24.決戦下水道一号作戦 -状況終了-
乾いた破裂音と共に引き金を引いた手に上方向に向かっての反動が来る。
連射するときはこの時の押さえる力加減が難しいのだけど今回は一発でいいので問題ない。
私が放った弾丸は見事にハリネズミの背中に命中。
少しハリネズミの背中が光った後にチュインとは何かがはじける音が鳴り響く。
そして予想通りノーダメージのようだ。
しかし狙い通り奴の注意をこちらに引き付ける事が出来たので問題ない。
ここまで全て計画通りである。
計画外なのは他の人までこっちに注目している事かな?
おとなしく隠れて目立たないようにして欲しいものである。
「ニミリー?無傷っぽいのですけど大丈夫なのかしら?」
「大丈夫だよアンズ、計画通りなので心配いらないよ」
一発撃った後は私だけ既に柱の陰に身を隠しており、あちらからは私を捉えていないでしょうし安心して次の行動に移れる。
さあ次はどう来るのか?
戦々恐々としながら待ち続ける。
「あのですねニミリ…なぜかこっちを物凄く見られてるのですけれど?」
「大丈夫だよアンズ、計画通りなので心配いらないよ」
そのために餌である桃缶を渡して立たせてあるんだから。
後はきちんと食いついてくれれば。
「あのですねニミリ…。ひょっとしなくても私を囮にしている事なんてありませんわよね?」
「大丈夫だよアンズ、計画通りなので心配いらないよ」
「同じセリフを三回も繰り返すのはあんまりですわ!?それよりも否定はしないのですか!?」
「だって計画通りだから」
私は手を合わせてアンズに黙祷を捧げる。
それでどういう事か悟ったのであろう。
アンズに焦りの様子が見受けられる。
「私まだやられていませんから手を合わせるのはおよしに…」
アンズが言い切る前に目の前をものすごい勢いで球体が通り過ぎ壁を破壊する音が鳴り響く。
コンクリート片が宙を舞っており、アンズも塵になって消えていったようだ。
…だってこんな役割アンズにしか頼めないしね。
さてとアンズも仕事を全うしたようだし自分もお仕事しますかね。
私は拳銃を右手でしっかり握り直すと壁にめり込んでしまい身動きができずにもがいているハリネズミに近づいていく。
やはり壁に衝突した後はめり込んで復帰まで時間が少しかかるみたいだね。
もがいてユッサユッサと体を揺らして脱出しようとしている姿は愛くるしくもある。
しかしこいつには私達の内の四人…半数もやられたのである。
ここはしっかりと散って逝った者たちのために弔い合戦をしなければいけない。
私はハリネズミの右側に立つと次に来る相手の動作を待ちわびる。
案の定少し待っていると…ハリネズミは様子を伺うために亀のように頭をひょっこりと右側から伸ばしてくる。
これこれ!
この瞬間を待っていたんだよね!
私はハリネズミと目が合うと同時に喜々としながらあんぐりと開いたハリネズミの口の中へ右手を突っ込む。
急な事で反応ができなかったのかハリネズミは驚いたように硬直してこちらを凝視している。
…こういう所リアルっぽくて本当にNPCか疑うね?
本当よくできてると思う。
「久しぶりだねハリスン君?所で君はお薬好きかな?薬は注射より飲んだ方がいいとか映画で聞いた気がするのでたっぷり飲んでね?」
そう言うと私はハリネズミの口の中に突っ込んだ拳銃の引き金を連続で引いた。
乾いた破裂音がまた三発分連続で鳴り響く。
ハリスンは音と口の中に広がる衝撃に驚いたのだろうか?
慌てて体を揺らして暴れ始める。
そして当然ハリスンは口が痛いから閉じるわけで…。
「あいだだだ!?」
勢いよく閉じた口によって私の右腕を易々と噛み千切られてしまった。
余韻に浸って腕を引っこ抜くのをうっかり忘れてたよ!
無くなった右腕の先からは僅かな痛みと共に血が噴き出している。
こういう所をリアルに作らなくっても…ひょっとして出血死の判定もあるのかな?
となると…ひょっとすると私も長くないかもしれない。
そんな事を考えながらハリスンから距離を取る。
「おい、腕大丈夫なのか?それと武器は無くなったけどあれいけるのか?」
背中から吸い殻さんの慌てる声が聞こえてくるけど…さて本当にいけるのだろうか?
自分でも疑心を抱いているのにね…っと、どうやら効果はあるみたいかな?
苦しそうに悶えながら体を強引に柱にぶつけたり足がもたれついて正常に立っていることができなくなっているようだ。
さすが一発に400ポイントも使う弾丸なだけある。
神経毒(L4)9ミリ弾…今の私の所持ポイントだと三発も作成したらほぼ全部飛んで行ってしまった。
その貴重な全弾をハリスンの口内に叩き込んだのだ。
私も目から一滴二滴入っただけで十分後には意識が朦朧として単純思考しかできないぐらいになってたからね、効果はあるみたいだ。
けれどさすがボスというべきか結構耐えるね?
まだ敵意をむき出しにしてこちらを攻撃しようという姿勢がうかがえる。
それならば…。
「腕は無理っぽいので私は途中でリタイアするかもしれません!いけるかはわかりませんがさっき毒物を撃ち込みました。後は毒が回るようにあれを動かし続けてください。あいつに毒が回ればこちらの勝ちです。効かなかったら負け。わかりやすいでしょ?」
「効かなかったらって…まあいい。全員聞いたな!?とにかくやるぞ!」
そこから先は私にはつらい戦いが始まった。
血が出るたびに視界の黒い範囲が広くなっていき、フラフラと体が思い通りに動かせなくなっていくのである。
多分出血のバッドステータスが反映されているのだと思う。
これでアンズがいればビニール袋で止血させるのに…肝心な時にいない。
しかし、ハリスンも毒が回ってきているせいか行動をするたびに次第に針を飛ばしてくる数は減っていくし、壁も歩かなくなっていく。
どうやら四肢に力が入っていないようで動きも段々と緩慢になっていく。
更に視界も悪くなっているのか狙いも虚ろになっていきこちらとしてはどんどんと逃げやすい状況に持ち込むことができた。
私は柱の周りを回りながら射線を必死に切って逃げていたけど、最初からいた男性メンバーにとっては段々と有利になっていく事により、最後の辺りは余裕が出てアトラクション的なものとして楽しんでいる風にさえ見える。
…あまり油断してると足をすくわれるぞと言いたいけど声を発するのもつらいので放置することにしておいた。
そして毒を口に注射してから数分後。
四メートルもの巨体が倒れる音がフロアに響き渡る。
ハリスンはとうとう口から泡を吹きながら全ての足の膝を折り、白眼をむきながら倒れたのだった。
ハリスンって誰?
→用務員が飼育していたハリネズミの事です。




