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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
2日目 オープン記念イベント
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29.閑話 一般人?から見たオープン記念イベントの風景 その1

注意書き:この話の登場人物の男性の服装は全てTシャツ短パンです。


『では引き続きサタン君とご歓談ください。あーちなみにZDは「残念」「でした」の略称になります。それではまたの機会にー。』


人を馬鹿にした運営のアナウンスが終わると残ったのは阿鼻叫喚の地獄絵図である。

人がゴミのように潰され飛ばされ散っていく、現実なら噴飯物だし職務上許せんことだろう。


しかし、ここはゲームだ。

現実を持ち込むのはよろしくない。


「それでどうしますかフジニ?」


「キサライチか?うーんフジイチとミサワイチはあの化け物にぺしゃんこにされてしまったようだしな。やむを得ないので彼らはあきらめて非常階段から撤収する。」


私ことフジニはスキルでマップの全体図を表示して状況を確認していた。

するとエントランス以外に脱出口がいくつか発生し、今までなかった通路も複数開放されている。


「非常階段ですか?エレベータは?」


「あんなに人が群がってる所に近寄れんし時間の無駄だ。更に狙ってくれと言ってるようなものだぞ?現実なら避難指示ぐらいは出すんだがそんな必要はゲーム内ではないだろう?さっさと移動するぞ?」


俺とキサライチとコマツイチはエレベータに殺到している人の流れから外れて、非常階段へ向かう。

誰かが扉を開けて脱出したということは無く、俺は鉄扉を開ける。

ギィーという音を立てて開けた先は金属製の外階段がついている。

外の時間は夜の設定であろうか?

薄暗く足元がおぼつかないがここを移動するしかない。


「外階段になっているようだ。こちらもいつまでも安全とは限らない。迅速に移動するぞ。」


振り返って声をかけたその奥ではサタンという化け物のハンマーによって待機しているエレベータが片っ端から叩き潰されている光景だった。






「屋上へは向かわないのですか?」


ルーズソックスにぶかぶかのセーラー服…一昔前のコギャル?という格好に肌を黒く染めているキサライチが声をかけてくる。

格好には文句を言う気はないが若作りしすぎではないか?

鯖を数え過ぎではないかと思う。


「何か失礼なことも考えていませんか?」


「いや、そんなことは無いぞ?ゴホン。まあ簡単に言えば広すぎて逆に怖いと言ったところだ。確かに屋上は見えやすい所にセーフエリアが置かれているらしいが周りに何もない。逆に言えば何でも設置し放題だ。怖くて行く気が起きないな。」


さきほどの一件でこのゲームは非常に玄人向け…言ってしまえば趣味が悪く作られていることがわかる。

ならば屋上にはラ〇ンやモ〇ラが待ち受けていたとしてもおかしくない。


「この非常階段は三階まで下れる。だが今から行く先は四階だ。」


俺達はその後は無言になり、金属音をカンカンと響かせながら階段を下り四階の非常口の前で待機する。

そこでコマツイチが挙手しているのに気付き促す。


「質問をしても?」


「許可する。」


「なぜ四階に?」


「まあ勘でしかない点もあるが…まず五階は広い上に逃げ込む場所が無い。食堂というワンフロアだったしな。三階は化け物の展示場だったろ?さっきのようなことをやった運営が化け物を解放している可能性が高いんじゃないかと思ってる。」


コマツイチが苦虫を潰した顔をする。

それに対し俺も苦笑いで返す。

お互いTシャツ短パン姿で夜空の非常階段の前で雑談する姿は流石に笑えて来る。


「しかし、四階も狭い通路で逃げ場がありませんでしたよね?」


そう、そこが問題だ。

けど案内役のNPCしかいなかったし後から追加されるにしても浸透するには時間がかかるんじゃないかと踏んでいるわけだ。


「いざというときはフジさん頼りでしたからね。フジイチが抜けたのは痛いですね。」


「まああれは仕方ないさ。それよりも近接戦闘の得手があるのは俺だけだと思うから陣形は…」


そう突入後の話をしていたその時だった。

上からガンガンガンと金属を乱暴にたたく音が響いて来る。


「見たかよジェフ?あんなモンスターいるなんていいサプライズだな!」


「こっちとしてはダリルがナイフで足元斬りかかった時がヒヤッとしたけどな?あんなの戦略的撤退一択だろ!」


「そうは言ってもよーやっぱ舐められっぱなしは性に合わねえじぇねえか?まあナイフ折れるだけで全然効果なかったけどな?」


…なんかにぎやかな人達が下りてきたようだ。

そして俺達と視線が合う。

キャラクターカスタマイズ的には外国の方のような気がするけど、そのまま外見から判断するわけには…。


「参ったな?既に先客がいるぞ?わりぃが先行きてぇんだが通してもらっていいか?できれば汚ねえケツを蹴り上げる前にどいてくれや。」


「こらお嬢さんもいるんだぞ?もっと紳士的にお願いしなさい。」


あーこれは一般人じゃなさそうだな?

アウトローじゃないことを祈りたい所だが…。


「すまんね。ちょいと言葉遣いは荒いが悪気があるわけではない。君達もここを選択している以上正常に状況を判断していると見える。もしよかったら私達に同行してはいかがかね?当然私達が先行させてもらってやり方は私達が決めてしまうがね。」


話し方だけは丁寧だが、他の面では一方的な強要が感じられる内容である。

怒ってここで断るのもありだが、それは建設的ではない。

先に行ってもらって少し試してみるのはいかがか?

