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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
3日目~5日目 ゲームをプレイしない日々
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5.閑話 戦えぼくらのゴリラスくん! 上


皆様は覚えているだろうか?

オープン記念イベントの抽選会場で特等という輝かしい栄誉ある景品に指定されたロボットの事を。


『こちらMMG-003「ゴリラス」君です。全長11メートル、二足歩行が可能なギアタイプのロボットになります。』


『右腕には60ミリガトリング砲を搭載、左腕には射程30メートルの高出力火炎放射器を搭載、そしてコクピットは最上部についており周囲を見渡しやすいように強度の高い金属フレームを採用しています。』


『こちらなんと各イベント会場毎に1名様に特等としてご用意しています。是非皆様がんばってあててくださいね。』


かつて麗しいNPCのお姉さんたちにスピーカーのように繰り返し宣伝されていた彼の事を。

そして運営は抽選結果の通り十四枚のゴリラス召喚チケットを幸運なプレイヤーに配布したのだ。


…ん、チャンネル15まであったのに十四枚だと足りないかだって?

生憎チャンネル15は当選者が出なかったようだな。


では、彼らがどうなったか気になるか?

気になる方はここにゲーム開始三日目に起きたいくつかのレポートを用意した。

読み進めるといいだろう。


興味が無い方はこのまま読むのを止めるのが吉だと思う。

どうせこのゲームの話しだ。

きっとろくな結果にはならないだろうし賢明な判断であろう。


それでも興味のある方は続きをどうぞご覧あれ。


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「veryhard」ワールドチャンネル1


ランダム開始地点の一つである廃工場。

既に壁は鉄錆びており屋根も剥がれ落ち、コンクリートの塀は所々砕けて用を成しておらず廃墟感が漂っている。


そんな陰鬱な風景に似合わないにぎやかさな状況が先ほどから展開されている。


「いやぁーやっぱこんだけチート兵器もらったんなら最高難易度で使わなきゃ損でしょ?」


「ちくしょー運がいいよなー。」


「オープン記念イベント生き残った君も中々だと思うよ?まさかビデオカメラ持ち帰っていたなんてね。是非とも僕の勇姿をしっかり映してくれよ。」


「まあ見栄えよくてブログの再生数も伸びるだろうからそれは構わないんだけどな。おこぼれは期待していいんだよな?カバン全部もってきたからめいいっぱい持って帰らせてもらうぜ。」


「ああ、そこは期待していいよ。他の皆も是非いろいろと持ち帰ってほしい。」


そう言うと男は緑色に輝くチケット…ゴリラス召喚チケットを全員に見せびらかすように右腕でひらひらとあおぐ。

なぜ開始位置がバラバラな難易度で多人数が同一場所から開始できたか?

それは本日から実装されたコミュニティールームには集まったプレイヤーが他ゲームで言うようなパーティー結成機能が含まれていた。

そしてこの場にはコミュニティールームの機能を用いてフルメンバーである十二人でアクセスしているのである。


持ち帰り放題の宣言を聞いた他十人は運良く入室できたプレイヤーであるのでおこぼれがもらえるとなると色めきだつ。

既にあれやこれやと明るい予想をして未来図を妄想してきゃっきゃっきゃっきゃと騒いでいるようである。


「それじゃあそろそろ出すよ?せっかくのシーンだから逃がさず撮ってくれよ。」


その言葉に男はショルダーバッグからビデオカメラを取り出して録画スイッチを入れる。

RECと赤字が表示されている事から撮影はできているようだと確信する。


「よーし、カメラはもう回してるぜ。いつでもいいぞ。」


「了解、それじゃあ…」


「けどオープン記念イベントみたいに真上から降ってくるとかないわよね?」


臨時参加の女性プレイヤーから声をかけられチケットを使おうとしていた男は頬をひきつらせる。

そして虹色のチケットを使用したプレイヤーが踏みつぶされる光景がありありと思い出される。


「こっちもカメラ回してると電池くうからどっちにしろ早く頼むぞ?」


真上から降ってくる、または意地の悪い登場の仕方はあり得る。

そう思ってチケットを持つ手が震えるがどうせ使わなければいけないと割り切る。


「まあ、その時はその時だ!こっちは正式なアイテムっぽいし大丈夫だろ!」


自分で自分を言い聞かせるように大声で宣言する。

そして召喚チケットを使用するためコンソール画面を開く。


「さあ、使うぞ!無双タイムのはじま…」


ドズン!


