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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
3日目~5日目 ゲームをプレイしない日々
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14.自由への逃走

新年あけましておめでとうございます。

本年も何卒宜しくお願い致します。


開けて早々申し訳ありませんが前半後半で視点がわかれておりますご注意ください。

春を迎え日差しは穏やかだけど風はまだ少し寒く、周囲は一面芝生の見晴らしのいい絶景スポット。

ここは湯島家屋上エリア…なんてものは無く平らな屋根の上である。

巨大なスコープを備え付けている麻酔銃を構えた狙撃手が一名、その横に観測手が一名が寝そべっている。


スコープの十字の先には逃走している女性が映っており、その進行方向ちょっと先に狙いを定めている。

お嬢様からの命令により発砲の許可は下りているため躊躇(ちゅうちょ)なく引き金に指を添える。

そして引き金をひく…その瞬間だった。

爆発音と共に自転車は空高く舞い上がり炎に包まれた。

指示はいつも通りの生け捕りで確保、殺しはNG(だめ)のはずである。

しばしの間絶句し、あっけに取られていたが時間がたつにつれて急に変わった事態に二人は慌てふためいているようだ。


「おい、爆発したぞ!?追跡班は何やらかしたんだ?」


「わからん、とりあえず指示を仰ぐ!」


観測手の男が無線機を手に取るとそのままだらりと固まり崩れ落ちていく。

何も反応がなくなった観測手に狙撃手もスコープから目を離しこちらへ振り返る。


「佐々木、何をやっている連絡は…?」


「ごめんね、ついでにあなたも寝ていてくださいね?」


そのまま脇に置いてあった麻酔弾の針を狙撃手の首元へ突き刺し麻酔薬を注入していく。

しかし私は猛獣か何かですかね?

こんな太い麻酔弾を撃ち込もうとするとか?

杏子も大分遠慮がなくなってきているね。

どこかで釘をさしておかないとどこまでもエスカレートするんじゃないかな?


先の心配をしてしまっていたけどそれはいけない。

頭を振りかぶり今を考える。

とりあえず先にしなければいけないことを思い出しカバンの二重底の下から長方形の機械を取り出し組み立て始める。

と言っても私がやることと言えばボタンを押して背負うだけなのだ。

カチッとボタンを押すとガチャガチャと物音が鳴り、背負い式の金属骨格のハンググライダーが自動で組み立て終わる。

しかも推進動力のエンジン付きという一品である。

高かったけどマキちゃんに頼んでおいてよかったと心から思う。


もう一個頼んでいたホログラム投影型の自走自転車も見事に囮の役目を果たしてくれた。

機会があったら結果も含めてマキちゃんにはお礼も言わなければいけない。

…当然自爆装置の火薬が多すぎる点についてもね?


さて組みあがった以上は長居は無用である。

さっさとこの危地から脱出するに限る。

私がそそくさとハンググライダーを背負い屋根の端に移動しようとするその時である。


『狙撃犯応答せよ』


佐々木と呼ばれていた男の手に握られている無線機から音声が漏れ出る。

状況確認をもう取って来るということは現状把握に乗り出したという事…羽山さん抜きにしては立ち直りが早い?

…ここはさらにおふざけも加えて攪乱しておいたほうがいいかもしれない?

私はいたずら心に負けて無線機を手に取った。


『狙撃犯応答せよ!…狙撃犯応答が無いがどうなっている?』


「こち…そげきは…異常無し…」


わざと低い声で断片的に回答しそのまま無線機のスイッチを切る。

これで注意が別に向いてくれれば望ましい。

そう思うと私は屋根の上から空に向かって身を投げ出す。

そのままスイッチを押して推進剤も点火、これで今回は終しまい。


今回は何事もなく無事に終わってよかった。

そう考えながら空に身を任せているその時だった。


バァン!


ぎょっとして音のした背後を振り返ると屋根への扉が大きく開かれている。

その側には私と視線のあった羽山さんが…。


「ってばれた!?」


羽山さんはこちらを視認すると屋根の上を全力で駆けている。

そして端に到達すると走り幅跳びの要領で勢いをつけたまま空へと飛び出す。


「とう!」


とう!ってちょっと!?

ここ五階の上なんだけどなんで躊躇なく飛びますかね?


しかしその躊躇が無いせいか勢いがあるせいか羽山さんは私の右足を掴むことに成功している。

というか痛い痛い!

そこは失敗して羽山さんだけが落ちるべきでしょ!?


「ほっほっほ、残念ながらお嬢様の為ならこの程度何の問題もありませんぞ?」


羽山さんにつかまれたせいでガクッと体勢が揺れ重みのせいで高度もどんどん下がって行く。

エンジン付きじゃなかったら二人まとめてもう地面に叩きつけられていた事だろう。

しかし、それも時間の問題である。

このままだと本当にまずい!

早く手を打たないと。


「急用を思い出したのでお暇させていただきたいのですが?」


「遠慮なさらずともお嬢様と一緒に奥様に半日撮影されればよろしいのではないですかな?」


それが嫌なのよ!?

着せ替え人形も真っ青な速度でいろいろ着せられてポーズ取らされて笑顔貼り付けてそのエンドレス。

それでいて私に利益があるかと言えば皆無である。

何とかしなければ…。


「でも私が参加しないとその分杏子の撮影時間が倍になって二倍楽しめますよ?」


「むぅ?確かにその通りですが…しかし杏子お嬢様に失敗の報告を上げるのは心苦しくての…。」


忠実に任務を遂行しているよう見えるけどこれはわかる!