それだとリスクだけは低減できる。

最悪言葉だけだとしても囮にはなるだろうしな。


「わかりました。ですが指揮権を完全には預けられませんので離れて後から行動させてもらいます」


俺の言葉に正面の若い金髪の白人が少し驚いたように顔にしわを作る。


「ほほう?指揮権とね?どこぞの公務員かね?まあよい、せっかくだからベテランの戦いという物を見ておきなさい。」


…ベテラン?

どう見てもファンキーな十代の若者集団にしか見えないが…、見た目通りじゃないという事か?

とりあえずキサライチとコマツイチに扉の前を開けるように指示を出す。


そして離れた二人に入れ替わり黒人プレイヤーが一人扉に張り付き耳を当てる。

残り四人はツーマンセルで既にナイフを抜き放っている。


黒人が数秒耳を澄ませるとハンドサインをてきぱきと出す。


数二つ、距離短距離一、中距離一、即時制圧、GO


最後のハンドサインが出されると音が出ないゆっくりさでドアノブが回され扉が開かれる。

すぐに最初のペアが音もなく侵入し、一人が巡回している女性のNPCの頭を掴むとそのまま後ろに引きずり倒す。

しかしNPCも人間の反応としてもがいたり悲鳴をあげたりすることはなく、右腕の先端部分を切り落とす。

切り落とした先から出てきたのは長い刃物でありそれを振り回そうと腕を回転させようと動かし始める。


だがNPCが動けたのはそこまでだった、もう一人がすぐさま刃がついている元の腕部分を脇で挟むように締めあげてロックし、そのままNPCの心臓にナイフが向かう。


バキィィーン!!


何か硬い音が砕ける音共にナイフがNPCの胸元に突き立てられる。

バチバチと変な音が鳴っており、NPCの動きが鈍くなる。


「おい、ウィル!こいつら人間じゃねえ!とどめさしちまえ!」


胸元にナイフを突き立てた男の言葉に頭を掴んでいた男はうなずくとそのまま首のあたりにナイフを突き立てる。

そして何かを探り当て開けようとする仕草を繰り返す。

メキッと何かがひしゃげる音が鳴るとすぐさまナイフを深く刺し入れ一気に何かを切断してしまった。

それきり元女性NPCは動くことは無かった。


この間十秒にも満たない早業である。


しかし、音を立て過ぎたのだろう。

もう片方の女性NPC…いやロボットかな?

こちらに振り向き状況を確認するとすぐさま右腕の刃を取り出してこちらに垂直に向けながら突っ込んでくる。


それを見越していたのだろうか?

もう一人のプレイヤーが半身に構えてロボットを正面に見据えている。

ロボットがガシャガシャと勢いよく一歩一歩と駆けてきて…最後の一歩で深く踏み込み、プレイヤーの心臓をえぐるように最大の加速で刃を突き出す。

人間とは思えない速い突きだ。

キサライチに至っては突かれる瞬間に軽い悲鳴をあげこちらにも緊張している空気が伝わる。


だが、その突きはプレイヤーの心臓を突くことはできず…。

むしろプレイヤーはにっこりとした笑顔で刃の下の部分を右の脇下で挟み込んでいる。

ロボットはもがいているようだが動くに動けていない。

そのロボットの頭も左の脇下で抱え込む。


「お嬢さん、確かに人を殺すには刺すのが確実だ。しかし、いくら早くても直線的な動きじゃあ見切りやすくて素人しか殺せんよ?そしてだ。」


いつの間にか刃の腕の方は右手で掴み直していたようだ。

頭を抱え込まれたロボットはそのまま垂直に廊下の天井近くまで逆さまに持ち上げられる。


「近接戦闘において大ぶりな攻撃は致命的な隙を招いてしまい、取り返しのつかないことになる。次があるなら覚えておきたまえ。」


言うや否やプレイヤーは後ろに仰け反りながらロボットの頭を地面にたたきつける。


ガギャァーン!


持ち上げられた体勢ではロボットは抵抗することができず、派手な音と共に金属パーツや回路が壊れ飛び散る。

頭部が無くなって墓標のように逆さまに立たされたこちらのロボットもまた機能が完全に停止したようだ。


やった本人は満足そうだが、ツーマンセルを組んでいたもう一人はかなり不満そうな顔で近づいていく。


「なあ、フレッド…。馬鹿みたいに大きな音たてやがって、ブレーンバスター決めて満足か?そりゃあやった本人は満足だろうけどな少しは状況考えろよ?」


そしてやった当の本人はと言うと…。


「本当は見せ場無くなって悔しいだけだろ?マークス。少しは働けよ。」


そのまま取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。

おそらくこの五人はフレンド登録済みなのであろう。


…ここまでもめるならフレンド登録しないほうがいいんじゃないかな?

誰が止めるんだろうかこれは?と思っていたら案外すぐに止まった。

扉の外にいた黒人プレイヤー廊下に入ってくるとあきれたように言葉を投げかける。


「マークスもフレッドもじゃれあいは後にとっておけ。それよりも目標の物はあったか?」


「こっちは「101」~「404」と「502」で目標の「503」はねえ。」


「ちょっと待ってくれ…こっちも「101」~「404」と…あった「503」だ。」


元女性NPCのロボットから目的のカードキーを抜き取るとフレッドというプレイヤーはズボンにしまう。


「よし、今から最短距離で「503」号室へ向かう。途中の障害はなるべく避け、あるいは迅速に排除する。遅れる奴は置いてくからな?」


それはこちらにも言い聞かせる形だったのだろうか?

全員うなずくとその場を迅速に後にした。

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