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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
24日目~ normalワールド探索(E.Uビル編)
268/291

75.E.U.

『動くな!ゆっくりと両手を上げろ!おかしな真似はするな!』


ドカドカとけたたましい足音を立てて入って来た兵隊達がこちらに銃口を向けながら叫ぶ。

こんなボスを倒した奥のエリアにプレイヤーが入って来るとは思えないし…NPCかな?


けれどこれもまあよく聞くお約束な台詞だよね?

私なんかは予想していたから素直に指示を聞くんだけど、どうやら他の人にはそうではなかったみたいで…。

銃声が鳴ると共に悲鳴が部屋のあちこちから上がる。


まあ撃たれた人は指示以外の事を勝手にしてるから撃たれたのはわかってるんだけどいきなり現れたNPCに殺されるとか傍から見たら理不尽すぎないかな?

早とちりして武器を捨てようとして銃に手をかけて頭を撃ち抜かれた人、慌てて逃げようとして背中を撃たれた人…まあご愁傷様としか言いようがない。

死に戻った人達は下でスミノフさん達のお手伝いを頑張って欲しい。


そしておとなしくしていた人達は兵隊に武器を丁寧に取り上げられていく。

残された人達は完全武装の兵隊に対してビクビクと怯えながらだったけど余計な事をしなかったのは大したものだと思う。

私達から目についた武器を全て回収を終えるとNPCの指揮官らしき人間が偉そうに口を開き始める。


『よし!残った奴は冷静に対処できているようだな…。人類滅亡の淵にある中、生き残った人間をわざわざ殺すのもこちらとしては不本意だったからな。こちらの指示に従ったことを感謝する』


こんな急なチェックで理不尽に殺されるのもゲームとしてどうなのかと突っ込みを入れたくもなるけど、余計な事で口を挟むと頭に穴が作られそうなのでおとなしく口を閉じておくことにする。

まだNPCの話は続くみたいだしね。


『そう不安がる事はない。こちらの任務が完了次第君達は解放される。ここのデータを回収し…データの破棄が完了するまで少し待っていただく事になる。何も心配はいらない。既に作戦は最終段階に入っておりもう数分で全て終わるだろうからな』


なるほど、どうやらこのNPCの兵隊さん達はこのビルにある情報が欲しいのと…情報の抹消が目的と。

出てくるタイミングがだいぶよかったけど私達がここに来た事によるトリガーなイベントなのかもしれない。

それならイベント消化を待てばいいかなと思っていたんだけど…


「…質問をよろしいでしょうか?」


このまま時が過ぎ去るのを待つべきと決め込み始めた時に何か収穫が欲しかったのかアンズが下手にでながら丁寧に尋ね始めた。

…確かにこの兵隊達が任務完了して立ち去るならここで死んだとしてもアイテムの回収は可能かもしれないし、むしろ情報を持ち帰った方が価値があると私も思う。

まあそんな事に付き合ってくれるはずも無いとは思うんだけど…。


『…いいだろう。我々が撤収するまでの間の短い時間しかないが…その間君達がおとなしく従っているならよしとしよう。さあ何が聞きたいのかね?』


予想外な事にどうやら気前よく情報をくれるみたいだ。

…軍人が作戦中にこんな悠長な事をしてたら厳罰でも済むはずは無いと思うんだけど…まあいいや、ここはアンズに任せるとしますか。

大丈夫、死ぬとしても戦力として換算できないアンズが死ぬだけだし、割といい駆け引きだね。


…まさか私まで巻き添えにするようなほうに話は持って行かない…はず…だよね?

そこはかとなく不安になるけどもうアンズに任せるしかない。


「ありがとうございます。貴方達はどこの所属でしょうか?」


お、これはいい質問かもしれない。

武装した兵隊という事以外不明だったからね。

しかも装備が西側の物が多いけど…いろいろな国の物が混ざってて統一性がないというのも不明さに拍車をかけている。

さて答えはどうなるか。


『なるほど確かに名乗らなかったな…。我々はE.U.所属極東方面所属空中軽機動連隊の者だ』


「E.U.?ヨーロッパの経済連合でしたら軍事力を持っていないはずですし…失礼ながら耳にしたことが無いのですけれどどのような組織でしょうか?」


アンズがそう返すと指揮官が何かに気付いたように困った顔をしながら口を開き始める。


『そうだな。宇宙人共のせいで世界がここまで滅茶苦茶にされたのだ。一般人が知らなくても無理はないむしろ当然かもしれんな…よし説明しようE.U.とはアース・ユニオンの略称だ。日本語で言うと地球連合と言った所か?宇宙人共のせいでずたずたにされた人類が団結するために作った世界唯一の抵抗組織である』


なるほど、既に末期的な世界になったから人類がようやく作った統一組織か政府という事かな?

そういえばこのビルも名前がE.U.ビルだったようだけど…聞いてみるかな。


「このビルの名前はE.U.ビルでしたけどこのビルは貴方達の所有物という事?」


『そうだ。本来なら君達は不法侵入に器物破損に強盗と多数の罪に問わなければならないのだが…残念ながら我々は君達を拘束して連行する余力は無いし…世界はこんな状況だからな、生きるために無茶をせざるを得なかったという事は理解できる…よって不問にして解放するからおとなしく待っていてもらいたい』


その割には二人ぐらい射殺された気がするんだけど…と言って機嫌を損ねてもよろしくない。

そう思っていると奥から兵隊が一人入ってきて指揮官に報告をする。


『完了しました!いつでも撤収可能です!』


『そうか!可及的速やかにヘリに乗り撤収するぞ!ここに来るまでに宇宙人のモンスター共のせいで半数が犠牲になった甲斐があったな』


どうやらこのNPC達の目的は終わったらしい。

そろそろ強制イベントも終わりなのかな?


『さて我々はこれで撤収する。君達は我々が去った後は自由にしてもらって構わない。そうだなこんな所まで侵入できる技量があるのなら機会があるならE.U.に志願しても構わないぞ?我々は人類の明日のための勇者を待っているからな』


本当に終わりらしい…これで終わりなら楽に終わってよかったと思っているんだけど…私は本当にこれで終わらせていいのかな?

これで終わらせてしまっちゃえと思う反面、ここで何もしなかったら私達の時間を浪費させられただけで得られるものは無い…だからここでもう一つの選択をしたら?


…面倒事になるのは間違いないしリスクも高いのは誰にでもわかる。


だけどねえ?

あんな適当な警告で二人も殺されて、しかもこんな上から目線で尊大な態度を取られて腹が立たないかと言えばどうかといえば…答えは当然ノーでしょ?


私は目線で隠れている人間に目を合わせて小さく合図をすると、相手からは少し眉をひそめてから本当にやるのかと目くばせで確認が帰ってくる。

私は軽く頷いて困った顔をしている相手に意を伝えるとこれから起こる事に備える。


『それではさ…』


最後にNPCの指揮官が何か言おうとした最中。

乾いた銃声が部屋の中でパンパンと鳴り響き新たなイベントが始まるのだった。

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