54.お散歩イベント AfterDay その1
あの今にも忘れたい悪夢のようなイベントも終わった翌日…諸々の確認も兼ねて私はゲームへログインする。
昨日はあんなにも耐えて頑張ったのに待っていたのは母からの一時間にわたる説教であった。
おまけに明日のホームステイの子のお迎えは私の仕事として振られる始末である。
どうしてこんな事に…。
世の中理不尽極まりない。
まあ心の中でいつまでも愚痴っていても仕方ない。
気持ちを切り替えようとため息を吐き出すと共にマイルームへ毎度のアナウンスが流れる。
『二件のメッセージが届いています。重要なメッセージも含まれているためご確認お願いします。』
私の期待した物かな?
せっかくアナウンスしてもらった事だし確認しておくとする。
まず確認したかったのはイベントの結果である。
あんなに頑張ったのにこれで上位に食い込めていなかったら私はへこみ切ってしまう。
マイルームに設置された固定コンソールを操作すると、新着のメッセージが一件届いている。
期待した通りイベントの結果に関するものであった。
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【重要】イベント『立夏のお散歩キャンペーン』終了のお知らせ
日頃よりアンノウンディザスターオンラインをプレイいただきありがとうございます。
本日AM三時のメンテナンスを持ちまして本イベントが終了しました。
以降はゲームプレイによるイベントポイントの取得はできません。
ご了承ください。
本イベントのニミリ様の成績は下記の通りとなります。
総合順位:2位
総合獲得イベントポイント:363,766,921ポイント
なお、こちらの不手際でイベント報酬は現在準備中となっております。
お待たせしてしまう事大変申し訳ありません。
明後日のメンテナンス後にイベント報酬の発表および配布の開始を予定しています。
こちらは別途ご案内させていただくため今しばらくお待ちください。
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私が二位という事は…アンズは一位だよね?
最終日に巨大ザリガニへC-4特攻をするために乗り捨てたバイクを拾いに行った上にバイクで走って体当たりしに行ったのだからほぼ間違いないと思うけど。
まあ苦労が報われたようで何よりである。
もう一件のメッセージはいつもの【総合研究所にお持ち込みいただいた敵データの解析資料送付】という化け物のデータである。
まあこっちは今すぐ確認すべきものじゃない。
参考程度にざっと見しておこう。
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【シーハスパイロット】
タイプ:水棲型異星人
弱点:電
出現位置:「hard」「veryhard」ワールド
特攻アイテム:????
獲得可能交換ラインナップ
・?????:?ポイント
・?????:?ポイント
・?????:?ポイント
・シーハスパイロットの脳: 4000ポイント
・シーハス星人の目: 800ポイント
・シーハス星人の触手: 1200ポイント
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【ユラヒ・偵察型】
タイプ:水陸両用兵器
弱点:衝撃
出現位置:「veryhard」ワールド
特攻アイテム:ヘリウムガス
獲得可能交換ラインナップ
・?????:?ポイント
・?????:?ポイント
・『ユラヒ』腹部パーツ: 50000ポイント
・『ユラヒ』脚部パーツ: 30000ポイント
・『ユラヒ』溶解泡発生装置: 20000ポイント
・『ユラヒ』偵察モノアイ: 10000ポイント
・『ユラヒ』のハサミ: 5000ポイント
・『ユラヒ』水中装甲: 2000ポイント
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まあこちらはデータとして残るのだから後から確認で問題ないよね。
私はやる事を終えて固定コンソールの画面を閉じる。
『あのーやる事が終わりましたらそろそろここから出してもらえませんかね?』
マイルームの片隅から平坦かつ少しだけ申し訳なさそうな声が私の耳へ届いて来る。
そうそうこれも確認しなきゃいけない事だ。
私は声の先に視線をやると…狐のマークが入った宅配便の段ボール箱がぽつりと置かれている。
…サポートユニットって郵送されてくるのね?
あ、段ボール箱に紙が付いてる。
一応読んでおくかな。
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サポートユニット「ケレナ・プラトーン」を送付します。
サポートユニットは基本的に指示された事に対して絶対服従で命令を違反する事はありません。
また、サポートユニットは死亡・破壊されるとそのままロストして戻りません。
取り扱いにはご注意ください。
また、段ボール開封後に生命維持の必要が発生しますのでこちらもご注意ください。
返品は一切受け付けませんが貢献ポイントへの処分は総合研究所でいつでもお受けいたします。
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なるほど、とりあえずガムテープを破って段ボール箱を開ける。
すると昨日見た植物ボールがそこにいた。
『今日からお世話になります。改めまして何とお呼びすればいいでしょうか?』
「適当でいいよ?どうせ大して変わらないし…」
『では御婆様で…』
植物ボールが言い終わる前に思いっきり段ボール箱ごと蹴飛ばす。
段ボール箱はマイルームの透明な壁に当たって跳ね返り地面に転がる。
そして転げた段ボール箱の中から植物ボールがよろよろと転がり出てくる。
『何でもいいって言いませんでしたか!?』
「いきなりふざけた事を言うからでしょ?」
全く…敬意がまるで感じられない。
これで試して役に立たなかったらすぐにでもポイントへ変えてしまおう。
けれど試すためにはひとまずこれを維持しなければいけない。
維持をするのに必要なのは確か水が三リットルだったはず。
ではマイルームに該当するオプションを設置するとしよう。
マイルームの固定コンソールを再び開くと追加機能としてオブジェクトを設置する。
「水道(汚染)」オブジェクトを選択して200ウドを支払うとマイルームのどこかを選択するよう指示が出る。
私は適当に部屋の隅を指定する。
すると赤錆びた蛇口が壁際に設置される。
早速そこへ近づき蛇口をひねると赤黒い水が出てくるのを確認する。
「じゃあ毎日これで五リットルは水が出るからこれで水分補充は勝手にやっておいてね」
『本当に汚水ですか…まあ命があるだけましかな。了解ですご主人様』
そう言うと植物ボールはぴょんぴょんと飛び跳ねて蛇口の真下に移動する。
ああ、そこが固定位置になるのかな?
とりあえずはこれに関しては大丈夫でしょ。
そして今日一番のメインディッシュがどうやら向こうから来たようだ。
マイルームの扉から一人電子的に転送されてくるのが確認できる。
「お待たせしましたニミリ。いよいよあの冴えない男を蹴落とす事ができますわ。嗚呼!お楽しみの時間、間違いなしですね!」
極上の笑みを浮かべたアンズがそこに立っているね。
これからいくらクズでも人を蹴落とすんだからもう少しは良心の呵責を…いや、敢えて口に出しては言うまい。