9.veryhard 猫と戯れる
短いです。
本当に申し訳ありません。
何とか帰宅できたので今回はここまでです。
全国の愛くるしい猫とは一線を画した猫のような化け物ににらまれながら私は血が逆流する感覚に襲われた。
「気を、抜きすぎた!」
行っても行っても住宅街でありやっと景色が変わったこと、その解放感で明らかに油断してしまった。
私はあわててその場から逃れようと立ち上がろうとしたが足をもつれさせてそのままこけてしまう。
猫は私の横にシュタっと飛び降りると蛇の部分を右腕に巻きつけてくる。
…このままだとやられる!
そう思った私は蛇の頭がその勢いのまま腕にかぶりつこうとしたところで、絡まれた腕をそのまま地面に叩きつける。
「Figyaoooo---!」
潰された蛇の部分から水色の体液が飛び散り猫が苦しそうにもがき威嚇しながら叫んでいる。
右腕の拘束は外れたがもがき暴れまわる猫の飛び散った体液が私の右目に入り痛みが走る。
「熱っ!」
ずきんと脳までダイレクトに焼くような痛みを伝えてくる。
目を抑え込みたくなるが今は我慢する、いや我慢しなければならない。
私は胸元から弾の入っていない拳銃を取り出す。
ただし握るのは引き金ではなく銃身である。
銃身を掴むと片方の蛇頭を潰されて苦しんでいる猫の体へ思いっきり拳銃を振り下ろす。
腕への振動が伝わるとともに肉が潰れるような音が響き真っ赤な血もあちこちに飛び散る。
「unya---」
私にたたきつけられた猫はぴくぴくと小刻みに動き、弱々しい鳴き声をあげながら息を引き取った。
「やった、さすがに重量差がなかったからいけたのかな。」
嬉しさ半分助かった安堵感半分でいっぱいになるが右目の痛みも我慢できないレベルで伝えてくる。
「痛いねこれは…そう言えば蛇には血に毒を持っているのもいるんだっけ。現実なら失明してるわねこれは。」
右目を抑えながらここまでやってくれたにっくき猫の面をもう一度拝もうと近づいて覗き込む。
するとコンソールが表示される。
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【未確認生物の死体】
未確認生物の死体
保存状態40%
重量未測定
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これも持ち帰れるんだ…。
しかしこんな毒々しい体液を流している死体をナップサックに直接詰め込むのはちょっとね。
ゲーム上は問題ないかもしれないけどやっぱり心理的には無理だった。
…そうだ、ビニール袋に包んで入れてしまおう。
私はビニール袋(大)を二枚取り出すと死体を放り込んで結んでナップサックに放り込む。
そして猫の死体があった場所に手を合わせて拝む。
「ゲームとは言え猫を殺すのは気分がよくないからね。成仏してくださいな。」
「「「「nya-go」」」」
「うん、君たちもこの猫に…」
待った、デジャヴュを感じる。
声をした方を向くとこれと同じ猫が道に数十匹いてこちらをにらんでいる。
ああ、そう言えばここは「veryhard」だった。
毒を持っているとはいえこんなに簡単に倒せる敵が単体でいるわけはなく、こいつは群れの中の一匹だったわけだ。
当然こんな数にかなうわけがない。
私は猫に背を向けて大きな通りに向けて全速で逃げ出した。