迷宮-Trap-
アイリ=主人公
ラムゥト=雷神
ゾグン=教会の神父の息子で跡継ぎ
シスター=不在のため人族メイド
天窓から澄み渡る空から日光が射しこみ、小鳥達の囀りが聞こえる。
アイリは両手の指を絡めて体を伸ばした。
「ん~~きもちぃいい~~」
欠伸がでないほど熟睡できたようで、肌の艶も垢に塗れているのにも関わらず美しかった。
ラムゥトは睡眠を必要としないので、セキュリティの変わりに扉の前でスクアッドをして一夜を明かした。
「昨夜はお楽しみのようでしたね」
ラムゥトは理解できないが不和を起こしたくないので会釈をして席に着いた。
ラムゥト用にと教会の側に徹夜で拵えたのが木製の腰掛けである。
バキッ――。
「すまぬ・・・我は体が体故、重過ぎてしまったようだ」
お詫びにとラムゥトは壊してしまった腰掛けを”チェンジ”の魔晶石を使い、
鉄製へと替えた。
魔晶石は魔石と異なり、魔石が自然界において持せいする事で周囲のマナを少しずつ吸収して魔力へと変換した物である。
魔力の質も様々であるが取り分けて”チェンジ”の魔晶石にはなり辛かった。
魔晶石は王国において貴重な物で大工房で一月に三個程見つけられるかどうかといったところだ。
ゾグンは礼を述べると、ラムゥトに朝食用のライ麦パンを多めに渡した。
ラムゥトはゾグンに見えぬよう、コアに収納する。
雇われの身である人族のメイド達はシスターがいないので代表を選べず、治療の対応にてんやわんやしていた。
「ラムゥト・・・さん?おはようございますムニュムニュ」
アイリが口を手で押さえながら瞼をこする。
「アイリ殿、おはようございます」
ラムゥトはコアから熱した絹布を手渡す。
「うわぁ・・・ふかふかぽかぽか~」
南東にあるべりーの名産地に生息する蟲の魔獣が産み出す糸でできた絹布は商業用品として富裕層むけに生産される肌着用のシルクで出来ている。
水に濡らし熱する事でとても心地よい質感になるので手拭きとしても重宝された。
「冒険者様でしょうか?昨日は大変お世話になりました」
「ありがとう!おねえちゃん!」
「はぇ~どえれぇ大きさの旦那じゃ~」
気色の良くなった村人達が大勢で二人に礼を言いに来たようだ。
「ラムゥトさん。私たちって冒険者なの?」
小さく頷くとラムゥトは村人達に栄養価の高い食材を配り始めた。
顔色が良くなったといっても、不作続き以前に貧困は変わらず、骨に身が僅かについた程度の人々からは生活の厳しさが見て取れたからだ。
こうなると教会の人達は贅沢をしているように感じるが、彼らが最低限の健康を保たなければならないのは病気の温床になってしまっては治療する施設が無くなるからなのだ。免疫を保てる程の栄養を摂取しておかなければ元もこもなく、背に腹は代えられぬという訳だ。
この旨を村人達も古くから伝えられているからわかってはいるのだが、時折理由を知らぬ者たちが協会は金があると勘違いを起こし義賊を気取ったり、純粋に盗賊行為をしてしまう事もあった。
ゾグンはラムゥトに相談があると呼び出した。
「地下の大工房にどうやら魔物が住み始めたらしく、あなた達のお力を貸しては頂けないでしょうか?教会の間での噂なので王国も真相はつかめていないとか」
(ついに来たぞッ!この話には罠がある間違いない!)
アイリはラムゥトの腰帯を引っ張ると、真相を突き止めるべく準備をしようと語り掛けた。
「魔物駆除の依頼を教会ギルドにだしてくだされ。受諾致す」
「さすがはかの冒険者様!すぐにしたく致しますのでお待ちください」
ゾグンは”一繋ぎの貝殻”を取り出し、何やら話しだすと、いくばくかして話終えた。
「話はつきましたので、どうぞこちらへ」
二人はゾグンについていくと教会の祭壇の蝋燭に火を灯して天秤の右側に金貨を置いた。
ゴゴゴッ――。
地面と祭壇が摩擦で削れる音が協会に響く。
ラムゥトは依代をゴーレムからコアに移し、近くにあった甲冑を依代とした。
「失礼ながら、この甲冑の代金を支払いたいのですが」
「餞別です。お使いください」
「申し訳ない」
ラムゥトとアイリは地下へと続く螺旋の階段を降り始めた。
がんばりもす!




