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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
18日目 海外から来た少女
171/291

1.前夜

お待たせして申し訳ありません。


本章は群像劇視点でお送りします。

読みにくいかもしれませんがご了承ください

指摘や意見いただければなお幸いです。


なお、ゲーム本編の話が読みたい方はお手数おかけしますが次章をお待ちください。



二味家宅 居間 XDAY前日 19:30 二味友里



「いよいよ明日ホームステイの子が来るのね、楽しみだわ」


母はお客を招くのが好きなせいか…もうワクワクが始まってしまっているようである。


…いや、一週間前からこんな感じだったっけ?


しかし私がそれを口に出すことは無い。

進んで自分の墓の穴を掘る趣味は無いからね。


「部屋の準備はよし、友里に出迎えを任せるから…私は家でクラッカーを用意しておけば問題ないわね」


わざわざ海の向こうからきてこのテンションに付き合わされる子には同情を禁じ得ない。

初日に歓迎の意を示すためにご馳走やデザートを用意するのはわかる…、だがこんな派手な飾りつけしてみたり、うちの家のプロフィールを書いた本を用意したり、向こうの家族と会話するためのホットラインとか…そういったものは本当に必要だったのだろうか?

どう考えても相手がドン引きするとしか思えないけど…あちらの国では普通なのかな?


「友里もきちんとお迎えしなさいよ?」


「流石に大丈夫でしょ?帰りはタクシーを使っていいんだからなおさらね」


海を渡ってきた相手に手荷物を持たせたまま電車を使わせるのは負担だろうとタクシーの使用許可まで下りる始末である。

…まあ楽はできていいけどね。


「後は早く寝たほうがいいかもしれないわね?時間になったらお尻をたたいて起こすからね?」


…なんでお尻?

普通に起こしてと突っ込みたいけどこのハイテンションの母に付き合う気はない。

父も苦笑いして関わらないようにしているし…これは私も早く部屋に逃げてしまうか。


「それなら今日は早く寝ておいたほうがいいよね?私は先に寝ちゃうね」


そう言うと私は居間からそそくさと逃走するのだった。

…当然さっきのは嘘で今から夜更かしして遊ぶ気満々なんだけどね?

さあたまりにたまったデイリーミッションを消化しちゃおう!









湯島家宅 広間 XDAY前日 20:14 湯島家使用人 真嶋



天井には豪華なシャンデリアに厳かな紋様で彩られており、壁は純白であり汚れすら見えない。

さらに床には超高級な真っ赤なカーペットが敷き詰められている。


この(きら)びやかかつ荘厳で明るく彩られた湯島家自慢の広間であるが…支配しているのはあまりにも…あまりにも重い空気である。


目の前の椅子にはこの家の一人娘…湯島杏子様がお座りになられて、そのすぐ後ろには執事長の羽山様が控えていると思われる。

そして呼び出された私の位置は杏子お嬢様の真ん前である。

周囲の気配から察するに多数の使用人が私達を取り囲んでいると思われる。


何故いると思われるかと言うと…私は…いや私達六人は床に頭をこすりつけて土下座の状態で直接見ることができない状態だからだ。

目を合わせてもいないのに杏子様の冷ややかな蔑むような視線で私達は支配されているのだ。


「さて、ここの六名がこのような事になった理由は当然、当事者の皆様はおわかりですわよね?」


感情のまるで籠っていない丁寧なだけの言葉が私達に投げかけられる。

私達はそれを微動だにせずに拝聴する。


「あなた達には業務の一環として二味家の状況調整と報告を頼んでいたはずです。湯島の権限や政治的なコネも含めて使用を許可しましたし、力づくでもどのようにでもできる…簡単な部類の仕事と考えていましたわ」


確かにここにいる六人はその仕事を承っている。

湯島家の仕事としては比較的楽な部類の仕事であり、何か問題があれば省庁問わずに湯島の名前を出せばすぐに情報を開示してくれるし、要望を伝えると忖度(そんたく)をしてくれるし電話一本で終わる事だ。

しかも二味家の情報自体が管理ルームで閲覧できるのでそれを見れば漏れも無く業務はつつがなく進行していく…はずだったのである。


「私、昨日ニミリからホームステイを受け入れると直接聞きましたのよ?しかも明日には受け入れると…。あまりにも唐突過ぎてびっくりして心臓が止まりそうでしたわ。まさか貴方達からでは無くてニミリから直接連絡があったのよ?本来なら事前に貴方達から報告があるべきであり、それ以前にこういう事になる前に手を打つべきよね?私、(はらわた)が煮えくり返って今すぐにでも貴方達に怒鳴り散らしたい所ですけれど…とりあえず爺や、状況の説明をお願い」


