伝承-Cross-
命からがら生き延びたアイリ達は帰還のスキルリングを雪姫が発動させて定位置に移動した。
帰った場所は王国だったが王国では大騒動となっていた。
複数の組織を機能させていた主要人物が暗殺されていったのである。
「何事ですかお父様」
「おぉ雪姫ひさしぶりじゃのぅ、挨拶はせんといかんぞ」
「ひさしゅうございます父様」
「国の要人が何者かの手によって暗殺されておるのじゃ」
雪姫の父である国王の握りしめた拳からは血がでていた。
「なんてこと・・・」
「雪姫、お前も対象となるやもしれぬ。父として心配であるぞ」
「ありがたきお言葉。ですが私には裁判官としての義務がありますのでどうかご理解を」
「そうであるか・・・心苦しいが仕方あるまい。これをもっていけ」
二つ目の破邪の玉であった。
一つ目の破邪の玉は暗殺騒動のうちに混乱に生じて下弦がもちさってしまったという。
「密偵にしらべさせたところ下弦が帝国のスパイであることが発覚したのじゃ」
王国の裏組織、月を指揮する下弦が帝国のスパイであることは大事であり、国内でアッパーを流通させ経済を牛耳るとともに国力を削ぐ狙いがあったのである。
「そうですか・・・」
王国としては国宝の破邪の玉をとりもどしたいところだがそれどころではなかった。
暗殺された者の後継をきめるのに手間取ってしまい、破邪の玉を追跡するも、後手に回ってしまい下弦にいいようにされてしまっている。
「推測ですが破邪の玉は下弦が帝国にもちかえったのではないですか」
「その可能性は高い、密偵に調べさせてみるのじゃ自警団はどうするかのぅ」
王国の表向きの組織、自警団はそのなのとおり国民自らが立候補して組員となり自警団を組織しているが今回の騒動で中枢が麻痺してしまった。
「私が自ら自警団を指揮します」
雪姫は裁判官、国の法として活躍してきたが駒としても活動するようだ。
王国は法・駒・民でなりたつ三権分立国家である。
アイリは日本でいうところの警察官主要人物が全員暗殺されたという事態であると想像し絶句した。
下弦の手はそれほど巧妙で卓越した一手であったということが分かる。
目的が破邪の玉であったのであればまだ良いが、国力を削ぐ狙いもあったとなると話は別だ。
「戦争になりますかね」
「ならねばよいのじゃが、帝国の声明をきくまでは何も出来ぬのがはがゆいところじゃ」
帝国からの声明はこうだ。
「私服を肥やし他国を邪険に扱い、形容し難い悪習をもつ国家である王国を滅するとここに布告する」
宣戦布告であった。




