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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
10日目~17日目 立夏のお散歩イベント
122/291

10.ブラックマーケットワールド その8 契約書

予想していたよりもスムーズ?に話が進むと提案書を取りに行っていた女性職員が階段から戻って来た。

アンズは板崎が手に取る前に優雅にひったくって内容を確認し始める。


板崎は苦情を言い続けていたがアンズはどこ吹く風で提案書の中身を確認し続けている。

ちなみにここの責任者の女の子はというと…突然のバイオレンスの嵐にフリーズしてしまっている。


小さいのに可哀そうに。

それもこれも板崎とアンズが悪い。

女の子の横ではその諸悪の根源達がまだ争っている。


「随分と自分の都合だけで書かれた妄想でしかない提案書ですわね?よくもまあこんなゴミをだまして認可させたものですわね?」


『部外者が何を言うか!どのみち責任者はそこに署名しているこのガキだ!提案書に書いてある通りこの一週間後までの間に成果が無ければこいつは責任を取って免職(めんしょく)だ!』


「それで貴方がその後釜(あとがま)に座る?獅子身中の虫…にも劣る蛆虫(うじむし)の考えそうなことですわね?反吐が出ますわ」


『何とでも言え!この調子だとこの組織は最下位は確実だ!』


「そして少し条件をよくして前よりもましだと認識を植え付けて自分は楽々と支持を集める…何故か蛆虫に例えるのも蛆虫に失礼な気がしてきましたわ」


板崎はアンズに(あお)られてよりヒートアップし、アンズはその板崎をひたすらにいじりまわしている。

その横で最初はクールにすましていた女の子は既に涙目で…ああ、もう大泣き寸前でこらえている状態だね。

若干(じゃっかん)庇護欲(ひごよく)がそそられてしまう。


「けれどこの提案書には責任は明記されていますが誰の功績になるかは一切記載されていませんわよね?」


『う…?それは口頭で同意済みだ!』


「と言ってますけどそんな口約束しましたの?」


アンズは泣きそうな女の子に優しく声をかける。

それに対し女の子は力強くブンブンと首を横に振って否定している。


「…本人はまるで知らないようですわね?という事は成功した場合は承認したこの子の功績となるのですわね?」


『ふん!まあいい確かにその通りだしな。それにこの状況で巻き返せるわけも無いしな?』


「成程…ではお嬢さん。巻き返せるというのは組織の順位と思われますけどそれはどのようにして決まるのかしら?」


急に話を振られた女の子はしどろもどろになりながらも必死に回答する。


『はい!?えっとですね。一週間を周期として…ですね?期間内の組織へ納められた貢献ポイントと…その期間内のイベントのポイントの合算で計算されます!』


「成程、仮にですけど成績によっては色々と変化が訪れるとは思うのですけど…この提案が失敗した場合…提案書によると一位で無かった場合はこのお嬢さんが責任を取って免職という事で板崎さんはいいのですわよね?」


『当然だ、責任を取るのがトップの役目だからな。そもそも…』


「はい、戯言は結構です。さて次は貴方ですけど…仮に一位だった場合は何を望みますか?」


アンズの問いかけにきょとんとして女の子は呆けてしまっている。

けど時間がたつと板崎を睨んでこう宣言する。


『…こいつの懲戒免職です』


「わかりました。随分わかりやすいですね。結果が出たら履行してもらいましょうか?あ、そこの職員さん契約書を持ってきてください。お互いに署名していただきますわ」


これを遠くから傍観していた男性職員は短い悲鳴を上げると直ちにと返事をし、奥に消える。

幾分か経過すると先ほどの内容が記された契約書が二人の前に提示される。


「さあ、お互いに署名しましょうか?これで後腐(あとくさ)れは無くすっきりと決着はつきますわよ?」


契約書を前にすると板崎は苦虫を()み潰したような顔になり、署名を拒否しようとする。

自分を陥れられる物的証拠を残したくは無いのだろう。


『こんな物残す必要は無いじゃないのか?そうだ提案書があるのだからそれに沿って解釈すればいいだけの話だ』


「それで自分の都合のいい解釈しかしないからこれが必要になったのではなくて?」


まだ続けるか!?

