交渉-Ring-
ごたついておりました!
コメント等頂けると励みになります!
しばらく調査を進め、開けた場所に野営地を決めてから拠点を作り始める。
移動拠点は出来るだけ簡易で丈夫かつ便利であればあるほど良いと飲んだくれ爺さんが語っていたと、ぼっさんは言う。
土魔法に適正の高い者が居れば良いのだが、残念ながら居ないので工具を使い調理場と寝具だけ揃える事にした。
クーフリンは物珍しそうに、その作業に魅入っていたが料理を皆へと振舞うことにした。
先ほど収穫した水路に浮かぶワニ型の魔獣を解体し、アレチウリ草と一緒に薬草で包んでから掘り起こした地面に入れ、熱した石の上に土を被せオーブンにした。
獲れた魚はシンプルに串打ちして内臓だけ取り除き、塩化粧をしてから遠火で焼く。
ラムゥトは鋼の鍋をコアから取り出し、ともに出したイイちごと教会のゾグンから貰ったライ麦パンを鍋に入れ、金と等価の甘砂と呼ばれる調味料をふんだんに塗して煮込んだ。
アイリは監督兼見張りとして腰掛けて、涎をカウルの袖で拭った。
まずは淡水魚の塩串焼きを食べる。
「まぁまぁかな」
アイリはこぼした白身を摘み残さず食べると、すぐさまワニの野草蒸し焼きをほうばり始める。
「ま、まぁまぁかな」
鋼の鍋からコップに移したイイちごのドロドロスープを飲むと、しばらく啜り続け間を置いてから、アイリは無言で立ち上がり、ラムゥトに向かって目を瞑り抱き着いた。
「100パーセント!これは間違いなく苺よ!」
訳の分からない言動にラムゥトは戸惑いはしたが、決して悪い気はしなかった。
ふと、遠い昔のまだラムゥトが同族と居た時代を思い出した気がした。
頭部のコアは反応せずとも胸部の排熱機関が振動する。
背面から蒸気を噴出すると、金剛石の双眸から水滴が流れ落ちた。
結露から生まれた水分であったかは本人にも分からないが誰も気にはしなかった。
「やけに良い臭いがするが、人か魔物かそれとも・・・」
状況が分から無かったにしても、無粋といえるタイミングで現れたのはフロムとホークアイが率いる五名のパーティだった。
クーフリンとぼっさんは面識がなかった為、咄嗟に戦闘態勢になったが相手の無警戒さから直ぐに敵対心を解いた。
「んにゃにゃにゃんと!ラムゥト殿ーと主殿!探しておりましたー」
ホークアイは四足の体勢のままラムゥトに飛び掛かると、すりすりと自らの臭いを二人につけた。
フロムは怪訝そうに見つめると逡巡してから、コアから発する光で理解した。
「刀のお礼を返しにきました、ラムゥト殿」
恭しく頭を垂れると、フロムは騎士らしく振舞い、大工房の調査を共に行わせて貰えるよう頼んだ。
「失礼、某の名前はナイトシーフを職業とする守護騎士フロムと申す」
クーフリンとぼっさんに深く頭を下げると、ホークアイも名乗った。
拠点をここに選んだのには複数の理由があるが、炉がまだ再利用できるとクーフリンが言い出したのが始まりだ。
防具の制作に必要な炉と水路の確保が済んだので後は炎の魔力か魔素が見つかれば稼働させることが出来る。
フロムはパーティにホークアイと家の執事達数名を連れてきていたので雑用を従者に任せると、ホークアイが「えっへん」とわざとらしく腰に手を当てながらこれを見よ!と差し出してきたのはマドンナがお酒を温めるためにつかっていた
”灼熱のリング”であった。
ホークアイは自慢げに指輪をかざすとラムゥトとアイリに向かって、チラチラと視線を投げかける。
ラムゥトはその指輪を譲って貰うために昨晩つくった料理を振舞った。
「このまろやかさはなんや!」
王国北部の甘皇帝苺という千年に一度だけ実らせる果実が甘露さを引き立てている。
舌なめずりをするホークアイは瞳孔を開けたまま甘い酒を直視し続ける。
「このとろけそうな汁こそ、甘露なのですよ」
ニャアアア――。
「飲みたいのにゃ!!!」
「貴重な物ゆえ、分け与える事はできませんぞ」
「一口で!一口でいいのにゃ!」
「では、その指輪を譲って頂けるのなら構いませんぞ」
歯を食いしばりながらも、眉間に皺を寄せて考え込む。
ホークアイは涎をすすり、手で口元を拭う。
「ふむ、譲歩して貸していただくという形ではどうか」
「それで!」
答える前にすでに食べ始めていたホークアイは尻尾を振りすぎて、視ているこちらの目が回りそうな程であった。




