8.プールを見に行こう!
「貴重なアイテム使わせてしまってすないな。しかしまあ缶詰なんてどこで手に入れたんだ?」
「そこはイベントのお土産でもらったものですよ?それよりも情報を整理しましょうか?」
NPCからの事情聴取を終えた私達は再び体育館のブルーシートに座り込み情報の整理と雑談に勤しんでいた。
あまり役に立つ情報は無かったと思うけど見落としていた点はあったと思うのでその点を整理して今後の方針を立てていく。
「どこかとやり取りしてたというトラックやヘリコプターがどこかにあるかもっすね?それを探してみるっすか?」
「けれどそういうのは兵隊さん達が管理しているでしょうから私達が触れるのかしら?」
「まあ触れないだろうし貸してもくれないだろうなー。それよりも裏山からのルートは既にNPCが知っていたという事だな。それも何か得体のしれない化け物のせいで帰って来た奴もいないとか…サカキの奴うまくいったらきっと仲間入りしてるだろうな。」
「まあ表がダメなら裏から…ならすぐに考えつきそうなことだからね。けど出入りする場所がもう一個あるみたいだしそこを探索してみるというのはどうかな?」
「あれ…そんな話あったっすか?」
あったのですよ。
よく思い出してほしい。
「さっき聞きだした情報でプールから化け物が入ってきて水を抜いて封鎖したと言っていたじゃない?」
「…ひょっとしてプールから化け物が入って来たならそこから外へ出られるとかいう事か?」
吸い殻さんも同じ発想に落ち着いたようだ。
これ幸いと私の考えを言葉に乗せていく。
「どちらにせよお二人も封鎖されているという事を確認しただけできちんと調べていないですよね?」
「まあそうっすよね? 入口は銃持った兵隊がいて金網の上は鉄条網が巻かれていて入れそうになかったっすから。」
なるほど単純には入れなそうだね?
けれどたったそれだけならば杏子のお宅よりは随分ざるなのでいくらでも手の打ちようがあると思う。
「まあ見てみたいというなら一度行ってみるか?」
私達は話題に出たプールの側にまで移動してきた。
屋内プールではなく、一昔前の学校によくあった屋外のプールのようだ。
金網の向こうを見ると…まあ水が抜けており、汚れた藻のような跡があるだけである。
よく見れば壁の所々に穴が開いていて、弾痕も背景の一部として存在している。
確かに入口にはアサルトライフルを所持している兵隊も二人いるし鉄条網が金網の上に追加されている。
けどたったそれだけである。
兵隊が巡回をしているわけでもなく、金網には電気も流れていないし、感知器、カメラの類も一切設置されていない。
まるで侵入してくださいと言っているようなものである。
それでもまずは正面から入れないかどうかは確認すべきだろう。
その結果は…。
『ここは危険なため封鎖されている。一般人は立ち入り禁止だ。ただでさえどうしようもないのに仕事を増やすような事はやめてくれ。…どうしてもと言うならまずは本部の許可を取ってからにしてくれ。』
まあそうなりますよね?
さて強行しても無駄でしょうし、それは全員理解できている。
なれば一度距離を置いて見えない位置でこそこそと相談を開始する。
「やっぱり入れないみたいだな。どうする?」
「許可がもらえるのでしたらそちらの方がいいのではないでしょうか?」
「どうせ断られるに決まってるっすよ?こういうのって大抵色々とクエストこなして功績か信頼貯めてようやくクリアされるようなものっす。」
まあNPCに頼んでもすぐにはダメであろうということは共通認識であるようだね。
では、ここからはゲームの中ならできるかもという点でバグ的に攻めてみればいいんじゃないかな?
「一つ私に考えがあるんだけどやってみませんかね?」
私の発案の作戦は駄目で元々で一応やってみるかという事で採用された。
「いいよー一個目落として!」
校舎の外から二階の教室にいる吸い殻さんとワズンさんに声をかける。
あちらがうなずくと空から机が重力にひかれて落下してくる。
ドスンと言う音と共に土煙がいくらか舞う。
さて私とアンズは落ちてきた机を確認しないと。
一応木目のある上部分を下にして落としてもらったけど…。
うん、この高さなら大丈夫割れていない。
足から落とすと鉄の部分が曲がって使えなくなるかもしれないからね。
落ちてきた机をひっくり返すと脇にどける。
そして周りを見回し、特にNPCが変な反応をしていないか確認する。
特にこれといった反応はしないようだ。
そのまま上を向くと二人に向けて声をかける。
「こちらは問題ないです!」
「こっちも問題なさそうだ!こんだけ大騒ぎしてるのに教室の中のNPCは塞ぎこんだままだ。」
「了解です!では下が空いたらどんどん落としてください!九個落としたら下まで来てください!」
「OK!」
そう言うと吸い殻さんとワズンさんはベランダから下を覗いていた顔を引っ込めて教室の中へと戻って行った。
では私達もお仕事に移るとしよう。
「じゃあアンズ。机運ぶからそっち持って。」
「わかりましたけど、あの兵隊さん達に見つからないでしょうか?」
見つかるかもしれないけどまあそこで反応するかもまた検証の範囲内でしょう。
駄目ならその時はこっそりとやるように方針変更すればいいと思う。
「まあその時はその時でいったん中止してやり直せばいいよ。とりあえずどんどん運ばないといけないから急ぐよ。」
結果としてNPCに見られても特に咎められたり止められたりすることは無かった。
私達はそのままNPCがいるプールの入口とは別の方向へ机をどんどん移動させていく。
しばらくすると全て地面に落とし終わったのか男性二人組にも机の移動を手伝ってもらった。
「とりあえずは成功だな。それでなんとなくわかって来たけどこいつを使って勝手に入るという事だな?」
「そういう事です。まああちらには何も無いから片道切符になると思いますけどそこは気にしなくていいんじゃないでしょうか?」
最悪正面から出ていって怒られれば済む話じゃないかな?
まあ後の事は後で後悔しよう。
それに空間がブロックされていて入れない可能性もある。
「では階段状に机を積んでいきましょう。一番下を四個、その上三個、二個、一個と積んでいけば…。」
「一番上は金網より高くなるからその上から飛び降りて向こう側に着地すればいいわけですね?さすがニミリ、こういう潜入手段は慣れてますね。」
…現実でも頻繁にやっているような誤解を招く発言はやめてほしいのですがアンズさん。
まあ杏子のお宅に行くとするなら必須科目となるので否定しきれない点はある。
残った男性二人は軽く笑っているので真に受けていないのだろう。
誤解されずに済むのは助かるね。
十分後、机を階段状に積み終わりその一番上の机から飛び降りることにより私達はプールサイドのコンクリートに着地する事に成功した。




