月日-Line-
二つ構想がありまして、どちらから進めるか悩んでおります。
拠点は予想以上の賑わいを見せた。
元々、大工房の流通網があったこともあり、搬入には苦労しなかった。
多くの物資が行き交い、繰り返される商いに王国が目をつけるのは時間の問題だった。
「大工房にこれほどの価値が生まれるとはおもいもせなんだのう」
長く伸びた髭を結った老人は杖で体を支えつつ髭を擦る。
老人の隣に立つ長身痩躯の男は自警団を統括する通称、下弦という通り名を持つ元軍人である。
「ゴブリンの混合魔獣の一件以来、王国は財政だけでなく食糧難でもありますからな。棚から牡丹餅とでもいいますか」
下弦は腕を組みながら異様な雰囲気の拠点に首を傾げる。
その要因は種族問わず、なごやかに事が為されているからであろうか
諍いが起こることもなく唯、不気味に祭られた鎧が”灼熱のリング”から放たれる光に照らされている。
(なんでワシ……大工房の象徴みたいになっとるんや……)
時系列を正すと灼熱のリングを借りる事に成功した後に行われた宴が一月前になる。
そして、ぼっさんが祭られているのが今である。
「この鎧はオブジェとして飾られているのかしら?」
下弦の秘書を務めるマドンナがしなを作りながら鎧の表面を一指し指でなぞる。
(オッホホイ。ゾクゾクするぞい)
「何か別の気配を感じるが……ううむ、ワシの気のせいかの」
(この爺さんはたしか、教会によく顔をみせていた……スティシスだったか)
下弦が食い入るように見つめているのはぼっさんに帯刀させている、祭られた刀だ。
「得物としては二流だが、装飾品としては中々の出来栄えであるな」
カタッ―。
「いま、動きましたよね?」
「いや、風で鎖帷子が揺れただけであろう」
(好き放題いいやがって、アアァンそこは触らないで敏感なの)
「上質な魔鉱石をつかっておるのぅ」
ぼっさんは一か月放置される事で何かに目覚めつつあった。
「この仕上がりで量産できれば我が国も安泰じゃわぃ」
「生産ラインの構築を進めたいと思いますが、許可を頂けますでしょうか」
そう冷徹なようにきこえるトーンで話すのは下弦の付き人である秘書の上弦だ。
「すぐに取り掛かってくれ、魔鉱石の発掘は私が担当しよう」
大工房に満ちた複合魔獣の瘴気によって濃ゆくなった魔素が魔石の品質を高めている様だ。