気持ちを強引に抑え込むように杏子お嬢様が話を強引に切ると羽山様の淡々とした…いや怒りが言葉に少し乗った言葉が広間に響く。

冷静な羽山様にしては珍しい…いや今回はよほどの事なのだ。

そしてそれを私が犯してしまった事であり寒気と身震いが止まらない。


「はい、まずは毎年恒例のホームステイの期間内でのマッチングはいつも通りの圧力と調整で無事に何事もなく終わっていました。ところがそこで気を抜いてしまったせいか条件変更後の特別枠にマッチングしたのをここの六名が見落としてしまいました。そして期間外のマッチングを見落としたまま現在に至ったという事でしょうな…。儂の監督不行届きですな。お嬢様大変申し訳ありません」


「謝罪は結構です。他に情報があるなら続けなさい」


「はい、まずはあちらの情報ですが…こちらの国とは権限が異なるため詳しくは調べ上げることはできませんでした。別途、総務省筋で少し外交圧力をかけたのですが…そちらでも入手は叶いませんでした。わかるのは情報の硬さから一般家庭レベルでは無いのではないかという事とお嬢様が持ち帰った明日に来日するという情報だけです」


羽山様の言葉に杏子お嬢様は深く失望の溜息を吐き続ける。

そして間を開けると私達に声をかけてくださる。


「さて今回の失敗はあまりにもひどすぎますけれど…人間だれしも失敗はするものです。ではこれからどうすべきか?どう挽回するのか述べてみなさい」


私達に投げかけられた最後通告を噛みしめるために沈黙が広間を支配する。


…考えないと俺は終わりだ!?

なんとかしないとまずい!


よし。まずここで問題になっているのはホームステイが決まった事だ、そして相手の情報が不明な事と…

そう私が考えていると同じように端で土下座していた男が言葉を述べ始める。


「何もお友達の家にホームステイの方がいらっしゃるだけではないですか?そこまで重要視される事も無いですしこのまま放っておいていいのでは無いでしょうか?」


その言葉に対しての回答は至極当然の物だった。

明らかに失望した口調で杏子お嬢様が羽山様に話しかける。


「爺や、教育不足も追加のようね?」


「そのようですな。自分の不徳の致すところです…おい、連れていけ」


失言を発した男は悲鳴を上げながら広間から連れ出されていった。

行先は地下かそれとも…

いかんいかん!

俺は後は追いたくない!

さっきの続きを考えるんだ!

けど時間はかけられない…沈黙はその時間の分だけ減点対象になる。

なら考えながら発言していくしかない。


俺は覚悟を決めた。


「失礼ながら発言をしてもよろしいでしょうか?」


「…許可します」


「ありがとうございます。今回の件私達のミスで引き返せませんし挽回もできません。となれば打てる手を打ちたく思います。まずはお嬢様の友人である二味様のお宅にホームステイをする人物の情報がわからないことが第一の問題であり、その入手が最重要と思われます。しかもこれは引き続き二味様には気づかれないように実施すべきと考える所存です」


「確かに、次善の次善の策ですけれどそれでもやらなければなりませんわよね?」


「はい、それを…」


…ちょっと待て私達だけでできるのか?

ここでミスをしたら後が無いんだぞ?

湯島の家ではコストは些細(ささい)な問題で結果が全てだ。

ならばイチかバチかだがこう言うしかない。


「それを私達で掴んで見せます。しかし人手をお借りしたく可能な限りの人をまわしていただけると助かります」


「…わかりました。二度目の失敗はありませんわよ?」


「よろしいのですか?」


「逆に私にお任せとか言って自分達だけでやろうとするよりも失敗しないように申告できる分期待はできますわ」


羽山様が杏子お嬢様に確認を取ったが、淡々と決定事項を返していく。

そして私の意見具申は受け入れていただけたようだ。

場の空気が若干軽くなると共にそのまま杏子お嬢様から私達に言葉が与えられる。


「二度も大きい失敗は許しませんからね?明日の働きに期待しますわ」


「かしこまりました!」


…危なかった!

紙一重首がつながった…明日汚名返上をしないと終わりなのは変わらないが…ここは過剰にでも人員を投じて確実に達成せねばならない。


「…先ほど連れていかれた彼はどうなるのでしょうか?彼も一度しかミスを犯していませんが?」


…同僚の水嶋さんが墓穴を掘り始めた!?

何でこんな事になっているのかもうちょっと深く考えてくれよ!

ほら、杏子お嬢様と羽山様から来るプレッシャーがまたすごい事になってるじゃないか!


「…貴方は何を考えて仕事をしていたのですかな?まさかお嬢様の友人だから、お気に入りだからなだけとか考えていたのですか?」


羽山様から蔑むような問いが水嶋さんに投げかけられる。

そりゃさっき失敗した彼と同じ事をやっているのだから当然の帰結だろ!?

