8.二枚目との出会い
はぁーーー、いつ見てもここはすごいなー。
私こと二味友里は現在どでかい鉄の門扉の前に立ち尽くしている。
その横にはレンガ造りの塀が見渡す限り続いている。
そしてここからでは杏子のお宅は小粒程度でしか確認できない。
確かここから二キロはあるとか…そう言えば初めてお宅訪問した時は地下道巡りをして半日はかかった気がする。
…いけないこれは忘れないといけないことだったね。
私もさすがに今日はめかしこんできている。
いつもの黒ぶちではなく銀ぶちの眼鏡に変えているし、髪もおしゃれに飾りをつけてサイドツインにまとめている。
服装もいつものではなく割と上等なものにしている。
…全て母の指示のせいなんだけどね。
というか私こんなおしゃれな服持っていましたっけ?
まあここで私が着ている以上はあったということなんだけど…。
とりあえずどうでもいいことは置いておいてそろそろインターホンを鳴らして知らせる…必要はなさそうだけどとりあえず押しておこう。
右のレンガの塀の上から八段目の一番コケが付いたレンガを叩くとパカッと手前に開かせる。
少しかがんで覗き込むと中に三つボタンがあるのでその中からドクロマークがついた黒いボタンを押す。
ピンポーン
一般のお宅でも流れる軽快な音がその周辺にだけ流れる。
『はい、当家へ何か御用ですかな?』
「二味です。本日はお宅の杏子お嬢様のお誘いにより伺わせていただきました。」
『ほっほ、友里様も挨拶がお上手になられましたな。話しは伺っております。すぐにお出迎えしますので今しばらくお待ちください。』
あー羽山の爺さんかー…。
これは本当にすぐに来るね。
要件を話し終わるとレンガの位置が自動で元に戻る。
この家は何を考えてこんなものを設置したのでしょうかね?
まあインターホンは鳴らし終わったしゆっくりと待たせてもらいますか。
と思っていたのだけど、しばらく待っていると家の方ではなく外側の方で変化が発生した。
黒塗りの高級車…ドイツ製かな?
ごっつい車でそれが門扉の前で停車する。
運転手が先に降り、後部の座席のドアを丁寧に開ける。
降りてきたのは黒髪を短くザンバラに品よく切りそろえたイケメンさんでした。
顔立ちは整っており、世間的には合格点よりはるかに上?と思われる。
そして白のタキシードに赤いネクタイ、ビシッと決まっており長身である。
大きく咲き誇った薔薇を大きくまとめたバラの花束を優しく両腕で抱えており所作も非常に優雅である。
…まあ私の評価としてはこの場所にいるだけで既にマイナス点を振り切っているのだけどね。
こんな場所に来る人の時点で既に残念な人のリスト入りである。
私も含まれちゃうかそれだと…。
優雅に降りてきた男はこちらへ振り向くと少し驚いた顔をすると丁寧に少しだけ頭を伏せながらこちらに話しかけてくる。
「これはこれはお嬢さん。ここは貴方のような一般の方が来るべき場所ではありませんよ。早く退散した方がよろしいかと存じますが。」
全くもってその通りである。
私も帰れるなら帰りたいがそれは許されないだろう。
まあその帰りたい最大の原因がいないので今日はまあ妥協してもいいかな?というレベルである。
「親切なお心遣いありがとうございます。十分承知なうえなのですがこちらも事情がありまして…。」
私は背中に虫が這うような気持ち悪さをこらえて丁寧に返事をする。
その私の言葉に男が仰々しくうなずくと言葉を続ける。
「なるほど、どうしても湯島家と渡りをつけたいといったところですか。貴方も大変ですね。ですが私も人生に関わる重要な件で臨んでいますので引き下がるわけには行きません。しかも今は絶好の機会なのです。だから…ええ、むしろ私を優先させていただきますよ。」
おや、どうやらこの二枚目さんかなり杏子のお宅の内部事情を掴んでいるようですね。
ここは少しだけ言葉遊びをさせていただきますかね?
