49.身内でミーティング
本格的にE.Uビルという場所を探索した翌日、一晩ぐっすりと眠り平穏な日常生活を満喫し活力を蓄え、今宵もいざいざがんばろう。
「うう眠いよー…」
「こっちもつらいです…」
そういう事にはならなかったね。
私もウメもリアルでは寝不足なのである。
その原因はと言うと…。
「ふわぁ―――皆様ごきげんよう…元気無さそうですわね?」
私のマイルームに入って来たこいつのせいである。
私の貴重な睡眠時間をこれでもかと削ってくれてからに。
「いきなり欠伸って…お嬢様としてはしたなくない?」
「それはニミリのせいでしょ?あんな真夜中に電話をかけて来るなんて」
「その電話の原因が貴方達二人でしょ?」
そう、さかのぼる事昨晩の深夜。
夜はぐっすりと眠る時間…のはずなのに。
「…気になって眠れない!?」
「こんな時間にクレイジーな事してるのは誰です!?」
そう、家の外で暴れてる集団がいるのだ。
どうやら喧嘩をしているみたいだけど巧妙な事にほとんど音は立てずに争う気配だけはビリビリと飛ばしてくるのだ。
「こら!友里!夜中に何を騒いでるの!」
そのせいで外の争いの気配に反応してしまった私だけが理不尽にも母に怒られるという始末。
片方には心当たりがあるのですぐに容疑者へと電話する。
「ふぁぁ…どうしたのニミリこんな夜更けに?私先ほどまで資料に目を通していて寝たばかりですのに」
「杏子の家の人達が私の家の近所で暴れてるので至急止めてもらえないかしら?」
私の横ではシャーリーもどこかへ電話をして怒りを乗せながら静かに話をしている。
そして電話してしばらくして…ようやく争っていた集団は離れていきようやく寝る事が出来たのは陽が上り始めた頃合いだった。
「今日は集団実習だったから昼寝もできなかったし…」
「私も家の手伝いで寝ていませんわ」
「グランパからの謝罪の電話が切れなくて私もです…」
…結果三人共寝不足であるようだ。
本当ならゲーム休んで寝るべきだけど…
「まあ今日の所はサカキさんに休むと伝えるか…そうでなくて力抜いて安全に進めれば…」
「そうはいきませんわよ!今日の目標は決めてきましたわ!」
「No、そういうのは相談して決めるものじゃないですか?」
「あの木を排除できるかもしれませんわよ?」
「そこの所詳しく」
アンズが昨日得た資料を基にウメへ説明…もとい懐柔していく。
ああ…これはまずい。
ウメが爛々と目を輝かせていってる。
このままだと民主主義の悪しき風習である多数の意思の反映に基づき真面目にゲームをする事になってしまう。
「なるほど、この資料の場所を探せば手掛かりがあると」
「イエス、これは試してみる価値はありますね」
はい、手遅れでした。
といっても止める手立てもなかったのでまあこうなってしまってうのは仕方ない。
とりあえずは…そうだ昨日の敵のデータでも確認しておこっかな?
コンソールで表示してと…
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【ターミナルアイ】
タイプ:寄生型生物
弱点:全て
出現位置:????
特攻アイテム:????
