死闘-Less-
コメント頂ければ励みになります!
ラムゥトとフロムの一騎打ちは王国側の読みが外れる程、長引いた。
互いに意思の疎通はせずとも、白兵戦に徹する一人と一柱からは意地が感じ取られた。
「ゴーレムの分際でこの私と張り合うとは、名乗る事を許可するぞ!」
「笑止」
火花が飛び散り、金切り音が荒野に木霊する。
どちらも欠ける事のない拳と刀は質の良さを物語っていた。
次の一手を打つ前に何やらけたたましい音が遠方から聞こえてくる。
「サンカッケイ!サンカッケイ!」「コリコリペロペロ」「ホウ"ェ"ェ"-!」
悲鳴と怒号が入交、混沌が場を支配する。
多くの者は逃げ出し、腕に覚えのある物は少し離れた場所から野次馬根性を発揮していた。
巨大なゴブリンの肉体の上に、ミンゴの頭が三つ。見覚えのない魔物が王国学園の生徒を引きちぎりなが
ら貪り、突進してくる。
正に蹂躙といえた。
更に砂埃が舞い始めると魔獣の断末魔の様な物が響き渡る。
「ギョェェェ!」「ショエェ!クロレキシュ!」「ギョギョギョgホウ!」
「俺らの縄張りで好き放題しやがって糞魔獣め!」
人二人分ほどの車高をした緑と茶の斑模様をした鉄の塊が魔獣にぶつかると同時に魔物はそれを爪でつか
み取り後方へと投げ捨てた。
「流石は王国自警団、仕事が早いな」
黒鉄の筒から火花と共に閃光が射出される。白い煙が砂埃とまじり幻想的な風景と化した。
王国自警団は人族のみで構成される王国の秩序を保つ団体である。
名目上ではあるが、実態はテンプル騎士団の御目付役といったところだ。
自警団を構成する人族はもとより魔力を扱う素質が無く、化学を進歩させる事で種族としての安寧を保っ
てきたが近年、蒸気技術の発達により魔力を使わずとも、それに近しい威力の武器を生み出す事に成功し
ていた。
通称”スチームポンプガン”
「少尉戦死!自警団法に基づき軍曹を少尉に昇格。荒川少尉が引継ぎます!連絡終了」
「本部より、現場統制法二条の執行を認知。許可します。通信終了」
「了解!通信終了」
白煙に光がちかつき、目が眩む。
魔物の口から嘔吐された胃酸とおもしき液体が装甲車目掛けて飛散するが、隊員達も負けじと避け続けて
いる。しかし、次第に足場に溜まった液体はタイヤを溶かし、車のコントロールを奪う。次々と横転して
いく車から這いずりでてくる隊員達を啄む光景は野次馬達の胃の内容物をぶちまけさせた。
自警団の所有するスチームポンプガンでは魔物の表皮を貫通させることが出来なかったようで一台の車両
がラムゥト達の元へと到着した。
「失礼を承知で頼みたい!単刀直入にあの魔物を討伐して頂けないだろうか」
フロムは嘲笑うかのように首を垂れると、隊員に向かって言い放った。
「私がテンプル騎士団の団員と知っての頼みか?」
「承知の上で、お願いします!!このままでは、我々は」
「恥を知れッ!」
そう言うとフロムは脚に魔力を収束させ始める。
カカッ――
砂塵を巻き起こし、一瞬のうちに魔物の元へと駆け寄る。
剣を地に刺し、慣性に身を任せたまま飛び上がる。
錐揉みしながら左手に持つ盾で中央の頭を叩き潰す。
そのまま飛び越えると剣にむかって電撃を放つ。
「雷鳴より近しき光よ!我より放て」
フロムと剣の間を繋ぐ様に電撃が地面を走り抜ける。魔獣は感電して痺れてはいるが、致命傷とは言えな
かった。潰れた頭が再生し、激昂した魔獣の頭がミンゴのそれとは違う、見覚えのある物へと変化した。
「フロムゥウウウウウウウウウウ!ゴロスウゥ”ウ”ウ”ウ!!!」
プカードの残滓が魔獣の怒りと共鳴しゴブリンの力を発揮する。
ゴブリンは元より炎の魔素が多く、魔獣の胃酸と混じり周囲に毒ガスが拡散した。
発狂した魔獣は毒ガスを撒き散らしながら走り続け姿が見えなくなった。