水嶋さんは羽山様のプレッシャー…いやもはやあれは殺気だ…にやられきってしまい回答が全くできていない。

あぁ!もう!?

こうなりゃやけだ!


僭越(せんえつ)ながら私が回答させていただきます。二味様は杏子お嬢様の友人であり付き合いが深い…故にそこを外部の人間につかれる危険性があります。仮に今回のホームステイの相手が湯島家とのコネを得るために送り込まれた手駒であるならまだしも湯島家に仇成すもの、他国の産業スパイ、工作員…最悪テロリストのケースも考えられます。これは杏子お嬢様の身辺を守るために必須の事であり、さらには湯島家を守るためにも必要な事であると考えています」


静けさが広間を支配する。

どれだけの時間か…恐らく数分の事だと思うが物凄く長い時間プレッシャーにさらされている気がする。


やがて羽山様軽いため息が吐かれるとこちらへ言葉を投げかける。


「…理解しているなら結構です。明日は手抜かりなきよう」


そう言うと杏子お嬢様と羽山様は広間から退出されて行った。

…その数分後、周囲を囲んでいた使用人達も退出して行くと俺達の精神は限界を迎えており床に崩れ落ちた。

さらに数十分後…何とか持ち直すと俺達は言葉を交わし始める。


「馬鹿なのか?あいつは仕事の重要性を理解してないという二度目の重大な失言をしたせいでアウトだったんだぞ!真嶋があそこで口を出していなければお前も後を追っていたんだぞ!」


「すみません!すみません!」


あのプレッシャーから解放されたせいか皆気持ちが昂りすぎているな。

失言をした彼女を攻め立てているが…まあ俺の言いたい事を代わりに言ってくれているからよしとしよう。

それよりもさっきの責任の押し付け合いのような些事はどうでもいい。


「それ以上攻め立てるな。あそこで口を出したのはこれからの事でこれ以上人が減るとまずいからだ。…水嶋さんも理解しただろうからその分しっかりと働いてくれ。それよりも重要なのは明日の事だ。ここで失敗したら全員奴の後を追う事になるぞ?」


俺が言うと全員が深刻そうな顔をして顔を付き合わせてくる。

そうだ、俺達に残された猶予は少ないのだ。

建設的に動かないといけない。


「まずホームステイの子の性別すらわかっていない。更にどのような経路で来るかもわかっていない。…水嶋さん、至急首都圏の空港へ人員を潜り込ませるよう手続きを始めてくれ。国交省の役人にも話を通しておけよ…そして各空港に今から監視のための人員を配置しなければいけない…鹿山、悪いけど羽山様に空いている人員は全て回してもらうようお願いに行くから付いてきてくれ」


「おい…そこまで投入するのか?」


「投入する!失敗イコール俺達の終わりだぞ?さらにどこから来るかわからない不明の人を探さなければならない…空港で二味様を見つけてからになるが…そうだよな、田中は悪いけど今から二味様の写真をありったけ印刷してきてくれ。動員した人員に二味様と面識があるわけじゃない。カラーで複数種類を頼む」


「待てよ、何でそんなまどろっこしい事をするんだ?二味…だっけ?お嬢様のお友達って事は住所はわかってるんだろ?だったらそこから朝一で自宅から尾行すれば…」


「尾行ができればそれもいいだろうな?けどできるのはこの屋敷で羽山様とその直属ぐらいだぞ?」


「なんでだ?」


田中の言う事も至極もっともなんだが…こいつは知らないだろうから教えておかなければいけない。


「二味様はな…年齢一桁の時から羽山様のあの訓練を受けているのだ。当の本人は何かの遊びと思ってたらしくてそのしごきに奇跡的に耐えてこなしてしまったのだ。お陰で羽山様は後継者ができたと大喜びだったよ。お嬢様との関係も良かったしな。…まあ問題は二味様が成長と共にそのしごきを異常とわかってしまった事だな。それ以降は羽山様とは距離を置いているのだが…それでも蓄積された経験値は俺達を遥かにしのぐぞ?そしてばれて湯島家に苦情を入れられてみろ…後を考えるとゾッとしないな」


俺の言葉に全員が黙り込んでしまう。

まあ、成長してからは一般人のように来客してたからな…知らなくても無理はないだろう。


「わかったらすぐに行動するぞ!時間はもう残されていないからな!?失敗は奴と同じ末路を辿る事になる…それが嫌なら全身全霊を尽くせ!」


崖っぷちに立たされた俺達の戦いはこうして幕を開けたのだった。

現在期末処理で仕事が忙しく更新が思うようにできないと思われます。

もう一本長期休暇の間だけと書き始めてそれをさらに延長した上でのこの状況、誠に申し訳ありません。

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[気になる点] やうちの家のプロフィールを書いた本を用意したり やがいらないと思います [一言] この家に仕える理由なんだろう ゾルディック家並みにわからん
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