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Prologue

この物語はフィクションであり、実在の人物・地名・団体・名称等についてはうろ覚えの知識と、その場で検索・斜め読みした情報を元にしているため、あんまり関係ありません。



 凧に乗って飛び立とうとした男を、地面に叩き落とした。

 怒り狂う男から放たれた稲妻を散らした。


 いずれも原理は同じことだ。中学生レベルの物理学である。


「くっ、何故だ! 何故この俺様の偉能力が通じない!」


 だから、その光景が、現実離れして見えるとすれば――それは単に、観測者の教養が欠落しているのだろう。


「万有引力って、知ってるか?」


 人が地を這うのも、雷雲と地面が引き合うのも、《引力》によるものだ。

 ならば、引力を強めれば凧は落ちるし、引力を散らせば放電は起きない。


「引力……だと……ひょっとして、あんた……!?」

「そう、そのまさかだ」


 僕、藍沢柔人の名を知らなくとも、僕の“前世の名”なら誰だって知っている。


 手裏剣さながら投げつけられた郵便葉書を、長3封筒を、赤や青のレターパックを一纏めに《引》き寄せ、相手の能力圏から《引》き剥がす。いかなる前世力が込められていようが、今やただの紙だ。

 手で払って散らした時には、男は振り返ることもなく、路地の奥へと掛け出している。紙束は目眩ましのつもりだったのか、勝てないと判断してからの、思い切りの良さは称賛に値する。

 ただ、その判断自体が遅かった。


「くそっ、ついてねえ! なんでこんなところに、そんな大偉人が……」


 数十メートルの距離を大股の一歩で《引》き寄せて、僕は逃げる男の真正面に回り込む。怯えた男は振り向きざま足を滑らせて、地球の《引力》により勝手にスッ転んだ。


 引力は万物に宿る。故に、万有引力は万象を操る、最強の能力。


幕引きだ(pull over)


 偉能力者の男は断末魔の声も上げず、《引》き倒された廃屋に圧殺された。


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