鍛冶-Job-
有難うございます!がんばりもす!
時は同じくしてプカードの同僚、オークの鍛冶職人ジャックもその例の一つと言えた。
元々オークは平穏な種族で好戦的ではなかった。
何かを作り生み出す事を生きがいとし、人間とは深い歴史的繋がりがあった。
持ちつ持たれつの関係であった物のそれを良しとしない種族は数えきれなかった。人間は他種族を尊重するが、傲慢なエルフはオークを奴隷にする事を執拗に意識し続けていた。
名目上王国を支配しているのは人族ではあるものの、実質はエルフと魔族が実権を握っていた。オークは日に日に数を減らし、今ではジャックとその血族しか存在を確認されていない。
ジャックはプカードの事を好いてはいたが、テンプル騎士団のフロムに入れ込んでいると勘違いしていたため、手ぐすねを引いていた。
鍛冶職人特有の指に出来たタコが研鑽された技術を物語っていたが、ジャックにとってのこのタコは歪に見えてコンプレックスであった。繊細な心を持ったジャックにとってプカードが魔獣に取り込まれてしまったという事実は受け入れ難く、何かに没頭しなければ自我の崩壊を招きかねない。
ジャックはこれまでに無いほどに力と魔力を込めて槌を振るった。
玉鋼と鋼鉄、オリハルコンとミスリル。
そこに砂金を塗しながらマナをこめる。
非常時にと代々家宝として受け継がれてきた”ダイアナイト”という金剛石に似た水晶を柄に具える。
「何故じゃぁ・・・なんでじゃぁ・・・」
流れ落ちた涙が熱で水蒸気へと変わる。
剣とも刀ともいえぬ、七色に輝く得物は工房の熱気を瞬く間に消し去り、冷却した。
「”ゴブリベンジャー”」
ジャックが造り上げた武器が仕上がったのはゴブリベンジャーと名付けられたのと同時だ。
澄み渡る冷気が工房を中心に広まる。
酒場の裏口から何事かとマドンナが顔を覗かせた。
「出来たぞ。ついに、出来た。くらくらす・・・る」
オークはそのまま倒れ込んだ。そこを支えるようにマドンナが駆け付ける。
「いい男だね全く」
指に出来たタコを愛おしそうになぞると、マドンナは息子を抱える様にジャックを持ち上げ、寝床へ優しく横たわらせた。
マドンナは自宅へ戻ると、とっておきの樽から五十年物のエールを取り出した。
キュポンッ――。
”灼熱のリング”を使い徳利の中身を温める。
トクトクと徳利に注ぐと頬を付きランプの灯が消えるまで独りで飲み明かした。




