22.決戦下水道一号作戦 -発令-
さていよいよ博打の日がやって参りました。
…間違えた、借りを返してもらう日でした。
そうは言ってもあれからわずか一日しか経っていないけどね。
あの後は下水道のゾンビのポイントだけもらって私は準備のために先に抜けさせてもらった。
アイテムの権利も放棄したけどその分は今日がんばってねと釘はさしてある。
そして昨日の成功例をそのまま採用して下水道も突破し、現在昨日大暴れした広間に全員集合している。
ワールドリセットされているので柱もきれいそのものだし、まだ巨大なハリネズミも闊歩していない。
今回はまずハリネズミにちょっかいを出さずに素通りして配送センターのセーフエリアに全員直行する。
サカキさん吸い殻さんワズンさんはセーフエリアの取得のために一度エスケープしてすぐに戻ってくる。
八人全員がセーフエリアに揃ったところで打ち合わせの開始である。
「ではこれよりブリーフィングを開始します。対象は四メートルぐらいはある巨大なハリネズミ。武器は背中に生えた針山であり、飛び道具にできる上に背中の針の数は減らないという卑怯な物です。他に足の掴む力は壁を垂直に歩くことができる事から非常に高い事が予想されます」
私の説明に全員聞き入っている。
次は作戦の流れと役割分担についてである。
「それで作戦だけどとりあえず私が何とかするので各自役割を果たしてください」
「それは作戦と言っていいのか?」
私もこれは作戦じゃないと思うけどやむを得ない。
作戦を明かすとそっちに注目したり、拒否が出たりするかもしれない。
新兵は単純な指示を与えてこなしてもらうのが一番だと思う。
…ということは【めいれいさせろ】が作戦かもしれないね。
「で、役割だけどアンズは私の右側に必ずいる事。一番重要な事を頼むのでよろしくね」
「責任重大な事を任されるのはやぶさかではないのですが、やはり盛り上がり所なので私は自由に動きたく…」
「そういやアンズのおばさまってこのゲームやってるって知ってたっけ?」
私の言葉にアンズが固まる。
そりゃあ、あの杏子の母親がこんな内容のゲームやってると知ったら今頃は私もアンズもこのゲームをやっていないだろう。
杏子の母親が機械音痴なのをいい事にごまかし続けているに違いない。
…アンズの今の態度から見ても確定だね。
どうせ私も一緒にやってるから大丈夫とか言ってたんでしょ?
「黙っててほしかったらこの作戦中、忠実に全部実行するように」
「ニミリ性格悪いですわよ?」
「ありがと、アンズから言われると誉め言葉に聞こえるね」
ムキーっと怒っているけど二人だけのコントを続けるわけには行かない。
他の人にも割り振って行かないと。
「ワズンさんはボスを出現させる役をお願いします。一番危険だと思うけどやられたら十分後に戻ってきてね」
「了解っす。名誉返上するつもりでがんばるっす」
…?
返上するような名誉ってあったっけ?
そもそも名誉返上しないでまじめにやってほしい。
「他の方はできるだけ生き残ってください。それだけで問題ありません」
「攻撃しなくていいのか?」
「攻撃してもダメージがとおらないでしょうし…串刺しになって終わりじゃないかと思います。できるだけ姿勢は低く、相手をよく見てとにかく逃げに徹してください。ワズンさんも出現させた後生き残ってたらこちらに参加してください」
「いつまで逃げればいいんだ?さすがに今から一時間半も逃げ続けるのは無理だぞ?」
お茶の介さんの質問はもっともである。
それに対して私も明確な期限を回答する。
「とりあえずはあのハリネズミを転がらせて壁にめり込ませる所までは継続して逃げてください。その後は私が合図を出しますので全員柱の陰に隠れてください」
「合図ってどんな?」
「大きい音を鳴らしますのでわかると思います。それでこちらが終わったら再び全員で時間稼ぎをします。やられた方も配送センターのセーフエリアからどんどん戻ってきてください。以上で説明を終わります。何か質問はありますか?」
…見回すと全員首をかしげている。
私の説明に何かわかりにくい所があったかな?
サカキさんがすっと手をあげると代表してこちらに質問してくる。
「時間稼ぎだけで本当に倒せるのか?」
「わからないですけどまあ今ある中では可能性が高いんじゃないかな?と私は思っています。他には?」
「このボスを倒せた場合の報酬の分け前は?」
「そりゃあ借りなんだから分け前は請求できないと考えておけ。後でもめるぐらいなら参加はしないほうがいいと思うぞ?」
私が回答する前に吸い殻さんがブラックさんに回答してしまった。
…別に成功報酬はそこまでいらないんだけどね。
けど準備に結構使ってしまったのでいただけるものはがめつくいただいておこう。
「それなら、ここに来るまでに得たものは私を除いて山分けというのはどうでしょう?」
実は保守部屋にはいつものライト付きのヘルメットが二個と付いていないヘルメットが一個、それに下水道の地図が一個あったのである。
四個しかないけどこの分け前から手を引くと宣言する。
「いや…それだと昨日の分も含めて逆に損しすぎないか?ボスの報酬は魅力的だが、倒せるかもわからないんだろ?」
「まあその時はその時でいいのではないでしょうか?では他に質問なければ作戦を開始します。作戦名は適当に下水道一号作戦としておきましょうか?それでは全員配置についてください」
私がそう宣言すると全員セーフエリアのハシゴを降りて目的の場所に向かい始めた。
…内心うまくいくかどうか不安だけどここまで来て止めたは無いしね。
どうせ失うといってもゲーム内のアイテムだし肩の力抜きましょうかね?
そう考えを切り替えると私も最後にハシゴに手をかけるのだった。
前回で100話達成していたようです。
今投稿する時に気付くとか我ながら遅すぎます。
ブックマーク評価を過分にいただきありがとうございます。
他に面白いお話があふれているなろうですがこの作品も一読続けていただけると幸いです。




