5.オープン記念イベント -エントランス その1-
すいません予約投稿ってどんな感じなのか試すための投稿になります。
へまをしていたら申し訳ありません。
「さあ待たせたわね杏子!オープン記念イベントに行くわよ!」
「そこは問題ないけど杏子じゃなくてアンズと呼んでね。」
そうでした、気合いを入れすぎて本名を呼んでしまった。
こういううっかりはなくさないと後々取り返しがつかないことを招きかねない。
パーティーと違い準備をする必要はない。
特に参加のために必要な事は記載されていないからだ。
それでも若干何かが気になる。
…よし何か起こってもいいようにいっそのこと荷物は全て置いていくか。
私に布のナップサックをマイルームの上に放り投げて固定コンソールの前に移動する。
「あれ、荷物置いてくの?」
「使い道もなさそうだし…なんとなくここの運営はひねくれてそうな気がするから置いてくことにするよ。」
チュートリアルのピエロはいまだに忘れられない、本当にちびりかけたしね。
まあそんな昔の事は置いておいて、固定コンソールよりワールドアクセスを選択し…、オープン記念エリアはもうチャンネルが12までできていてそれ以外は入場制限がかかっている。
まあ番号が浅いからどうなんだということもあるし気にする必要もないと思う。
…ひょっとして先着特典とかあったらアンズごめんね。
「じゃあ選択したからアンズも承諾よろしく。」
「はい、任されました。」
アンズが承諾を押すとまた、電子的なエフェクト共に視界が切り替わる。
切り替わった先は豪華な赤じゅうたんが敷かれた、とても豪勢なエリアであった。
壁は高価そうな紋様で埋め尽くされ、天井にはシャンデリアが吊るされ、荘厳そうなクラッシックな音楽が流れ続けている。
そこらに置かれている花瓶なども高額そうに見える。
どこかの高級ホテルをモデルにして作ったマップかな?
正面にはガラス張りの回転扉があり、その両脇にフロントの係だろうか?
きっちりとホテルの制服を着こんだNPCが入場者にチラシを配り続けているのが目に入る。
「ニミリ、ぼーっとしてないで行きませんか?」
おっと、到底ゲーム内容とは異なる世界をいきなり見せられたせいで呆けてしまっていたようだ。
気を取り直してアンズと入場する。
『ようこそオープン記念イベント会場にお越しいただきありがとうございます。チラシを配布していますのでこちらを利用して会場を回ってください。』
NPCから手渡されたチラシ…雑多に絵が描いてあるだけで読めない。
と思ったらコンソール画面が開く。
-------------------------------------------------------
【オープン記念イベントのチラシ】
1日だけ開催のオープン記念イベントの案内
運営一同皆様の記憶に残るイベントを提供したくがんばります。
取得可能スキル1:オープン記念イベント会場マップ Lv5(本日23時59分に消滅します)
スキル1取得確率:100%
重量:不明
-------------------------------------------------------
「どうやらスキル取得して使うみたいね?ニミリ。」
「なるほど、コンソールから開く必要があるけど紛失する心配はないしゴミも増えないしこっちのがいいかもね。」
「ゴミって…ここVR空間だよ?」
そうでした。
所詮は電子データ、ゴミなんか関係ないよね。
私達はもらったチラシを使用する。
光ったということは多分スキルを習得できているはず。
『なお、お客様は残念ながら女性のため入場特典アイテムは配布されません。ご了承ください。』
おや、ここで露骨な男女差別ですかね?
こういった行為はあまりいいとは思えないな。
「なぜ男性だけ配布なのでしょうか?」
『はい、それにはあまり深くない事情がありまして…。』
NPCのお姉さんが顔に陰を落としながら話し始める。
…深くないなら別に落ち込みながら話す必要は無くないかな?
『初期衣装で女性はあんなにいろいろ選べるのに男性はTシャツと短パンだけというのは不公平だというクレームが届きまして、今回その帳尻合わせのために衣装アイテムの配布を行っているのです。』
なるほど、確かに女性の方は三十種は衣装を選べるのにそれは不公平だと取られても仕方ない。
…単に運営が変なところに力入れすぎて格差が出たとかは無いよね?
『そのため男性には「蝶ネクタイ」アイテムを配布させていただいております。』
蝶…ネクタイ…?
NPCの言葉を聞いて私もアンズもきょろきょろと周囲を見回す。
まあ視界に入るのはTシャツに蝶ネクタイを付けた男性がほとんどである。
「これってどっちかというと追加の罰ゲームじゃないの?」
「さあ、どうなんだろうねニミリ?」
アンズも珍しく苦笑い状態である。
私も多分表情がだいぶおかしく歪んだように崩れているに違いない。
「いいや、そうとも限りませんよお嬢様方?」
不意に後ろから声をかけられる。
振り向いた先にいるのはやはり、Tシャツに蝶ネクタイを付けた軽そうな男だった。