29.イベント最終日 FinalDayStart
長かったイベントも今日が最終日。
皆楽しい思い出は残せたかな?
泣いても笑っても今日が最期だからいい思い出残そうね!
…いけない大分頭がやられているようだね。
さて、テンションはおかしかった気がするけど今日がイベント最終日なのは間違いない。
私達の現在のイベントのポイントはなんと二千ちょっとという多そうに見えて実は最底辺の成績である。
流石に初日から全て失敗しているので最終日は始める前にマイルームで作戦会議としゃれこんでいる。
…泣いても笑っても最後の二時間だからね。
「さて、本日で最終日なのですが…」
「わかっていますニミリ。今がとても厳しい状況なのはわかっています」
「ぶっちぎりで勝ちますとかかっこいいこと言ってこの現状ですよ?」
「こ、こんなはずでは…」
アンズがマイルームの透明な床に突っ伏してうなだれているけど本当にまいっているのだろうか?
どうも真面目さが足りないような気がするんだよね。
…まあこれゲームなんだから真面目になりすぎてどうなんだっていう気もするけど。
「最善は尽くしているのですわ!運が悪くて結果が出てないだけですわ!」
「へぇ…そんな戯言を言ってるのはこの口かな?」
駄目だ、私の方が我慢がきかなかったようでつい手が伸びてしまっていた。
私はアンズの両方のほっぺをつまむとフニフニと引っ張りまわす。
「あにおふるのあいあー!?」
「自分の胸に手を当てて考えなさいよ!?少なくとも二日目に馬鹿やらかさなかったらアンズは断トツのトップで今頃ここまで困ってないからね!?」
全く、言い出しっぺがこれでどうするのか。
私はアンズのほっぺから手を離すと軽くため息をつく。
「昨日は昨日でアンズに射殺されそうになったしね」
「今はこのゲームはPKができない設定なのですから結果的に大丈夫だったではありませんか?」
そうだね、私がその設定思い出して言った後にアンズがそうそう忘れていましたとか言い出さなければ私も怒ってないよ?
私諸共撃つつもりだったかは本人じゃないからわからないけど…勘弁してほしい。
「まあここまで来たら今日も同じ方針で一発逆転狙うしか無くなったのだけど…アンズ今日はふざけないでよ?」
「失礼ですわね。私は常に真剣ですわ」
真面目にやってあれだったのかな?
アンズへの対応の誠実さはさらに下げておく必要がありそうだ。
「それに私には最後の手段が残っていますわ。これはできれば使いたくない手段でしたけれどここまで追い込まれたら止む無しですわ」
…なぜだろう。
そこはかとなく不安しか覚えないのだけど?
聞きたくは無いけど念のために聞いておいた方が後で知るより胃に優しいきがする。
私は遠慮がちに聞いてみることにした。
「具体的には?」
「ゲームの運営会社を買収すればいいのですわ!大丈夫です、既に爺には株の60パーセント以上の買占めの下準備を手配済みでいつでもいけますわ」
「何考えてるの!?」
私はアンズの後頭部をおもいっきりはたくと盛大にため息をつく。
このままコントを続けても無駄な気がしてきたしラストチャレンジ始めちゃって楽になろう。
「じゃあ今日の一回がラストチャンスだからね?」
「そうですわね。できれば敵が少なかったり移動手段があったり…当たりを引きたい所ですわ」
「そこはもう運だからね。神様はあてにならなさそうだし何に頼めばいいのかな?」
「私に頼めば最終手段で確実に勝てますわよ?」
「…それだけは絶対に止めてね?」
アンズのせいでとりあえず肩の力はこれ以上無い感じで抜けてしまったと思う。
まあ気楽に行きましょうかね?
どうせ失う物なんて最初からなかった事だし。
私はさっさとコンソール画面を操作すると何度目になるかわからないveryhardワールドへのアクセスボタンをクリックした。
さてイベント最終日の本日はどこへ転送されてきたのだろうか?
視界がクリアになると同時に迅速に周囲の様子を確認していく。
アンズは近くにいるのを確認したので周囲の様子だけど…。
寿司屋に焼肉屋にイタリア料理や中華料理や沖縄料理の各種飲食店が通路を挟んで点在している。
うーん商店街?または飲食店街かな?
しかし上を見上げるとコンクリート製の天井があるのだ。
という事は商店街ではなく…地下の飲食店街だろうか?
とりあえず食べ物や飲み物には困らなさそうだけど私達が欲しいのはそれじゃないのだ。
すなわち早く場所を移した方がいいよね?
「アンズ、早く移動しちゃうよ?早く地下から抜け出さないと逃げ場が無くなるよ」
「…?ここは地下なのかしら?」
アンズの返答が容量を得ていないけど…地下じゃない?
私の認識間違いかな?
「ほら、あそこの奥にエスカレータがあるのが見えますわよね?その奥から赤い光が差し込んでいるとなると…ここはどこかのビルの上のほうではないかしら?」
成程、確かに他の飲食店の一部も赤く照らされているのが確認できる。
それが外から光を取り込んだ結果だとするならば…ここは地下では無くて地上部分の建物内という事になる。
「あそこのエスカレータかどこかにある階段か…とにかく一階を目指して外へ移動するべきではないかと思いますわ」
…おお、流石に尻に火が付いたのかアンズが珍しく真面目な発言をしている気がする。
これは私も真面目にやらないといけないかな?
とりあえず手短に使えるものは無いか辺りをさっと見回す。
あれ?
寿司屋の前のベンチに何か無造作に置かれているものがあるね。
何だろ?




