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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
2日目 オープン記念イベント
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25.オープン記念イベント -地下駐車場 その4-

仕事が立て込んでおり書く時間が取れず遅くなりました。

待っていた方には本当に申し訳ありません。

「ジャッジャーン!熊撃退スプレー!」


私はカバンより一本のスプレーを取り出しふたを開ける。

そしてスプレーの照準をのっそりとクロールをしながら近づいて来る一番近い熊ゾンビに向ける。


「熊公め、化学の力を思い知れ!」


私は熊ゾンビの鼻目掛けてスプレー缶のスイッチを押す。

ノズルの先からは勢いよく飛沫が噴射され熊の顔を覆い尽くす。

強烈な匂いがこっちまで来るのはいただけないけどこれで嫌がってくれればその隙に…。


なんてことを考えていたけど予想と違い熊ゾンビの勢いは止まらない。

熊ゾンビはそのまま頭を近づけてくるととスプレーを持っていた私の右手に噛みついてくる。

牙が肉に刺さりこみ痛みが走り始める。


「ちょっと離しなさいよ!」


私は振りほどこうともがくけどそれよりも熊ゾンビは力強く振り回されそうになる。

何とか抑えこもうとしたが熊が頭を大きく振りかぶり私の右手をかみちぎる。

その勢いのままかみちぎられた私の右手は熊ゾンビが口から離したことにより明後日の方へと飛んでいく。

そして目の前にはひじから先が無い右腕が血を噴き出し続けている。

当然痛みもいまさらながらに十分に伝わってきており混乱している。。

痛みが伝わり泣き叫ぶまでの時間もなくあっという間の出来事だった。


「痛っつぅ…、何で効いてないのよ?」


熊ゾンビは既に目の前である。

ならば予備でとっておいた催涙スプレーもまだ生きている左手で熊ゾンビの顔に吹き付けてやる。

だがやはり効果は無い。

平然とこちらを見据えて左腕を振りかぶる。

おかしい、熊はこういった匂いが強い物は嫌がるはずなんだけど。


…あぁ、そっかこいつらゾンビじゃん。

既に死んでいる生物に匂いが効くわけないじゃん。

気づきなさいよ私。


さてと回答がでたところで目の前のこいつらどうしようか?

このままあきらめるのも悪くないけど、何かそれはむかつく。

私の右手と左足の分の落とし前をつけてやらなければ気が済まない。

ならばやりたい放題最後まであがいてくれる!


「左腕を振りかぶっているということは右側がお留守になってる!」


熊ゾンビが左腕を振り下ろす前に私は残った右足で地面を蹴り、私から見て左側…熊から見て右側に入り込む。

そのまま左手で熊ゾンビの側面を掴み自分の体を引っ張り、体を熊ゾンビの後ろに回り込ませる。

踏ん張り効かずに危うくそのまま回り込み失敗しそうになったのは内緒です。


さぁて、背中は取ったしどうしてくれようか?

せめてこのむき出しになっている内臓をぐっちゃぐちゃにしてかき出すぐらいはやってやろうかね?

私は無事な左手で熊ゾンビの内臓を乱暴に掴む。

あーぐにゃりと気持ち悪いねこれは…。


『Guoo--n!?』


背中に回られたことには気づいていたが内臓を掴まれたことでダメージを感じたのだろうか?

熊ゾンビが両腕を地面につき身体を振って暴れる。


何今さら好き放題暴れて自分は逃げようとしているのでしょうね?

私だけ手と足を失うとか不公平じゃないですか?


負けじと右足で踏ん張りながら掴んだ内臓を引っこ抜こうと引っ張る。

ブチブチメリメリと内臓が分離していく音が響き、熊ゾンビが暴れ続けているという事は効果があるのだろう。


けど熊ゾンビの暴れる動きに私の方が耐えきれそうにない。

このままだと強引に振り切られそうである。


まったくおとなしく心臓ぐらい引っこ抜かせてくれたらいいのにこれだと中途半端だ。

ならば方針変更するしかない。

後ろからも残りの熊ゾンビが迫っているので時間がそもそも無い。


ここは裂けた内臓の傷口に洗剤を塗り込んでやろうじゃないですか。

私はいったん内臓から手を放すとさっき手に入れたアルカリ性洗剤を手に取る。

さあ、傷口に染みわたれ…ってあれゾンビだから染みないのかな?


