10.女子更衣室のコソ泥
御礼を一言
誤字報告いただき大変助かりました。
自分で管理できていないのが原因という点もありますが非常にありがたく確認の上で適用させていただきました。
ゲームの中とはいえ可哀そうな遺体から物品を取得し終えた。
次にやる事はといえば、…私は脇のロッカーに目を向ける。
さっきも調べたけど全部鍵がかかっているのは確認済みである。
まだ他の三人から集合の声がかかっていないという事はまだ時間をかけて探索中ということだろう。
…ここはこっそりと追加調査しておきますかね?
私はマイルームに戻った時に一緒に取り出しておいたヘアピンを手に取る。
当然、髪留めとして使うわけではない。
これを伸ばして曲げて鍵穴にセットして…。
ガチャガチャとピッキングを開始するのだった。
「ねえ、ニミリそろそろ集合らしいですわよ?そっちは順調なのかしら?」
外からアンズの声が聞こえるけど今は集中しているので話しかけないでほしい。
何だろうね?一個目のロッカーは空っぽ、二個目のロッカーも空っぽ。
現在三個目に挑戦中である。
一昔前の単純な鍵穴のロッカーなのでコツさえつかめばさくさく開けていけるけど何も入っていないは正直がっかりである。
さてと、次こそ何か出ないかな♪
カチャカチャ、もうちょい奥かな?
よいこらしょっと。
カチッと音が鳴ったのでそのまま取っ手を掴んで前に引いてギィという音と共に扉を開ける。
「むぅ…あるのはボールペンと…おっとこれは制服かな?」
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【南鶴舞高校の女子用制服】
衣装アイテム
使用することで外見を変更可能。
南鶴舞高校の女子高校生用制服。
穏やかな水色と白を基調としたセーラー服とやや短めのスカートのセット
男女共に使用可能
重量:?グラム
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…あまりこれといったアイテムではなさそうである。
けど変装という意味では使えるのかもしれないね?
これを着て情報収集をすればはかどるとかはないかな?
「ねえニミリ!もうみんな集まってますわよ!ってニミリは色々見つけているようですわね?」
「ひぇ!?」
びっくりした!
振り向くとアンズが背後に立っているではないですか。
「アンズいきなり驚かさないでよ?」
「何度も声をかけましたわよ?それよりも一度整理するので集合ですわ。」
…まずい、何も出ない事で熱くなりすぎて聞き落としていたようだ。
「ごめんごめん。こっちも問題ないから行くよ。」
あきれ顔になったアンズに先導され、私達は二人が待っているプールサイドまで移動した。
「よし、全員揃ったようだし情報交換と整理をしようか?」
円を組んだように集合すると吸い殻さんの音頭でそれぞれが取得した情報の開示が始まる。
「まずは設備室だが、まあこれといって特に何もなかったというべきかな?水を抜くために排水処理をしてそのまま操作してなかったんだろうか埃だらけだった。塩素を見る装置やら排水装置やらそういったのも触ってみたけど動作はしねえ。まあ照明のスイッチが入らないぐらいだから電気が通ってないんだろうな?」
これといって特に収穫は無し。
いや、排水した後は誰も入っていない…あれ?
という事は女子更衣室の遺体はいつごろのだろうか?
「男子更衣室は特に何もないっすね?照明つかないのは一緒っすけどロッカーは全部鍵がかかってったっす。こじ開けようとしたけど力不足で開かなかったっす。」
男子更衣室も女子更衣室と同じ感じかな?
死体の有無ぐらいの差分…後は確認できていないロッカーの中身といったところかな?
次は私かな?
「女子更衣室もほぼ男子更衣室と同じですね。ただし奥に女子高生の遺体があってこんなのを持っていました。」
私は取得物を全員の前に置いて公開する。
それぞれ手に持ってアイテムの確認をする。
「これはレコード系アイテムかな?よくホラーゲームであるような被害者の日記とかいう…。」
「それは素晴らしいですね!ニミリこれくださらない?」
「うーんとりあえず日記は一度目を通したらアンズにあげるよ。後は同じようにロッカーに鍵がかかっていて中にはこんなアイテムがありました。」
先ほどと同じくボールペンと制服を並べる。
すると首をかしげていた吸い殻さんが困った顔でこちらに話しかけてきた。
「いやちょっと待った。鍵かかってたのになんで中身がここにあるんだ?」
「それはちょちょいと…。」
折れ曲がったヘアピンを見せると吸い殻さんは納得したようにうなずく。
「なるほどピッキングで開けた…というかこのゲームはピッキングもできるのか。」
「じゃあこっちのロッカーも全部開けてもらえばいいっすね?」
「流石に四十個も開ける気はないわよ?それだけで二時間以上かかっちゃいますよ?」
ゲームの中でピッキングだけしてその日が終わる…。
何それ面白いの?
集中してた手前説得力は無いけど私は鍵開け職人というわけではないのでまっぴらごめんである。
「それにしても女子高生の制服っすか…。これはいいっすね!」
「ほう、やはり男性から見たらロマンがありますか?」
一方ワズンさんは制服に興味津々のようである。
やはり男は青いなと思う。
「まあ幻想かもしれないですけどやはりセーラー服って惹かれるものがあるっするからね。」
「…よろしければ使います?」
そう言ったところで吸い殻さんとワズンさんが噴き出し、そしてむせ始めた。
落ち着くまでしばらくかかりお二人が制服のアイテムコンソールを開き内容を確認することで愕然とし始めた。
「男性も着用可能?」
「そうみたいですね?Tシャツ短パンを卒業できますよ?よろしければ…」
「いや、いい。」「遠慮するっす。」
即答で拒否されてしまった。
仕方ないので回収するけど…アイテムがいっぱいで両手が埋まってしまった。
どうにかしなければいけない。
「最後に私ですが…特に周りはありませんでしたね。しかし怪しい所は見つけてありますわ。」
「ほう、それはどこになる?」
するとアンズはプールの中の…壁を指さす。
指の先はというと水が抜けたプールの側面に四角の大きな穴があり、そこには鉄格子がはめこまれている。
なるほど排水溝か…。