5.学校観光 その1
六十ものプレイヤーが愚直に無意味に散って行く。
行く末の興味深さからつぶさに眼下を眺めていたがその祭りも終わり、次第に私達は落ち着きを取り戻していった。
「あの通り強引な突破は無理と考えて何か他の手は無いかと調査しようというのが目標になる。まあ重火器や火炎瓶何かを大量に用意すれば行けると思うんだが今の所入手手段も無いし、何よりコストパフォーマンスが悪すぎる。」
苦笑していたサカキさんも半笑いのまま強引に話を方向転換しようとする。
確かにあのゾンビの群れは正面突破だと戦車や爆撃機が複数欲しくなる。
しかしそれほどの火器を毎回外へ出るだけで消費するとなると…やはり別手段がほしくなるだろう。
「そういうわけでここからは二手に分かれたい。俺達は裏の山がある方に出入りできそうな手掛かりを見つけていてそこを検証しようと考えている。そちらの方はnormalが初めてらしいので案内がてらもう一度見回ってほしい。初めて見るという視点で何か発見があるかもしれない。それじゃあ開始するぞ。一時間後を目途にまたコミュニティールームへ集合してくれ。」
それぞれが了解の意を表すと二手に分かれる。
サカキさんの方は慣れているのか方針がしっかりとしているのかてきぱきと壁を降りて移動を開始している。
反面こちらはと言うと…全員固まったまま動かない。
「あーじゃあ俺らが学校の中案内する形でいいのかな?それとも勝手に見て回るのが良ければそれでもかまわんが?」
吸い殻さんが遠慮しがちにこちらに話しかけてくる。
面倒は避けたいというのがひしひしと伝わってくるけどここは面倒でもつきあってもらったほうがいいよね?
「いや、入って来たばかりの人を勝手に行動させたらまずくないですか?」
私が返答すると気まずそうに声をかけてくる。
「まずいよな?いや、まずいな。」
「とりあえずさっさと回って俺らも調査に回りやせんか?」
消極的な吸い殻さんと違いワズンさんは中々に熱意があるようですね。
…嫌な予感がするけど念のためアンズの意見も聞いておくかな?
「こういう風に決まりそうだけどアンズは何か意見ある?」
「…ニミリあの中に単独で飛び込んで突破してみる気はありませんか?」
…こいつ、何てことを考えやがる!?
と言うか今までの話を全否定するとか本当やめて欲しい。
「アンズさん?お話聞いてましたよね?」
「聞いてたけど爺やの薫陶を受け…痛いいだぁい!」
私はアンズの両頬をつねって引っ張り上げる。
さっきの恍惚さの余韻が抜けきっていなかったようだ。
ここはしっかりと抜ききっておく必要がある。
「この子の意見はどうでもいいので案内お願いします。」
「…おう、わかった。」
「あんたもゲームの中なのにえらい苦労してるっすね。」
二人に同情されてどうこうなるわけでもないけど気持ちは伝わったようなのでその点だけは嬉しかった。
私達は吸い殻さんを先頭に壁を降りて校舎に移動することにした。
校舎に移動し、廊下を歩いていると外の天気の悪さも相まって薄暗いのに電気がついておらず、不気味さを醸し出している。
床も汚れやほこりがそのままになっており不衛生さも表現されている。
「何と言いますかheavenワールドと比べて学校の中も暗い雰囲気になっていますね?」
「そうなんだよね?雰囲気違う以外に気付いた点はあるかな?」
さて、気づいた点はいくつかあるのでとりあえず列挙していくのがいいかな?
「廊下を歩いていたNPCとか立っていたNPCっていなくなってますよね?」
「ああ、教室とか体育館とかの隅っこでほとんどうずくまっているな。聞いても情報もほとんどくれない。」
「会話はできるんですか?」
「疲れたとかお腹すいたとか話したくないとかそんなのばっかりだよ?状況が悪化しているというか…末期的なイメージが強くなってるな。」
…あれ?何か違和感が。
少し首をかしげていると後ろからアンズが続きを繋げてくれる。
「話したくないだと何か情報を持っている可能性がありますわね?」
「そうかもしれない。だけどそれならばどうすればいいという話になるとお手上げになっていて、物理的な捜索を今している所ですよ。」
うーん、何か掴めそうな手掛かりだけど解決策は無いという事かな?
まあ解決しなさそうならとりあえずは置いておくしかないでしょう。
「電気は通っていないんですか?」
「そこも気付いた所かな?周りの建物も中まで観察できているわけではないけど、多分周辺全てが止まってると思う。」
なるほど…確かオープン記念イベントの資料であったようにここは末期的に迫りつつある世界観なのだろうか?
だとすれば崩壊寸前というのは納得できる。
「後は俺らも他のワールドとしっかり比べたということは無いけど、鍵のかかった部屋はこっちの方が多いっすね。まあ共通して鍵がかかっている所は運営が作りこんでいないので閉じられている可能性もあるっすけど。」
ワズンさんが残りの補足をした所で黙々と校舎の空いている部屋を手あたり次第に回って行く。
職員室…教職員や警官がいたが今は入れなくなっている。
扉の前に兵隊のNPCがアサルトライフルを構えており、入ろうとすると拒否される。
「強引に入ろうとしたことは?」
「一回さっきのモノジーの奴がやってできなかったっすよ?」
ワズンさんが淡々と結果を回答してくれる。
…あの人は手あたり次第に何でもやってるのかな?
いや、試行錯誤はいい事である。
やらないよりやった方がいいのは間違いない。
そういう意味ではモノジーさんも先駆者としては優れているのかもしれない?
「挙句にNPCから武器を奪おうとして地下倉庫に二十分ぐらい隔離されたのもモノジーだけっすよ。」
…私のやろうとした事を実践してくれてありがとうございます。
おかげで私は時間を無駄にせずに済みそうだ。
「他にも保健室や放送室は同様に兵隊が立っていて入れんかった。」
「化学室や美術室は引き続き鍵がかかっていて純粋に入れなったすよ。」
なるほど。
入れないという結果がわかっただけだがまあ回る場所が絞れたというだけでよしとしよう。
「ではNPCがいるという所に案内してもらっていいですか?」
「いいぞ、二階と三階に合わせて三箇所だ。こっちだ。」
吸い殻さんが回答して歩き始めると私達は後に続くことにした。




