16.方針策定
二体のゾンビを処理を終えた私は上へ声をかけて降りてくるように促す。
ただしアンズと吸い殻さんはゾンビの死体を引き上げなきゃいけないので上で待機してもらう事にする。
「さすがっすね姐さん。軽く片付けるっす…。」
降りてきたワズンさんが私を見て無言になる。
何か変な事でもあったかな?
あぁ、さては頭が無い死体がちょいとグロテスクだったかもしれないね。
続いて降りてきたサカキさんもこっちを見て言葉を失っている。
このゲーム非常に心臓に悪いよね。
「いや、何というか大丈夫なのか?」
心配した声をかけられるけど何を今さらという感じである。
今までも十分心臓に悪いシーンがあったじゃないですかね?
「平気ですよ。頭を踏み潰す感覚は慣れないですけどね。」
「じゃあその服が血だらけなのはゾンビの血か?あまり脅かすなよ。」
…あ。
そういや自分の姿もグロテスクだったのかな?
下を見るとセーラー服は飛び散った血で真っ赤にペイントされており傍から見たら怪我人と取られてもおかしくない。
「こちらは五体満足無事ですよ。それよりもゾンビの死体回収するんでしょ?男手が揃ったら用務員室にあげて放置しておいてください。」
「コミュニティールームに持ち帰らなくていいんすか?」
「時間がもったいないし…それにここの部屋の鍵って多分私達しか持ってないと思うしたぶん大丈夫でしょ?まあ持ち逃げされたらその時はその時でいいんじゃないかな?」
「うーん勿体ない気もするが…これで一々戻って時間食うのも確かにここの主旨じゃないしな。それでいいと思うぜ。」
「それ以前に…このぶよぶよしたどざえもんを運ぶんすか?ここに放置でよくないっすか?」
「それでも構わないよ?その場合はワズンさんのこいつ等の分の分け前は無しね。」
「…やるしかないっすね。しっかしここの運営はどうしてこういう所をリアルに作りますかね…。」
本当そこは苦情を上げたい所である。
しかし前のイベントのジュースも美味しかったし、ベッドの沈み具合も枕の弾力性も完璧なまでに快適だった。
VR空間での再現力は高いのは間違いないのだろうけど…ここの運営は明らかに努力の方向を間違っているとしか思えない。
「それで姐さんは何をするんすか?」
「私はこれから部屋の中漁って使えるアイテム探しておきますよ。」
「…職権乱用じゃないっすかそれ?」
「最初に頭踏み潰すって仕事はやったんだからいいよね?後、姐さん言うな。」
そう告げるとぶよぶよしたゾンビが穴の奥へと運ばれていく。
私も言った手前何か仕掛けられていないか注意しながら部屋の中の探索を開始した。
十分後、ゾンビの回収も終わりアイテムの回収も終わり保守部屋のテーブルの周りに八人全員集まっている。
見つかったアイテムは下記のとおりである
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木製の丸椅子:1個
ライト付きのヘルメット:1個
ヘルメット:1個
壊れた腕時計:1個
ビニール手袋:2個
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この内必要と思われるのはライト付きのヘルメット…正確にはライト、灯りが欲しい。
後は念のためにビニール手袋を一つ持参していくことにする。
ヘルメットは防具として使えないのかとも聞かれたけど置いていくように説明した。
下水道は足元不安なので頭だけ守れてどうなのか?
確かに頭は守れるけど他やられて結局終わりじゃないかな?
そう言うとまあ持っていくのはあきらめて同じく用務員室に残しておくことにする。
「さて、アイテムはほとんど置いていくという事で問題ないよね。では次はこの後の下水道の侵攻について話すね。ここはお茶の介さんに確認したけど一箇所面白いポイントがあったので今回はここへ向けて出発します。」
「どんなポイントなのニミリ?」
「出口が近距離で密接しているポイントがあってね。こういう場所ってゲームだと大抵ね。」
「なるほど、ボス部屋か次の重要エリアの入口と…セーブポイントの組み合わせって割とRPGだとよくあるよな。」
「まあそうとは限らないけど二箇所一気に探せるならお得じゃないかな?」
そう言うと反論が出ない事を確認して進める。
「それで進み方だけどとりあえず音は立てない、どうしてもの時は小声で話す。ここは前回と変更無しです。進み方についてもこっちも前回と同じように最初は一列だけど分けられるときは二列に分かれて進みます。これは片方やられても全滅しないためね。襲われた方は酷だけど見捨てて先に進むようにしましょう。」
見捨てると言うと眉を顰める人が何人かいたけどまあやむを得ない。
リアルじゃないんだから効率重視で行かせてもらう事にする。
「やられた方は申し訳ないけどコミュニティールームに待機、無事な方は引き続き調査を続けてね。で、分け方だけど片方の先頭は私、次にお茶の介さん。お茶の介さんはナビゲーションよろしくね。もう片方の先頭はアンズ。何かあったらハンドサインで知らせてね。で、最後尾はサカキさんと吸い殻さん。どっちでもいいので適当に決めちゃってね。残りの人は四人ずつになるように分かれちゃってね。」
特に異論は出なかったので班分けをさっさと決めてしまう。
班分けが決まると私達は重たい鉄扉に力をかけてまた下水道にこっそりと踏み出した。