獲得可能交換ラインナップ
・?????:?ポイント
・変異生命体の皮膚(L0):2ポイント
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なるほど…何らかの新しい情報が手に入るかもしれないと思ったけど全く参考にならない。
けどこういう事ができるという事は初心者のウメには教えておいた方がいいね。
「ウメちょっとおいでー」
私が手招きするとウメがよってくる。
そして私が指さすとコンソールを眺めてくるので説明する。
「倒した敵を研究所に納めると翌日こういう風にデータがもらえるから」
「uu…?あまり参考にならないですね」
「名前が明らかになったくらいですわね…」
まあ実際名前が明らかになったぐらいだもんね。
先ほどのアンズの説明で寄生してる生物というのはわかってたし。
…おっと、集合時間が迫ってる。
どう転ぶにせよ遅刻はよろしくないので次へと促す事にする。
「さて後は準備だけど」
「そこは私が見立てておきました」
準備がよすぎる…既にウメの方で装備の見立てが終わっているみたいだね。
ウメは私のマイルームに来た時から既に米製のアサルトライフルにオート拳銃を装備済みである。
そして私に手渡された物はというと…大きめのショットガンにオート拳銃を手渡される。
「私はこれでいいの?」
「ニミリは銃の取り扱いあまり上手じゃなさそうでした。それなら狙いが付けなくてもある程度当たるショットガンか取り回しやすいハンドガンがいいと思います」
確かにウメの言ってることに間違ってない。
12ゲージのイタリア製のショットガンにチェコ製のオート拳銃を所持すると…ショットガンが予想以上に長くて重く持ち運びや取り回しが大変そうである。
「それで私には…」
「お前に持たせる銃はないです」
アンズに対してウメはきっぱりと銃器の受け渡しを拒否する。
それに対しアンズはやはり怒ってウメへと距離を詰めてくってかかる。
「なんでですの!?差別はよくないですわよ!」
「シャラップ!そういう事は敵より味方に弾を当てる人が言っても無駄です!」
…うん、ウメの言っている事はまるで間違ってない。
アンズに持たせるだけで不安になるよね…変なタイミングで撃たないか、変な場所へ撃たないか、銃の重さのせいで移動が遅くならないか…心配は尽きない。
けどウメは溜息をつくと音楽を聴くヘッドフォンのような物をアンズに手渡す。
「代わりにこちらをどうぞ」
「こちらは?」
「軍用のヘッドセットです。それを頭につけて音を拾って私達に伝えてください」
通信販売で買えるようなヘッドフォンのような見た目だけど…これで音楽を聴くという事では無さそうだろうし、それに音を拾うってどういう事かな?
「どういう効果があるのそれ?」
「周囲の音の集音…大きく音が聞こえるように拡大する機能と適切なノイズカット機能…それと紅茶の国の比較的新しいモデルなので集音対象の切り替え機能がついてますね。なのでこのICタグを頭につけておいてください」
ウメに手渡されたICタグを衣服に着けると青色にランプが点滅を始める。
さてこれがどうなるのかな?
「それを付けておくと…」
「この部分のスイッチをカチカチ押すとICタグを付けた対象から発する音は音を拾う拾わないのオンオフを切り替えられるようですわね」
「…飲み込みが早くて助かりますです」
つまり私達の出す音の聞く聞かないを切り替えられるという事らしい。
なるほど集音機能を持ったアイテムだけを持たせてアンズを索敵に専念させるのね…悪くないと思う。
そうなると残りの確認すべき点は…。
「後、防弾チョッキとかはいいの?」
「どうせ案山子のようなビッグアイは先手を取れば脅威はないと思います。それでも見られて攻撃されたら即死ですので身軽に動ける方がいいので着ていくだけ無駄だと思います」
「ええ、私もそう思いますわ」
…そういや重さのせいでアンズは自分で起き上がれなかったもんね。
確かに動きが阻害されるぐらいなら身軽な方がいいというのは納得である。
「オーケー!それでは行きましょう」
「気合が入っているのはいい事ですわ!がんばりましょう!」
「まあほどほどにね?」
『お、お出かけですか?お気をつけて』
あれーおかしいな女性しかいない私のマイルームに聞いたことがある男っぽい声が混じってるよ?
声を聴いて自分が以前に何をしたか思い出した。
そうそう確か閉じ込めておいたはずだけどそれって1日限りだったっけ?
何か調べた結果が出ているみたいだけどそれは後で見るとしまして…こいつは適当に放り込んでおきますか。
私は発声元である丸いモジャモジャの塊をつかむと部屋の隅へと無言で移動する。
『な…何をするんですか!?こんな扱い断固抗議を…』
とりあえず別室の扉を開くと掴んでいたペット兼宇宙人を部屋の中へと放り込み扉を閉じる。
…ヨシ。
私は満足するとフリーズしてるウメへと満面の笑みを浮かべ無かったことにする。
「さて、行きますか?」
「…What is it?」
「気にしなくていいよ」
本当に気にするだけ無駄な物だしね。
うっかりとあれをしまい忘れてしまったけど…うっかりには気を付けたいね。
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