男が言い切ることは無く、何か大きい物音が鳴り響く。

その音を中心に大きく土煙が舞い上がり視界が遮られる。

他のプレイヤーはその演出に唖然として停止していたが、やがて巨大ロボットが召喚されたものだと予想してワイワイと騒ぎながら期待して待つ。


ひょっとしたらオープン記念イベントのように真上に降ってきてプレイヤーが潰されたのかもしれない。

それだったら棚ぼた的に早い者勝ちでゲットできるかもしれない。


そんなよこしまな期待を抱きつつも時間がたつにつれ煙が晴れて視界がクリアになってくる。

きっと巨大ロボットがあると思って上の方を見上げていると、そんな物はどこにもない。

おかしいと首をひねり、雑談をしながら視界を下に向けると男が三本足で立っている。


いや違う、背中から鉄骨が生えている?

それも違う、男の腹に鉄骨が突き刺さって地面にまでめり込んでいるのである。


「な…なんで…?」


そういうと男は血痕とチケットを床に残しながら粉々に消えていった。


目の前の電子エフェクトを見ながらカメラを回す男も他のプレイヤーも呆然とただ見続けるだけである。

鉄骨なんかどこから来たのか?

恐る恐るきょろきょろと辺りを見回す。


「み…見て!工場の屋根に何かいる!」


全員が視線を向けると三メートルぐらいの大きさの巨漢がこちらを見下ろしている。

よく見るとヘルメットをかぶって破れた白Tシャツにボロボロの作業ズボンを履いている。


ただし皮膚は所々ただれ落ちて赤くなっており、丸太ほどもある太い腕が四本もある。

後ろの左腕には巨大な鉄骨を握りしめている。


『Axaxaxaxa----!!!』


その化け物は咆哮をあげると屋根から飛び降りプレイヤーの近くに土煙と轟音を立てながら着地する。

しかも着地は体操選手の様に体勢が崩れることなくである。


その様子を呆然とただただ見続ける。


「な、なんでセーフエリアにばけもんが入ってきてるんだよ?」


飛び入り参加の男性プレイヤーが震える声で化け物を指さす。

そうだ、スタート地点はセーフエリアのはず一体どういうことだ?


カメラを回していた男はカメラを顔から離すと床を視線に入れる。

そこはありふれた無機質なコンクリートの床である。


そう、光っていないただの床である。


「畜生!この難易度スタート地点がセーフエリアじゃないぞ!」


その言葉に全員がパニックを起こす。

安全だと思っていたツアーが気づいたら最も危険なエリアへ連れてい行かれていたようなものである。


「ひぃ!に、逃げないと!」


「逃げるってどこへよ?教えてよ!」


「え、エスケープできない!本当にセーフエリアじゃないのか!?」


「馬鹿!それよりもチケット拾ってつか…ぐふぉあ!」


「ちょ!殴られて人が真っ二つに…なんなんだよここは!?」


「反対からも何か来るぞ、助けてくれぇ!」


その後二分もしない内に十一名のプレイヤーは全滅することになる。

獲物がいなくなったのを確認すると化け物共はゆっくりと散って行く。


散った後には多数の血痕と持参して来たアイテムたちが残るのみである。


そして寂しく取り残されたアイテムたちは十分後に無情にも全て消え去ることとなった。

当然その中には使用されることもなかったチケットも含まれるのだった。

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