といった感じで板崎とアンズの口論は続いていく。


その横で女の子の方は固まっている状態から意を決したように動き出す。

ささっと自分の名前を力強く署名してしまう。


「いいのそれで?貴方も逃げ道は無くなるんだけど?」


私の問いに女の子は意を決したようにはきはきと返事をしてくる。


『ええ、どうせ私が不利だったのは変わりません。ならばこいつを叩き出す機会を得たと思って覚悟を決めました』


…立派だなー私には到底真似できないや。

そしてアンズの方を見ると…よくできましたと言いたげな満足そうな顔をしている。

アンズはそれを餌にしてさらに板崎を追い詰めていく。


「あら、不利な状況でこんな小さい子が署名しているのに貴方は署名できないのかしら?もうあなたが全てにおいて悪いという事で終わりにしていいのではなくて?」


『な…貴様!?』


「否定がしたいのでしたら署名をしてしっかり白黒つけてくださるかしら?」


アンズの言葉に板崎は渋々契約書に署名をしていく。

書き終わるとアンズは満足気に二通の契約書を取り上げる。

それぞれ署名がされている事を確認するとお互いに手渡していく。


「ではこれでよろしいですわね?」


お互いに契約書を抱え込むと二人はにらみ合ってそっぽを向いてしまう。

板崎はというと…まだ恨みたっぷりにこちらに視線を向けている。


『よくも俺の顔に泥を塗ってくれたな…お前らの顔覚えておくぞ?』


「…蛆虫に記憶能力があるのですか?初めて知りましたわ?」


『こ…この…こいつ!?』


板崎の顔が真っ赤になって既に()(だこ)みたいになっている。

ゲームの中とは言えアンズはやっぱり容赦ないな…。

しかし板崎は呼吸を整え少し冷静になるとアンズに向かってにらみを利かせて言葉を吐き捨てる。


『まあいいさ。今の所入会者は0人。条件の変更は今さらできないしな。もう結果は変えようがない。お茶でも飲んでゆっくりと待たせてもらう事にするよ』


そして板崎はそのまま足音をけたたましく立てながら二階の奥へと消えていった。


その後姿を見ていた女の子も契約書を胸に抱えたままやる気に燃えている。


『あんな男の思うようにはさせたくないです!私もできる限り頑張ってきます!』


そう言い切ると私達に一礼し同じく二階の奥へと小走りに消えていく。

残された私達はというと…まあこの流れ乗るしかないんでしょうね?

私は軽くため息をつくとアンズに念のため行動指針の確認を取る。


「それじゃアンズ入会手続きすればいいんだよね?」


「ええ、ニミリお願いしますわ」


私はコンソールを開いてささっと入会手続きをしてしまう。

毎日貢献ポイントが50減るかもしれないけど今の私達はポイントがインフレしているので大丈夫でしょう。


「それにしても小さい男でしたわね?腹芸のレベルも底がしれてましたし」


「…ちなみにあそこでのあの男の行動の正解は?」


アンズは少し考えるように人差し指を口元に添えると正解を教えてくれる。


「簡単ですわ。終始はぐらかして言質(げんち)や証拠を一切与えない事ですわ。話に乗ってしまう時点でお察しレベルですわね」


アンズはそう言うと若干申し訳なさげにこちらへ顔を向けてくる。


「さてとニミリには謝らなくてはいけませんね。一つは私のわがままに付き合わせてしまう事。そしてもう一つは今回のイベント適当に流すって嘘をついてしまった事です」


「うん、何となく知ってた」


そこでアンズは真面目な顔に切り替えると私の顔を覗き込んでくる。


「ニミリ…ぶっちぎりで勝ちに行きますわよ?」


…なんとなくこんな事になるような気はうっすらとしていましたよ。

この後私達はマイルームに戻り時間いっぱいまで明日からのイベントの作戦会議に費やしたのでした。

あいも変わらず誤字脱字だらけ申し訳ありません。

いつも誤字報告いただき助かっております。

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