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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
2日目 オープン記念イベント
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4.統合研究所-後-

「もう、アンズしっかりしてってば!これからイベント行くためにも早く終わらせなきゃいけないんだから。」


「ご、ごめんなさい。」


アンズがシュンとうつむいている。

そう言えば杏子の好意で先にこちらの用事を済ませてもらっている感じだし、きつく言うのはお角違いだっただろうか?

それ以前に言ってしまえばこのゲームに巻き込まれているのは杏子のせいだしやはり杏子が悪いのではないか?


さて、入室した私の目の前にあるのはカプセルとお姉さんタイプのNPCかな?

矢印が頭上に出ているのでほぼ間違いないだろう。

研究者の服装というよりもナース服を着てこちらに愛想よく笑みを浮かべている。


『ニミリ様お待たせしました。記録によれば統合研究所に初めて来場いただいたのこと。当施設について説明させていただきます。』


やっぱりチュートリアル的な説明が入っちゃうか。

これがあるから後回しの方がよかったんだけどまあ仕方ない。

アンズにもついでに聞いてもらっておこう。


「ニミリ、講義と同じように寝て聞いてませんでしたはだめですよ?」


…なぜばれたし。


『当施設は変異生命体の分析・解体を行い、それをデータおよび実用的な物に加工し皆様へご提供することを主としています。例を挙げて説明しますので、そこのカプセルに持参いただいた変異生命体を入れてください。』


私はナップサックからビニール袋を取り出し一昔前のCTスキャンのようなカプセルにセットする。

死後硬直で硬くなってるとかなと思ったがそんなことは無かった。

セットするとそのまま機械の作動音が鳴り響き猫を回収していった。


『まずこちらへ持参いただく変異生命体についてですが生死問わず、また完全でなく部位単位での持ち込みも可能です。』


「という事は殺して持ってきた方が安全という事ですね。」


『殺すのが難しく生け捕りしか手段ができないタイプも確認されています。また生け捕りで持参いただいた場合特典が付くことが多いです。そちらのモニターに注目してください。』


脇のモニターが緑色にパッと光り、白い文字と白い絵が映し出される。

目から蛇が生えた猫の絵と40%という数字である。

これはビニール袋に入れる前に表示されたコンソールの保存状態かな?


-------------------------------------------------------


【未確認生物の死体】

未確認生物の死体


保存状態40%

重量未測定


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こう表示されていたのでほぼ間違いないであろう。


「ニミリ…猫殺したの?動物寵愛団体から訴えられるよ?」


「ゲームの中だし問題ないし…、そもそも目から蛇が生える人間を襲う猫だよ?」


『話を続けさせていただきます。』


おっと、話をさえぎってしまったようだ。

チュートリアル中も思ったけどNPCのアドリブ性能は高いようだ。


『持ち込まれる死体には保存状態というパラメータが設定されています。生死、部位、劣化、原型をとどめているか、細胞保全がされているか等によって算出されます。』


完全に生け捕りにして持ち込めば100%になるのだろうか?

いや、とんでもない猫とか蟹とかヤドカリとか生け捕りは無理でしょ?


『そして変異生命体は難易度によりポイントが定められています。このポイントと保存状態をかけた数値が貢献ポイントとして付与されます。』


何かややこしい話になってきた。

貢献ポイントになって何か嬉しいことがあるのだろうか?


『例えば今回のポイントは以下のように算出されニミリ様に付与されます。』


-------------------------------------------------------


【貢献ポイント付与】


・変異生命体(A) 3,000ポイント(生命体ポイント) × 0.4(保存状態)=1,200ポイント


-------------------------------------------------------


『このように貢献ポイントは累積付与されていきます。貢献ポイントについてはマイルームの固定コンソールから確認可能です。では、貢献ポイントとは何に使う物かについて説明させていただきます。』


少し間を置くとモニターの画面が切り替わり表示される。


-------------------------------------------------------


【今回の獲得ラインナップ】


・変異生命体の血清(L5) :300ポイント

・変異生命体の神経毒(L4) :400ポイント

・後期変異生命体の爬虫類革(L2) :200ポイント

・後期変異生命体の動物革(L3) :200ポイント

・後期変異生命体の動物爪(L1) :50ポイント


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『このように解体分析したものを貢献ポイントで購入することができます。 なお、ラインナップについては保存状態により獲得できるものが増減されますのでいい状態で持ち込むのをチャレンジいただくのもいいかもしれません。』


…購入したとしてもどう使えばいいかわからない。

神経毒ならかければ使えるのかな?

アンズのほうも首をかしげているだけだ。


『このまま現物を渡されてもお困りになるのはわかっています。こちらについては当施設二階のファクトリーエリアで加工注文をいただくことになります。ここではチュートリアルのため一番安い物を無償で一品注文可能とします。』


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【加工可能ラインナップ】


・変異生命体の血清(L5)〈2個〉 + ペットボトル〈1個〉     

→抗毒剤(L5) 〈1個〉

・変異生命体の神経毒(L4)〈1個〉  + 空薬莢(9ミリ)〈1個〉  

→神経毒(L4)9ミリ弾〈1個〉

・後期変異生命体の動物革(L3)〈3個〉 + 後期変異生命体の動物爪(L1)〈10個〉 + 布のナップサック〈1個〉  

→頑丈な変異動物革のリュックサック〈1個〉


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『今回はチュートリアル的な物のためランダムで三個に絞らせていただきました。このように手持ち及びマイルームの物品とあわせて加工ラインナップが提示されます。』


この場合だと一番ポイントを使わない弾になるのかな?

革がいっぱいあるから防具的な物が欲しい所だったけど。

そう思っていると、ナップサックから空薬莢が一つ飛び出し、カプセルの中へ飛び込んでいった。

そしてガシャンゴトンとうるさい機械音が鳴り響き、チーンという音と共に床から箱が飛び出てきた。


中を開けると水色に塗られた弾が一発だけ入っていた。

どういう原理だろうか?

いやゲームなので原理とかどうでもいいのか。


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【神経毒(L4)9ミリ弾】

後期変異生命体から採取した神経毒を弾頭に詰めた拳銃弾

徐々に対象の筋肉を弛緩させ動きを鈍らせる神経毒


重量:約9グラム


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「なるほど、ちなみにこのラインナップについているLというのは何でしょうか?」


『変異生命体によるレベルと考えていただければ問題ありません。数字が上がるごとに強力なものになっています。』


「箱が取り外せないのですが?」


『当施設の物なので持ち帰られると困ります。』


うーん、いつもならもっとふざけたり追及するところだけど…、オープン記念イベントの方に急いだほうがよさそうだ。


「ありがとうございました。少し急ぐのでこれで失礼します。」


『困ったことがあれば当施設のヘルプ用の機械も受付の側にありますのでご利用ください。また当施設はどこの位置からでもエスケープ可能です。』


なるほど、いいことを聞いた。

このままエスケープしてイベントに向かっちゃおう。


「ごめんねアンズ待たしちゃって。イベントの方行こうか?」


「ええ、せかしちゃったみたいだけど大丈夫?」


「大丈夫でしょ?どうせまた忘れるしわからなくなるからヘルプの機械に頼るよ。」


アンズのやはり覚える気が無かったんじゃ?という苦笑いの顔から視線をそらして私達はその場でマイルームへと戻った。




そして私達は部屋から直接戻ってしまったためエントランスから上がる悲鳴を聞く機会は無かった。


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