覚醒-Meditation-
びっくりするほどユートピア!
地下の大工房は地上の状況とは裏腹に動植物の繁殖が盛んであった。
階段を降り切ると、すぐそばに水路が引かれていた。
どうやら、この水源は”噴水の魔晶石”から出ている様でこの魔晶石は世界に大小問わず確認されている物で三個だけであった。
水路には魚影がみえることも、しばしばあり、地面には苔が棲息している事から大工房に魔物が繁殖しているという噂も信憑性が増してきた。
ラムゥトは苔の成分を魔道具で鑑識して、有害でないと確認すると試験管をコアに格納した。
アイリはラムゥトの後ろで恐るおそる先を見据える。
見えないはずの先がみえるのは金剛石の指輪がアイリの網膜へと魔力を供給し、日光の有無に関わらず視界を確保できる様になっている。
指輪の金剛石は見事にカットされており、二カラットにしては鮮やかな色味を魅せている。
アイリが壁に手を付いた拍子に”金剛石の指輪”のギミックが発動した。
巧妙にカットされた金剛石は内部で光が乱反射し、外部へとその内容を映し出す。
そこにはステータスバーの様な物が表示されており、体の状態と装備品の現状、パーティの構成が確認できた。
名前 アイリ
職業 冒険者見習い
属性 ニート
装備 金剛石の指輪 絹のカウル 金色のネックレス
練度 足軽Ⅱ
名前 ラムゥト
職業 雷神
属性 雷
装備 依代の核 祭られた鋼の鎧
練度 将軍Ⅲ
「ナニコレ・・・おもってたんとちゃう!」
ラムゥトは首を振りながら”金剛石の指輪”の能力を止めた。
「アイリ殿、こちらの世界に来たばかりではないですか。気に成されるな」
「パソコンはどこ~~」
ラムゥトは訝しそうに見つめ、パソコンとは何かと考え始めた。
「アーアーパソコーン、コタツー」
ピンッ!ときたラムゥトはコアからオレンジ色の柑橘類の果物を取り出した。
「食されよアイリ殿」
「モグモグモグミカン!」
「デコポンという果実です」
アイリは不服そうにしながらもラムゥトの持っているデコポンを奪った。
機嫌を取り戻したアイリをみてラムゥトは一息つく。
そそくさと歩いていくアイリに同伴していくラムゥト。
「あっちの方に四角い箱がみえるのであけてみましょ!」
「暗い道ゆえ気を付けなければ・・・」
箱を開けてみると建築に必要な工具らしき物が入っており、かなり使い古されているにしても現役で役立ちそうな一品ばかりだった。
「おもってたんとちゃう!!」
「必然といえると思いますが・・・」
ラムゥトは駄々を捏ねるアイリを尻目に箱の中身を吟味しつつもコアへと収納した。
その中にひと際目立つ代物があったので魔道具で鑑識してみると、タンクの部分に水を入れて、炎の魔素を底に刻み込む事で、銅製の筒の先から高温の煙を噴射する武器なのか建築道具なのか分からぬ機構の物が存在した。
道具名は”スチームクリーナー”と書いてある。
アイリは見覚えのある単語にここぞとばかりに食いついた。
「ふむ。これは汚れを落とすときや衣服を綺麗にするときに使う物なのだ!」
流石は我、主と忠誠を誓う事にしたラムゥトは、さっそく鎧に描かれている子供の書いたであろう落書きを落とす事にした。
すると、落書きの様な物は輝きを放ち周囲のマナを集め始める。
無地の鎧は金色の装飾を産み出し、その潜在能力を引き出す。
長年教会の信徒達に守護神として崇められた鎧には魂ともいえる能力が宿っていた。
「ワシを着こなすとはとんでもねぇ男前だぜ!」
ラムゥトは鎧が突然喋り出した事に驚き尻もちをつきそうになるが、鎧が勝手に動きだし、アクロバットな方法で着地した。
「其方は何者ぞ」
「ワシはワシやけど、しいていうなら・・・んー思念体ウィズ鎧ってとこやな」
ラムゥトは全く聞きなれない言葉にどうしたものかと考え始めるが、アイリは一人で「キタコレ」と叫んでいた。
ややこしいので、ラムゥトは依代を”祭られた鋼の鎧”から手短にあった”スチームクリーナー”に移した。
「ぼっさんと呼んでくれ!ボッ!っさん!ってかんじでええど」
「ぼっさん殿、すまぬがそこの工具を使って我を歩けるようにしてはくれんか」
材料はいくらでもあるとラムゥトはコアから素材を出した。
コツコツと作業を始めるぼっさんをよそ眼にアイリは金剛石の指輪でぼっさんのステータスを確認していた。
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