最愛-Death-
悪魔のナターシャが落としたアイテムは鑑定のリングとよばれるステータスを確認できる指輪だった。
アイリはドロップした指輪を金剛石のリングと並べてはめた。
「おおっなんじゃ人の横に数字がいっぱいならんどる!」
STR AGI DEX INT LUKの項目に数字が横並びしている。
「ラムゥトさんのステータスはAGIとVITがずばぬけて高いですね!」
その数値はAGI300、VIT500であり、人族の平均ステータスはSTR300 DEX200 INT200 AGI150 VIT200 LUK200となっており倍近く差があった。
アイリの目には対象のステータスがみれるようになった。スキルリング「鑑定士」の効果だ。
「うわぁああああああああ文字がいっぱいならんどるぅううう」
アイリは字が苦手だった。
ラムゥトがそっとアイリの指からスキルリングを外す。
「あり”が”と”ぅう”ぅぅ”」
鼻水を垂らしながら感謝するアイリ。
「これは貴重なスキルリングですぞ、大事に成されよ」
「う”ん”!」
鼻水をすすりながら混乱した頭を落ち着かせる。
もう一度ゆっくりとスキルリングをはめると、慣れてきたようで自然とステータスの認知ができるようになった。
「魔力を流すとスキルリングの効果が一時的に消されて普通のリングになるようです」
「どうやって魔力ながすの・・・」
「えっ・・・アイリさん学校を卒業してないのですか!?」
「しししししとるわい!!」
「ふんぬぅうううう!!っは!!」
「できんぞー!!なんでぞおおおおおおおおお」
アイリは魔力をもっていなかったここまでこれたのはラムゥトとぼっさんのおかげであると再認識した。
「主よ、これをつかわれよ」
ラムゥトがコアから取り出して渡したのは雷岩族に伝わる魔力増幅のスキルリングだった。
「おぉかんじるんよ!魔力!魔力の流れが分かるんよ!」
共鳴するように与作とゴブリベンジャーの双剣が震える。
踊る様に二つの剣で舞うアイリ。
「たっのしー!」
「愛ッ!ですねラムゥトさん!」
ラムゥトはコアを光らせながら頷いた。
だが、しかし愛の終焉をむかえることになるとは誰も考えていなかった。
――突然の衝撃である。
アイリの頭上から下弦の召喚したロックという岩の魔法が降り注いだのだ。
「天地司る岩上の大神よ天命をもって屠れロック」
穿たれる地面に点々と落下していく岩石をぼっさんが鎧の加護で防いだ。
テツオやオズは免れたがラムゥトだけはロックの魔法を最大限のダメージで受けた。
雷岩族のコアにむかって岩が引き寄せられたからだ、ラムゥトは崩れ落ち意識を失った。
ラムゥトは死をむかえたのだ。
「ラムゥウトオオオオオ!!」
「嘘・・・ラムゥト・・・!」
絶望するアイリをよそめに下弦は次の詠唱へと入る。
「天地司る水上の大神よ・・・」
詠唱をしている最中、オズが突進し阻止するも半分詠唱を終えて召喚された水の刃が重力にそって地面へと突き刺さる。
「オズ・・・生きていたのかっ執念深い奴め」
「愛ィィ!!受け止めてください!私の愛を!」
弾丸のごとく突進するオズをうけとめては分身をつくり逃げ出す下弦。
「受け止めてくれるのですね私の愛ッ!」
「しつこい奴め!失せろ!」
ピンボールの様に弾き飛ばされるオズは意識を失いながらも愛を求めていた。
「ハッッッ!ううぅうううう愛ィィ!!」
オズは走馬燈をみていた、人に理解されず差別されつづけた人狼としての人生を。
寂しく孤独だった、幼い頃から人と違ったオズは侮蔑され続けたのだ。
人格は歪んだ、しかしやがて訪れる愛との出会い、政府直属の下弦の手による養子として迎え入れられた事によって無償の愛と錯覚する施しをオズは下弦から受けたのだ。
慈しみをもって育てられたオズは愛を下弦に抱きはじめ、それを下弦は利用し分析官としての才を見出し自らの駒として扱っていたのだ。
裏切りにも似た行動に下弦は堪忍袋の緒をきれてしまっていたが、オズにとっては政府の裏組織である月をあやつっている下弦が愛おしくも恨めしくもあった。
故郷の人狼里を破壊したのは月だったからだ。
真実をしったときオズは驚愕と愛への裏切りが重複しショックで可笑しくなってしまったのだ。
二足歩行から本来の四足歩行へと形態を変えた。
「ヒーリング!」
テツオが遠距離からオズへとヒールを飛ばすもダメージが想像以上に大きいオズは二つ目の心臓の鼓動を止めようとしていた。
「では始めよう!!最高のショウを演じるのだ!愚民がつけあがるのもほどほどにするのだな」
オズは心に深い傷を負ったがそれと反比例して癒えていく外傷に違和感を感じていた。
心臓は修復されたが心のダメージが大きくオズは愛を見失うとともに自我を保てなくなってしまった。
「ラムゥトさん・・・オズさん・・・私はどうしたらよいのでしょう」
愕然とする雪姫の元へと馳せ参じたのは異常な音波とマナの流れを感じ取り、カカッっと参上、ナイトシーフのフロムであった。
「むむ、なにやら怪しい気配!このナイトシーフに任せられよ!」
「フロムさん・・・!」
雪姫はフロムの登場に驚いてはいたが決しておかしなことではないと知っていた。
フロムはナイトシーフとして国家の安全を司る黄金のナイトなのだから!




