宿屋-Miami-
時を同じくして、アイリはフロムから聞いたラムゥトの蘇生方法を実行しにテツオとユイとぼっさんをつれて旅に出ることにした。
戦争ムードになってきた王国をでて帝国にある雷岩族の村へと向かったのだ。
雪姫は自警団を指揮しなければならないのでここでお別れとなる。
死にかけてもまだ生命を宿しているラムゥトのコアとオズ。
オズはテツオに背負われてなんとか呼吸をするのがやっとであった。
「プリーストの意地をみせてやるっ!生きろっオズ!」
「私は絶対にラムゥトさんを助ける・・・それとオズも・・・」
帝国へむかう道中様々なアクシデントにみまわれた。
空からふってくる魔石の雨や魔力の風にのってとんでくる魔族化病のウィルスに感染した事も、ハニートードの産卵期と重なって蛙の群れにかこまれたり、村を襲った盗賊達と仲良くなったり喧嘩別れしたりした。
今は帝国と王国の境目にある商業都市でHOTELマイアミに泊っている所だ。
雨をしのければそれでいいのだ、外は雨でおおしけで人があるける状態ではなかった。
「テツオ・・・傷はいたむ・・・?」
アイリは先の戦いで負傷したテツオを気遣っていた。
「ウーム、我にとってこの程度の傷・・・ゲホゲホ」
「あまりよくないのね」
魔族の攻撃はヒールでも癒しきれない時があるという。今がそれだ。
コトコトと囲炉裏をかこんでにこむイイチゴの臭いだけが部屋に充満して雨の湿気もあいまって甘ったるくむせ返る様だった。
HOTELマイアミの主人、金田は礼義を重んじるタイプの人間ではなかった。
しんみりとした雰囲気についついおちゃらけてしまうテツオに金田は質問した。
「お客さん達ずいぶんと怪我をしてるじゃないか、なにか曰く付きってわけじゃないだろうね」
「金田あああああああああああ」
「さんをつけろよでこすけえええええええええ」
アイリは突然のネタにイイチゴを吹きだした。
「何でしってるの?AKIRAの事」
「俺も転移者だからだよ・・・」
突如シリアスな空気に切り替わる宿場の囲炉裏。
「俺は2015年の日本国東京からきたのさ」
テツオはそういうとガジェットを腰の横において語りだした。
「いきがしづらくなる、いや社会的に息がしづらかったのかもな俺は」
オタクでサラリーマンというなんの変哲もないテツオが異世界にきたのは2015年のむせっかえる暑苦しさがのこる8月の事だった。
「俺は憧れていたアニメや漫画の世界にどっぷりとはまっていた。表にはだせない趣味という感じだったが気にせず全開で物事には取り組んでいた」
「ある日事故にあって気付いたら転移の門がある部屋に飛ばされていたんだ」
そこで金剛石のリングを渡され狼の餌になる殊勝な羊でないというのであれば通れと言われ通ったのだ。
テツオは今でも事故の後遺症でフラッシュバックする日本社会の歩行者天国の道を思い出していた。
「それでおかしくなってしまったのね可哀相に・・・」
「だーれがおかしくなっただって?ふざけんじゃねえよ!」
笑いとばすテツオの背景には暗い影がみえたようなきがした。
「私は2140年の東京からきたのよ。氷河期がきて誰もかれもいなくなっちゃった寂しい世界だった」
「今は別、大切な仲間もできたし部屋にこもって動画ばかりみていたあの頃とはもう違う」
「何をいっているのかさっぱりわかんねえが今が大事さ。天歴1025年の今がな!」
「やっぱり金田さんは違うな」
「うん」
雨の降りしきる部屋の中でしんみりとイイチゴをのみかわす三人。
「愛ぃぃぃぃぃ・・・・」
傷をいやす冬眠モードにはいったオズは意識を失った状態で生命を保持しつつ傷をいやしている。
普段しゃべらないユイもそわそわして落ち着かない様子だ。
揮発したアルコールの臭いに酔いながら三人は談笑を続けた。