「まあ、それは知らずに失礼を致しました。重要な件というのはやはり湯島家のお嬢様のお話ですか?」
「君は耳がいいな?なるほどマスコミの関係者かな。その通りだと答えておこう。」
おやおや、杏子狙いですか。
杏子もいい加減サクラ咲いてもいい年齢ですしね。
「なるほど、しかし絶好の機会というのはどういう事でしょうか?」
「それは流石に話せないな。マスコミならば自分で掴んでこそ記事は価値がある物になると思いますよ?」
「いえいえ、貴方様から聞いてもそれは変わりませんよ。見た所湯島家のお嬢様は両親から溺愛されているようですからその不在という内部情報を入手したのではないでしょうか?」
「ほう…中々のやり手のようだね。その通りだ中に働いているメイドの一人から得た情報でね。かなりの対価を払ったよ。」
「まあ、そのような伝手を貴方様もお持ちなのですね。私も高い買い物になりましたがそちらから購入させていただきました。」
「何と…和田さんも抜け目ないな。まさか僕以外にも売っていたなんて。」
「それほどに価値のある情報ということですよね。一番厄介なお母上がいない時を悟られないように情報を入手できたのですから。」
「そうだともそうだとも。そしてお父上への対策は十分に済んでいるからね。」
「やはりお嬢様関連の事で外に釣り出す準備はできていると?」
「うんうん、実は偶然杏子さんが入手したがっているというアクセサリが売りに出されるという情報を掴みましてね。その情報を流せば娘さんが大事なお父上はきっとそちらへ飛んでいくだろうと予想していますよ。」
ふむふむなるほど。
あの父親だと多分その通りになるんじゃないかな?
大体情報がつかめた所でそろそろ終わりにしますかね。
「その計算され尽くされた完璧な計画。すごいですね!」
「そうだろうとも。あっはっは。」
「そういうわけなので羽山さん…あとよろしくー。」
急にやる気のない大雑把な口調に変わったせいなのか、それとも私の横にいつの間にか立っていたお爺さんに面食らったのか、二枚目さんがカチンと固まる。
私に羽山と呼ばれたお爺さんはほがらかに笑う。
「ほっほっほ、友里様なら儂の事は昔のようにじじいと呼んでいただいても構いませんぞ。いやぁよく情報を引き出してくださいました。手間が省けました。」
そして二枚目の方に向き直るとゆっくりと歩を進めていく。
顔はいつも通りの笑顔だけど…ああ、裏は完全に怒ってるわねこれ。
「さて、アポイントメントは無いようですが当家へはどのようなご用事でしょうか?」
「失礼しました。わたくし…。」
「おお、そう言えば挨拶がまだでしたな。いや儂も年を取ってしまったせいか物忘れが激しくてよろしくない。まずは米国式に歓迎させていただきますぞ。」
そう言うや否や羽山の爺さんは二枚目の腰から背中に腕を回しがっちりと固めて持ち上げてしまう。
既に二枚目の顔は痛みのせいで苦悶に満ちているがここから先が本当の地獄であろう。
「セイ!」
羽山の爺さんは気合いの一声をあげると二枚目を締め上げ始めた。
なんかここからでもメキメキという音が聞こえるし、声にならない悲鳴になりかけたうめき声が二枚目の口から漏れ出している。
数十秒もすると二枚目の目は完全に白目に変わっており、口からは泡を吹き出している。
恐ろしいベアハッグである。
約一分後…
曲がってはいけない方向へ身体を曲げた元二枚目さんが完全に気絶したのを確認したのかごみでも扱うようにポイっと乗って来た車の中に捨てられる。
元二枚目を捨て終わるとこちらににっこりとほほ笑みながら近づいて来る。
「お客人をお待たせしてしまった事深くお詫び申し上げます。今からご案内しますのでついてきてください。車は用意させていただいております。」
「確認だけど…あれ生きてるの?」
羽山の爺さんはあごに手を当てると少し考えるそぶりを見せながら答えてくれる。
「ふむ…多分生きてると思いますがどうでしょうな?お嬢様へ不埒な事を考えるクズですので生きていようが死んでいようがどうでもいいのです。」
相変わらずぶれないなーと私は思いつつも案内され湯島家の敷地へと足を踏み入れた。
せっかくのクリスマスだったので斧を持ったゴリラス君がサンタのバルーンを駆使して戦う描写がかけなかったのが心残りです。
やはり焦って書くと書きたい事書かなければいけないことが漏れてしまったようです。
また、別件になりますが評価いただきありがとうございます。
…もうちょっと




