13.オープン記念イベント -6Fメイン会場 その2-
メインイベント会場…
中央部では数多のプレイヤー達が我先に我の物だと奪い合う。
その熱量まさにバーゲンのおばちゃん達の争奪戦に匹敵するだろう。
「無限に湧くって言われてるのですから少し待てばいいのにね?」
「人間アンズみたいに満たされた人だけじゃないからね?むしろ大多数は物欲という物に支配されているからね?」
まあ、あおられて物欲丸出しにしているのもあるけど、カバンを持って物品を詰め回るという順序的にも正しいわけだから無駄になるわけはない。
それ以外にも早く回りたいとかいうせっかちさんもきっと多いことだろう。
「それでアンズは何か先に確保しておきたい物あるの?」
「ニミリはお約束の知識が足らないですわね。こういったゲームではまず確保しなければいけないものがあるではありませんか?」
…そんなものあったかな?
残念ながら私は心当たりはない。
まあアンズが探しているものがあるなら付き合うかな?
えーと右手は【缶詰】かな?無数にフルーツ缶がぼこぼこ湧き上がり山を形成していく。
…桃缶があったら何個か欲しいな。
左手は【ハンカチ】かな?布がどんどん下から重なっていく。
包帯代わりにも使えるし汚れを取るのにも使えるしあれば便利だと思うな。
他にも【フロッピーディスク】【団扇】【金槌】【弾薬】【クリアファイル】とか半分以上何に使うかわからないものがあったがアンズの望むものではなかったようだ。
そしてそれを抜けてしばらくするとアンズがこちらに声をあげる。
「あ、ニミリありましたよ!こっちです!」
「やっぱりこれがないと始まりませんよね?」
あー…【ナイフ】ですかねここは?
いや他の刃物も置いてあるので刃物のテーブルなのかもしれない。
テーブルの中心から鞘に入っているとしても刃物が湧き出してくるのは正直怖い。
アンズはナイフの縛りプレイでもするつもりなのだろうか?
そうだとしてもアンズは拳銃を構えるだけでもふらついていたのにナイフが扱えるのかな?
あれこれ考える私をよそにアンズはテーブルの上からナイフを適当に三本ほど回収する。
「はい、終わりました。では次へ行きましょうか?」
見るからに次から次へとテーブルの真ん中から刃物が増殖していくというのは不気味な光景である。
こんなにいっぱいあるのにナイフの種類もいっぱいである。
逆に何か引っかかる。
アンズはどうやら終わったような気になっているけどどうも何か変なような気が…?
「ちょいと待った。」
私は別の場所へ移動しようとしているアンズの手を引っ張って止める。
少し驚いた顔をしているがいつものほんわか顔に戻りこちらを注視している。
「ニミリも持ってくの?ごめんちょっと浮かれてはやりすぎちゃった。少し待ってるから選んでいいよ。」
「いや、アンズの選んだナイフちょいと貸してもらっていい?」
アンズは首をかしげている。
理解できてないという感じだけど確認したいことがあるのだ。
「はい、けれどニミリも自分のを選んだ方がいいのでは?」
それはそのとおりだ。
私も自分の分を予備を含めてもらう予定だ。
アンズから手渡してもらった三本のナイフを一本ずつ手に取る。
その時点で一本だけ明らかに軽い。
私は怪訝な顔をしながら軽いナイフのナイフケースを取る。
光沢自体は光っているのだがその刃先をちょんと指でつついてみる。
「ちょっとニミリ、ナイフなんだから危ないですよ!?」
あわてているアンズだがそんなに危なくないということがわかる。
刃の部分を触り、そしてつまむと私は大きくため息をつく。
「アンズ…これプラスチック製の子供用のおもちゃだよ多分。」
「へ?」
アンズは呆けているがこれは多分おままごとの包丁じゃないかな?
化け物を斬ったり、物を切断したりということはできないだろう。
このゲーム内においてはほぼ役立たずと言える。
「これは他のナイフも確認しておいた方がいいね。」
私は次のナイフをナイフケースから取り出す。
こちらは重さ的には金属製であるのだろう。
けれども刃部分の赤茶色に腐食している。
「ニミリこれって…。」
私が赤茶色の部分を触るとぼろぼろと粉が落ちていき、刃の部分も床に落ちる。
残ったのはグリップの部分だけである。
「うん、見たまんまかなり錆びちゃってるね。これも使い物にならないんじゃないかな?」
最後の一本も同様に確認しようとナイフケースから取り出す。
こちらも見たまま完全にアウトである。
「錆びてはいないけど折れてるね。」
「何でこんなに不良品がいっぱいあるのでしょうか?」
おもちゃについては不良品ではないかもしれないけど、他は不良品である。
チュートリアルで泥水入りのペットボトルを配る運営だから何かするかとは思ったけど、露骨に仕掛けてあった。
しかしプレイヤーはほとんど浮かれており気づかない人も多いだろう。
効果は抜群だと言わざるをえない。
「まあ私も選ぶからアンズも選びなおそう。」
「うん、そうしましょうか。」
応えるアンズの声には活気がない。
詐欺にあったようなものだし消沈してしまうのは仕方ないか。
まあいざという時におもちゃの包丁を抜いてしまうよりはましだと思うので頑張って新しいのを選んでほしい。
私達はしばらくナイフを抜いていろいろと見比べてみる。
…見比べてみるのだが明らかに金属でない、錆びている、刃の部分が異常であるという所は確認できるのだがじゃあどれがいいのかが選択できない。
困ったもうあきらめて適当に金属製のものという事で妥協すべきだろうか?
「HAHAHA、お困りのようですねお嬢さん。」
そんな私達に横から陽気な声がかけられるのであった。
…ん、デジャヴ?




