10.基地司令
「いえいえ…ニミリ?現地集合に確かにしましたけれどまさか顔合わせは無しなのかしら?」
「Wow…私も最初にやると思ってたです。時間が無駄になると思ってたですがまさかこうなるとは…」
うーん改めて聞かれても…アンズとウメの言葉の方に理がある。
普通ならそう思うよね?
だけどあの人達にはそれが通じないんだよ。
「事前に計画表はもらったでしょ?あれに異論が無かった時点で合意は取れたので作業を優先すべき…と判断したんでしょう」
「そのような極端な事…」
うん、アンズの言う事は正しいよ。
けど世の中にはこういった変わった人も…
「…をするニミリのような人が集団でいるなんて信じられませんわ」
…って私も!?
流石にそれは風評被害がひどすぎないですかねアンズさんやい!?
というかそういった強引かつ人の都合を考えないのは杏子の思考パターンじゃないの?
そう考えると一瞬沸騰しそうになった感情は落ち着き、自然と呆れの溜息を付く。
「それはそっくりそのままアンズに返すよ。で、現実はこの通りだから…私達は頼まれた仕事やって補給エリアとやらの観光に行かない?」
「ニミリ?そのまま返すってどういう意味です?少しお話が必要のようで…」
「アンズシャラップ。時間の無駄です。私も補給エリアに何があるか興味があるので仕事は早く終わらせて行ってみたいです」
ウメがアンズの言葉を遮ると私の意見に同意してくれる。
本当にアンズと違って素直で助かる。
さてそうなると私達の仕事は…。
「頼まれているのはあまり多くない…というか1個だけだね?すぐに終わりそうだし早く片付けて自由時間と行かない?」
「ねえニミリ…本当に私達は何もしなくていいのかしら?」
あのアンズですら不気味さを感じて真っ当な意見を出し始めているけど、あの人達からするとそっちの方がありがたいらしいからね。
手伝って欲しい時はその時に言うと言ってたし、素人が関わる方が効率が落ちたりするかもしれないから逆に困ると言われちゃったらね。
「結果はともかく腕はいいはずだし…それでいいんじゃないかな?それよりも仕事片付けよ?」
手段のために目的を選ばないのは困るんだけど…今回は利害が一致しているし問題ないでしょ。
そう考えると私は基地の司令塔のような建物の金属扉を開いた。
「管制室への直通エレベーターがあって助かりましたわ。階段しかなかったらどうしようかと…」
「確かにねえ」
エレベーターがあって助かったというのは間違いない。
そもそもこんな高い建物を一歩一歩階段を上るなんて苦労を誰がやりたがると言うのかな?
しかもイベントで時間制限がある中で…そんな奇特な人は恐らくほぼいないと言っても過言では無いと思う。
さて…強化ガラス張りの窓に囲まれて四方の視界に困らない高所の管制室…あちこちに通信設備は置いてあるけどそこに座る人は誰もいない。
そもそも通信設備なんてあっても使えるかどうか…それ以前に使う必要も無いと思われる。
だって無線機置いてあったしね?
そして目的だった人物は部屋の中央に座っていた。
あれが私達以外の人間…いや基地司令のNPCだろうと思う。
私達が近づいていくとこちらに振り向き、先に声をかけてくる。
『よくいらっしゃいました。私が当基地の司令のキリカと申します。このたびは当基地の防衛任務への着任、感謝申し上げます。私も協力は惜しみません。共に侵略者達を撃退しましょう』
キリカと名乗った女性NPCが私達に敬礼をしながら歓迎の意を示してきます。
戦闘服では無く制服よりの軍服を身にまとっていてロングの黒髪でスタイルも良く…元気もあり、丁寧で基地司令というよりもしっかりとしたお姉さんという印象が強い…一定数の男性には人気がありそうだなと思う。
「Oh…この方がガードしないといけないサポートユニットですね?どうやらコンソールを開いて情報を見る事ができますね」
ウメがそう言うので私もアンズも興味が勝り見てみる事にする。
ウメの言った通り、コンソール画面が開きその詳細が表示される。
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【キリカ】
本名:???
性別:女性
趣味:???
嗜好:???
嫌悪:???
所持スキル
西側軍事車両操作:Lv2
西側銃火器取扱:Lv2
刀術:Lv3
物資管理:Lv1
射撃統制:Lv1
砲撃統制:Lv1
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表示はされたけどわからない事ばかりだね。
???はおそらく開示されていない情報…まあ知らなくてもいいような割とどうでもいい項目なので無視して構わないと思う。
そして所持スキルはなんとなく書いてあることは大体わかるかもしれないけど、それじゃあどういう効果があるのと言われても全く分からない。
スキルの部分を選択すればコンソールが表示されるけど内容は、サポートユニットの所持者のみ閲覧可能という事で見れない事がわかっただけで全く進展は無かった。
…まあ色々とできる事があるんだねという事しか今はわからないという事ですか。
そういえば…うちの植物ボールもひょっとしたらこういう画面が開くようになっているのかな?
時間がある時に試してみるのも悪くないかもしれない。
『もうそろそろいいかしら?是非協力させていただきますのでいかようにも命令ください』
どうやら基地司令だから命令を聞いてくれないなんてことは無く、協力的な態度であるのはありがたいよね。
だけど…どうやらこの護衛対象のサポートユニット…所持スキルを見た所、指揮官らしくなく直接の戦闘に自信があるように見えるんだけど護衛対象が危険を晒して戦闘をしている時点でリスクしかないから当然却下。
まあ手伝ってもらえるなら…後で何か使い方を考えておくのがいいかもしれない。
だけどまずは最初に協力してもらう事はこれだね。
私は基地司令の詳細を表示していたコンソールを閉じるとキリカと名乗ったNPCに命令する。
「じゃあ早速だけど倉庫に移動してもらえるかな?ここは必要無いから取り壊す予定なので」
そう言うとキリカは私達を見つめ目を白黒させ、そのまま生気が抜けたような顔になり首をコテンと横に倒したのでした。