最後の最後でまた同じ失敗をしているのに気付いたがもう手遅れ。

とりあえず内臓に向けてレバーを引き、洗剤を吹きかける。

薬剤がびゅっびゅっと熊ゾンビの血が噴き出している内臓に吹き付けられる。


『Guruouuu---n??』


…おかしい、熊ゾンビがものすごく悶えている。

ひょっとしてこれはゾンビではなかったのだろうか。

それともゾンビでも傷口は染みるのだろうか?


成果があったことで割とどうでもいいことを考えていたのだけど熊ゾンビの方には顕著な動きがあった。

洗剤をかけた所の内臓部分がじゅわーっと煙を立てながら、黒ずんだ茶色へと急速に変色していくのである。


「へ?何が起こってるの?」


急速に内臓が茶色へとそして黒色へと変色した熊ゾンビの肉体はボロボロと土くれのように崩れ落ち始める。

そして最後には毛皮と骨だけを残して消えてしまった。

…本当に何が起きたのだろうか?


考えられるのは…?


(1)内臓をある程度攻撃すれば倒せる相手だった?

(2)内臓に薬品を撒いたのが効果があった?

(3)制限時間があって稼働可能時間を超えたので巨〇兵みたいに腐って消えた?

(4)洗剤が特攻武器だった?


うーんどれもあまり説得力も確証も無さそうだね。

では一個ずつ試して可能性を潰していくのが一番かな?


私は寝がえりをうち今倒した熊ゾンビを背にしてこちらへ近づいて来ている一頭へ洗剤の噴き出し部分を向ける。

巨体を両腕のクロールでドシンドシンと音を立てながら近づいてきており相変わらず迫力がありすぎる。


「とりあえず一番あったら楽な選択肢から試させてもらおうかな?」


ある程度は飛ぶみたいだし洗剤をかけてみれば何かわかるかもしれない。

距離がまだあるけどとりあえず熊ゾンビの頭めがけてレバーを引いて吹きかける。


色のついた洗剤は宙を飛び熊ゾンビの毛皮の部分のあちこちに付着する。

こちら意を介していないという事は洗剤は効果が無いという事だろうか?

なれば次の覚悟を決めて…と思ったときに状況が一変する。


『Guo---nn!?!?』


洗剤が熊ゾンビの目に入ったのだろうか?

熊ゾンビがクロールを止めて目を抑えている。

目からはじゅわーと煙があがっており、先ほどの現象と類似している。

そしてじたばたを悶え苦しむと最後には毛皮と骨と土くれのような肉体の残骸を残して消えてしまった。


私は洗剤の情報を参照すべくコンソールを覗き込む。


-------------------------------------------------------


【アルカリ性洗剤】


アルカリ性の洗剤。

酸性の汚れに効果を発揮する。

台所の油汚れ等に最適。


重量:不明


-------------------------------------------------------


なるほど…熊ゾンビの肉体は油汚れだから落ちたという事にしておきましょう。

さてと残りは後一体、生意気にも私の左足を持って行った下手人である。


私が視線を向けると熊ゾンビがクロールを止めて顔をガードする。

なるほど、こちらの武器に気が付いたようで身を守る行動に移ったのはかしこい。


私も熊ゾンビも互いに手足は二本、まさに最後の決闘にふさわしい。

距離が変わらないけどお互いに睨みあいながら次の一手をうかがっている。


…なんてね?

生憎、熊ゾンビは欠点が多い。


「頭隠せても内臓隠せてないよ!」


私は熊ゾンビの上めがけて洗剤を吹きかけてばらまきかける。


『G、Guon?』


慌てているがもう遅い。

こちらは飛び道具であっちは肉体に直接接触すればアウトなのである。

ならば洗剤をたっぷり吹きかけれる私の勝ちは揺るがないのである。

熊ゾンビは上体を起こして腕を振り回してもがいているがそんなことすると前から下狙っちゃうぞ?