流石杏子以外割とどうでもいい人だ。


こうかはばつぐんである。


羽山さんは今非常に揺れてる。

あと一押し、あと一押し…これだ!


「こほん、羽山さん実はこんなものがあるのですが?」


私はそう言うと懐から先ほど杏子の父に渡した物と同じ写真を羽山さんの前でペラペラと主張する。

羽山さんはというと視線が写真に釘付けである。


「手に取って確認してみては?」


私が言うや否や羽山さんは空いている左手で写真を手に取る。

手に取った羽山さんの顔は先ほどまでの厳つさは無く、可愛い物を愛でるような満足そうな恍惚な微笑みを浮かべている。


「見逃してくれたらそちらを提供しますよ?」


写真から目をそらしてこちらを見た羽山さんはまた写真に視線を戻し再びこちらを見上げると(ほが)らかな笑みを浮かべ一礼してきた。


「本日は当家へお越しいただきありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」


そう言うと羽山さんは写真を大事そうに懐へしまい、そのまま右手を離し芝生へと落下していくのだった。


「当分は来ませんよ!」


羽山さんに叫んで返答するけど多分聞こえていない…気がするけど聞こえてる気もする。

けどとりあえずは買収成功!

助かってほっとしたけれどもつかまれていた足が滅茶苦茶痛い。


…やはり最後に悪ふざけをしたのが間違いだったみたい。

そこは後日反省を…と正面を向いたその時だった。

フェンスがもう近くまで迫っており、高度が足りていない!このままだと衝突する!?

羽山さんの分の重みで予想以上に高度が下がっていたせいだろう。

慌てて私はエンジンの点火ボタンにスイッチを入れる。


強引に身体を浮かせて高度を持ち直すことによりぎりぎりフェンスを越えることができたけど無理な力の加え方をしたせいかフェンスを越えた後は散々だった。

空中でのバランスを失い、着地も満足にできずこのままでは危険だと判断した私はハンググライダーを手放し全身で受け身を取る。

結果、身体中があちこち打撲で痛いし服は土と草だらけでぼろぼろである。

手放したハンググライダーもバキバキに壊れている。


しかし、せっかく獲得した自由を失うわけには行かない。

私は傷ついた身体を起こしそのままこの場を後にするのだった。




---杏子視点---------------------------------------------------


「あ…爺やが落ちた。」


「そうですね。まさか空から逃走とは予想が付きませんでした。そしてそれを察知して全速力で飛びついて間に合わせるとか本当に人間かと思いましたが力尽きて落ちるところを見ると同じ人間なんですねとほっとしています。」


そんな筈は無い。

爺やがその程度で力尽きるような鍛え方はしていない。

何かあったのだ。

その証拠はすぐに私の目の前に展開される。


「残念です。まさかあそこで取り逃がしてしまうとは…儂も寄る年波には勝てんということかの?」


飄々とした爺やが部屋に入室してくるではないですか。

という事はこの裏切り者を問いただしておく必要がありますね。


「爺や?何であそこで手を離したのです?」


「お恥ずかしながら汗で手が滑ってしまいましてですな。惜しいことをしました。」


「いえ、それよりもあの高さから落ちて無傷ってどういうことですか?」


伏木さんがどうでもいい事を言っているけど聞き流す。


「では言い直した方がいいですかね?ニミリに何を持ちかけられたのですか?」


「はてさてそのようなやましい事は一切ありませんぞ?それはそうと少し汚れてしまいそのような姿で御前に出たこと申し訳ありません。少し着替えの時間をいただきたいのですが…」


…何か賄賂でも受け取った?

確認しなければいけない。


「着替える前に爺やの身体検…。」


「ああ、そうでした伝えるのが遅れましたが…奥様がもうお戻りになっておられますぞ?」


その一言にピクリと反応してしまい、ゾゾっと背筋に寒気が走る。

ニミリはもう敷地外…手の届かない所へ行ってしまいました。

流石に私有地の外での事は公権にはごまかせないので確保に向かわすこともできない。

まずいですわ。

このままだと一日中お母様の着せ替え人形として明日拘束されてしまいます。

そうだ爺や達を使って…。


「では伏木さんは使用人全員を玄関前に集めておいてください。今回の講評を行いますのでその旨の連絡をお願いします。」


「かしこまりました。」


そう言うと伏木さんは部屋の外へとツカツカと出ていってしまう。


「それでは儂も着替えと使用人への喝入れがありますのでいったん失礼いたします。ああ、奥様はすでにこちらへ向かっておられる様子ですぞ。」


そう言うと私が引き留める間もなく爺やもささっと部屋を出ていってしまう。

取り残された私は唖然としながらもどうすればいいか無駄に考えていたその時だった。


「ただいま戻りました。」


お母様が戻られたようです。

そうだまだお父様が残っているはず!

こちらを使って…って暢気に寝ている?

肝心な時に役に立たない!

そう慌てている私の前に子綺麗な包みが差し出される。


「杏子から頼まれていた物は無事に確保しておきましたよ?」


「ありがとうございますお母様。」


お母様は約束通り履行しており、言い訳は一切通用しないですわね…。

…逃げ道は完全に塞がれましたね。


「そして見た所…どうやら友里さんのご招待は失敗したようですわね?」


私は息が詰まりそうになるけど何とか言葉を返す。


「私の力が及ばなかったせいです。」


「残念だわ…二人そろって綺麗に整えてみたかったのですがこうなっては仕方ありませんわね…その分、杏子は明日丸一日私に付き合ってくれますわね?」


私は否定することもできず力無くコクコクとうなずき同意します。


こうしてニミリに見捨てられた私は母様の着せ替え人形となる事が決定したのでした。

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