18.オープン記念イベント -エントランス その4-
プレイヤーの頭が宙を舞い、そのまま電子的なエフェクトと共に消失していく。
明らかに攻撃されているのである。
誰に?
「ねえニミリ!これどういうこと!?」
「説明は後!とりあえずそこへ飛び込むよ!」
私はアンズを引っ張りそのままごついカウンターの中へ投げ入れる。
そして私もカウンターの中へ飛び込む。
投げ入れてしまったせいだろうかアンズが尻もちをついておりそのままお尻をさすっている。
そう言えば手加減せずに放り込んじゃったね。
「ニミリひどいですよ。お尻ぶつけてしまいました。」
乱暴になってしまったのは申し訳ないけど危険を感じたらとりあえず身を隠すべきだと思う。
FPSのゲームでもよく言われたし少しだけ我慢してほしい。
さて、状況は楽観視できない。
まずは現状を確認をしないとね。
カウンターを隔てた向こう側ではプレイヤー達の悲鳴と不規則な駆け足の音が断続的に聞こえてくる。
まずは何かに襲われてて逃げる必要がある状況が発生しているのは間違いない。
そして襲ってるのは多分次シークエンスとか怪しいことを言っていたNPCだと思うけどこれは目視して確認する必要があると思う。
安全のためにカウンターの仕切りを叩く。
コンコンと分厚い木の音が悲鳴に交じって聞こえてくる。
多少の衝撃は大丈夫だけど完全に安全と言えるかといえば明らかにNO。
状況によっては逃げに入る必要があるだろう。
私はカウンターからそっと頭を出す。
視界に入ったのはNPCのお姉さんが逃げ惑うプレイヤーを襲っている。
明らかに人では無く関節部分の継ぎはぎが見える。
ロボット?オートマタ?スクリー〇ーズ?
まあその辺はなんでもいいかな?
右手は途中から腕が無くなっており代わりに刃が生えている。
仕込み杖的な何かで隠してたのかもしれない。
動きは異常に早いというわけではなく常識的なロボットの緩急ついた動作である。
一人ずつ殺しまわってることから超常的に力が強いわけでもなさそうだ。
周囲を見回しこのエリアにはそれが計三体確認できる。
それでプレイヤー達は今どうなっているかと言うと…お互いの接触制限のせいでうまく逃げることができていない。
追い付かれて斬りつけられ、刺されて、電子エフェクト共に消えていき、消えた後には先ほどまでばら撒かれていたたカバンが足元に残る。
「なるほど時間が来たから別のイベントが予告なしに始まったちゅう話か、質が悪いな。」
「そうですね。多分他も同じような感じでしょうね…。ところでプリペイドさんはいつの間にカウンター内へ?」
「いや一番冷静に行動しとったのお嬢さんやから真似させてもろうたわ、そして俺の名前はプリペンやで。」
名前が間違っていたけどそんなことはどうでもいい。
とりあえず方策を立てないといけない。
私は頭をカウンター内に引っ込めるとアンズと相談を開始する。
「アンズ大丈夫?情緒不安定なら頬を叩くか胸を揉むかしてあげるけど?」
「大丈夫ですわ。頬を叩くのはいいですけど胸はだめですよ?」
冗談に冷静に対処できているならまあ大丈夫でしょう。
私はスキルを使用してオープン記念イベントのマップを表示させる。
すると館内全てが真っ赤に表示されており、メイン会場を除いた各階の一部に青い個所が表示されている。
加えて屋上エリアと地下エリアが追加されそこへの通路として非常階段が追加されている。
抽選会場の奥が青くなっていることから…ああ、開けさせてもらえなかった非常口かな?
恐らくばら撒いた景品が欲しかったら非常口から脱出しろということなのだろう。
…そう言えばここは抽選会場とつながっているんだっけ、これはちょいとまずいかもしれない。
となると方策を立てるとなると三つ、けどどの階も同じ状況と予想され、エレベータでの移動は私にとって怖いものがある。
加えてエレベータの方で騒ぎ声が聞こえるので使えるかも怪しい。
「とりあえず案が三つあるけどどれがいいか確認させてもらっていい。」
「おお、お嬢さん回転はやいな。」
「時間も無さそうなので手短にお願いね。」
アンズの言う通りなので端的に説明していく。
「多分ここのシャッターが開くことは多分ないし、仕掛けがあるかもしれないけど探す気はない。よって新しくマップに出た非常口から脱出しなければいけない。そして非常口は各階一つ。ここから行ける非常口への道は三通りで、一つは抽選会場の非常口、一つは新たに追加された非常階段から地下に降りての非常口、一つはエレベータから別の階へ移動して非常口。」
アンズとプリペンさんはうなずいて聞いている。
プリペンさんは他人だから判断には加えていないけど邪魔をしないならまあいいかな?
「けどエレベータは襲われたプレイヤーが必死になってボタン押して群がっとるで?」
「ああ、やっぱりそうなってるのね。了解、じゃあ二つだけど私は非常階段から地下エリアを抜けて脱出がいいと思う。」
「ニミリが押すならその案を採用しましょう。」
「了解。話が早くて助かる。」
そして私はまたカウンターから頭を上げて非常階段を探す。
向かい側のトイレの横か…結構距離がある。
確認を終えるとまた潜水艦のようにカウンター内へ頭をひっそりと沈ませていく。
「場所は確認したし、後はプレイヤーが減るのを待ちましょうか。」
「プレイヤーがやられるのを待つんかいな。結構冷徹やね?」
「だって多すぎると満足に動けないからね。本当なら時間を節約したいけど生憎手持ちでは打つ手がないしね。これで武器があれば強硬策が、メガホンとかあればもう一個手段あったんだけど、無いならやられてる隙にこっそり動くのがベストじゃないなかと思ってる。」
「武器はないな。メガホンか…、メガホンは無いけど似たようなもんなら…。」
プリペンさんがカバンの中をごそごそとあさりメガホンによく似た機械を取り出す。
ああ、そんな都合のいいものを持っていたとは。
これは目立つけどちょっとだけ安全な策が取れるかもしれない。
時間は稼ぐことができるのでむしろやったほうがいいだろう。
私達はカウンターの下でこそこそとこの先の予定を相談した。




