アンズが勝手な行動したけどとりあえず安全そうなので一度ここで整頓しましょう」
そう言うと私が立っている壁際に集まってくる。
「まあここまで来れたとか大したもんだったよな。これシマムラなんかに任せてたら後一週間はかかってるぜ」
「うっせぇ。しかしヘルメットは勿体なかったな。…いや、あそこはあれが正しいってわかってるんだぜ?まさか一瞬でスクラップになるとか…判断が遅れたら串刺しになってるのは俺達だったんだからな」
「それでどうするんだ?ここで少し休憩するのか?」
少し気晴らしに雑談タイムを意図的にとったけどこれなら大丈夫かな?
大丈夫と思っておこう。
お茶の介さんの地図スキルを再度確認したところここが最初の目的地という事で間違いなさそうだ。
「とりあえず出口のポイントを確認しましたよね?」
「ああ、左手に見える下水の側道についているハシゴが一つ。もう一つが右手の奥にある新たな通路みたいな奴だな」
「そうですね。まるで何かの入口みたいになっていますね。こちらは明らかに地上に出るものじゃないと思っています」
体育館のような空間と比喩したけどサイズはちょうどそれであっているかもしれない。
縦に短い方の先にハシゴがあり、横に長いほうのその先の中央にまた別の空間への入口が空いているのである。
「まずは地上への新たなポイントを探すのが今回の目標なのでとりあえずハシゴを登ってその先を調べてみましょう」
そう言うと大体は了承の返事が返って来たけど一人だけ異論が返って来た。
「けどどちらも同時にやれば手間が省けないっすかね?」
ワズンさんの異論もありと言えばありなんだけど…。
分散するリスクはあまりやりたくないし、何よりあの広々とした空間ってどう考えても何かのために意図的に用意されていると思っている。
ここは一応却下しておきましょう。
「駄目です。ハシゴの上がダメだった時はそっちにしましょう。そういうわけでアンズは悪いけど先行して登っちゃって。その後は大丈夫そうなら各自続いて登ってください」
「わかりましたわニミリ」
アンズはそう言うとハシゴに向かって小走りに駆けだす。
周りを警戒しつつハシゴに既に手をかけている。
…行動は早いのよね相変わらず。
「じゃあ他の人も移動を…」
「俺はひとっ走りあっちの穴を覗いてくるっす。すぐ戻るので先にハシゴ登っててくださいっす」
私が言い終わる前にワズンさんが奥の穴の方へ向けて走り出していた。
やっぱりこういう行動が出ちゃうか。
「あいつ勝手な事を…」
抜け駆けという意味か指示違反という意味かは分からないけどこうやってくすぶってこちらの行動が遅れるのが一番まずい。
少し軽く手を叩くと注目を集める。
「ワズンさんの結果を待つまでもありません。こちらはこちらで行動しましょうね」
「そうだったなニミリちゃん、じゃあ俺達も先行かせてもらうけど…レディーファーストでなくていいのか?」
「一応指揮預かってますので最後に行きますよ。ワズンさんも見届けなきゃまずいでしょうし」
「こういう所やっぱり貧乏くじだよな。悪いけどお先に」
そう言うとシマムラさん、ブラックさん、お茶の介さんもハシゴに向かって移動を始める。
サカキさんと吸い殻さんはどうやらまだこちらへ残っているようだ。
「行っても一気に登れるわけじゃないからな?それに俺も気になってな」
「ワズンさんがですか?」
そう言うとサカキさんも吸い殻さんも苦笑する。
すると指さしながら続きを話し始める。
「こういう広い空間に狙ったようにオブジェクトを大量設置してあるって事はここってイベント部屋かボス部屋じゃないかと思っててな?昔のゲームだとわざとこういうスペースが設置されてあるんだわ」
「へぇー」
なるほどそういうもののために運営が意図的に用意した可能性もあるという事かな?
さすが年の功と言った所か説得力はある。
少しずつ小さくなるワズンさんを見送りながらもハシゴの方にも気をかける。
どうやらアンズは登り終わっており、後続の男性陣も登り始めているようだ。
「こっちの結果も気になるけどそろそろ登れそうなので俺は先行ってくる。お前等も遅れるなよ」
吸い殻さんも確認していたのだろう。
こちらに手を振って駆けだした。
「割と順調だな。これだとワズンの方も成功しそうだし勘が外れたかな?」
「まあ無事に越したことは無いですよ?それよりも…」
そう私が言おうとした時である。
ワズンさんの上からなにか大きい物体が落ちてきたのだ。
ここから見ていた私とサカキさんはそれに気づいたけど前を向いているワズンさんは全く気付いていない。
そのままその物体はワズンさんのいた位置に地響きを立てながら着地する。
私達が警告を発する間もなく物体を中心に埃が舞い上がり、血しぶきが飛ぶ。
そしてその中心では二つの鋭い瞳が光り、こちらを見据えているのだった。
連日評価いただきありがとうございました。
お話が詰まるまでは頑張って更新…できたらいいですね。