しかしその必要は無かった。

どうやら毛皮にかかった洗剤が垂れ落ちてそのまま内臓に触れてしまったらしい。


『Guoooo---!!!』


胴体の部分からまた煙が噴き出して変色を始めている。

死んでいるはずなのに苦しそうに悶え、そして恨みがましくこちらを睨みつけてくる。


「残念だったわね?運が無い己を呪ってなさいね。」


サービスで私は飛び切りの笑顔でウィンクしてあげる。

それを見た熊ゾンビの睨みがさらに強くなったが意味は無い物だった。

煙を噴き上げ終わった後は、先ほどの二体と同様に残骸を残して消えてしまった。


「はぁーーーーーーー!」


私は盛大にため息をつく。

今回運だけだったけど何とか乗り切った。

やりましたよ勝ちましたよ。


「ニミリーーーー!」


遠くからアンズの声が聞こえてくる。

ここからだと姿勢が低くてアンズの頭しか見えないけど水色の光がアンズを包んでいる。

三人ともどうやらセーフエリアの上に移動し終わったようだ。

まあ私のおかげだけどね!


「アンズー!勝ったわよ!」


私は洗剤を持った左手でアンズの方へ振りかぶる。

…あれせっかく熊倒し終わったんだからもうちょいいい笑顔してくれてもいいのに何でそんなに険しい顔して指さしてるの?

















「ニミリ!後ろーー!!」


…はて?、後ろ?

私はゆっくりと頭だけ振り返る。

すると半壊した車の上に右腕を振りかぶっている熊ゾンビの姿が目に入る。

右腕の振り下ろす先は当然私だろう。

この状態だともう間に合わない。


…おかしい確かに三頭とも処理したはずだ。

ということは?


「もう一頭いたの?!」


その遺言と共に私に向かって熊ゾンビの剛腕は振り下ろされ頭上から痛みが走った所でゲームの映像はぷつんと途切れた。










『残念ながらあなたはゲーム内で死亡しました。 規約に基づき十分間のログイン制限を実施します。』


機械的なメッセージが流れる。

ちょっと頭の方にこづかれたような痛みが走っている。

油断したーーー!

あそこまでやったのに悔しい!


ひとしきり悶々としたけど時間がたつと私の思考は冷却され次第に落ち着いていく。


まあ荷物はアンズに預けてあるから問題なし。

そもそもアンズがセーフエリアに到達するという事で勝利条件は満たしているのである。

収支的には黒字でめでたしめでたし。

いやーどうなることかと思ったけど無事に終わってよかった。


私はヘッドギアを取ると目の前に黒い影が佇んでいるのが目に入る。

そーっと見上げると影は右腕を振りかぶっており、今にもこちらに振り下ろそうとしている。


あれ…?

ゲームは終わったよね?

まさか現実まで浸食してきた?

熊が部屋の中にいるとか!?



私は仮想と現実がごっちゃになり混乱する。

これってどういう事?















「ゆり!あんた今何時だと思ってるのよ!父さんもう帰ってきて待ちくたびれて次のお酒開けちゃってるわよ!」


ごつんという音と共に私の頭の中に火花が飛び散る。

熊に殴られた時より遥かに痛い衝撃で私は全て思い出す。


そうでした。

本日は早くゲームを終わらせて大学の書類を作る約束を親としていました。

しかも今の時刻…21時30分…いつものゲームを終わらせる約束をしている時間をさらにオーバー…これは非常にまずい…まずすぎる。

私は血の気が引くような寒気に襲われ固まってしまう。


「とにかく今すぐ電子押印と顔認証のポータブル持って居間まで来なさい!」


母の一喝で私の凍結状態はすぐに解除され混乱状態におちいる。

私は慌ててヘッドギアを雑に片付けるとすぐに色々と持って居間へ駆け足で向かった。


結果を言うと、父には友達付き合いもあるからということで苦笑いで許してくれたけど、母の怒りは昨日に引き続きの時間破りだったため収まらず、説教はいつもより長く続くことになった。

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