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7.職場訪問

 ルドルフから指示された仕事を全て終えた私は、オキという人物を探してオリジナ村内を散策していた。

 ルドルフ宅を発ち、ものの数分で目的の人物は見付かった。

 どうやら今日も雪掻き作業をしていたらしく、額の汗を拭っている。


「こんにちわ」

「ん? 何だ、アランとこの嬢ちゃんか」

「今はアランさんの家ではなく、ルドルフさんのお宅で仕事をさせて貰ってます、先日はご挨拶をしてなかった事を思い出しまして。ミラと申します、今後とも宜しくお願いします」


 頭を下げ、自己紹介と挨拶をする。

 挨拶というのは重要だ、人々の交流を円滑に進める為には避けては通れない。


「ほう、そうかい。おいらはオキってもんだ。何にせよ仕事があるのは良い事だ、この村には馴染めたか?」

「ちょっと寒いのが辛いですけど、皆さん私に良くしてくれて、助かってます」

「助け合わなきゃこの村じゃ生きていけねぇからな。見ての通りこの村は雪国だ、人一人で生きていくには辛い物があるからな」


 私がこの村に来て、まだ一週間そこらしか経過していないが、確かにそれは感じている。

 この村に住む住人達は、皆仲が良いように見える。

 村人全員が貴重な人手であり、この厳しい国土で暮らす為に否応無しに一致団結しなければならないからだろう。

 不仲で不和が生まれれば、それがこの村の存続の危機に繋がりかねない。

 どんな世界でも、こういうのは重要なんだなと肌身で感じる。

 さて、そろそろ私の目的を切り出していかないと。


「それで、実はオキさんがこの村で鍛冶業を営んでいると聞きまして、お邪魔でなければ仕事場を覗かせて貰えないかな、と」

「ん? 何だ嬢ちゃん、鍛冶なんぞに興味あるのか?」

「鍛冶なんぞ、なんて謙遜しないで下さい。鍛冶師がとても重要な職業なのは私は重々理解してます」


 そう、私は今の鍛冶業を見る必要がある。

 鉄加工業からはその世界の科学技術を多々見る事が出来る。

 鉄を叩き鍛え上げ、溶かし、成形する。

 これらに必要な技術はとても高度なものであり、素人に出来るような簡単な作業ではない。

 それ故にこういった製造業の姿を見る事が出来れば、この世界の科学技術水準を簡単に推し量る事が可能なのだから。

 この回答はオキからすれば嬉しい物だったのか、頬が緩み、蓄えた髭を親指と人差し指で擦り始める。


「嬉しい事言ってくれるね。まぁ別に見る分には構わんぞ、見ての通り仕事なんてのは大して無いからな、お陰で商売上がったりよ」


 自らの不景気を豪快に笑い飛ばすオキ。

 商売上がったりとは言うが、あまり困窮しているようにも見えない。

 何か副業でもしているのだろうか?


「雪掻きも粗方片付いたし、そういう事ならウチに来てみるか? 男所帯だからお嬢ちゃんが見て面白いもんなんか無いとは思うがな」

「是非とも」


 いえいえそんな謙遜なさらず。

 この世界でどれだけの事が出来るか。

 それを知れば私がどれだけ楽出来るかも分かるのだ。

 私は自分の快適生活の為なら苦労は惜しまないよ。



―――――――――――――――――――――――



 木戸を開け、オキの自宅兼仕事場である室内へと足を踏み入れる。

 まだ日中故、明り取り窓から注ぐ日光で室内を見渡すには困らない。


「ここが、おいらの仕事場なんだがな。お嬢ちゃんに解るかな?」


 オキの言葉などそっちのけで、室内の設備を視認する。

 金床や金槌といった、刀剣を鍛える為のものと思わしき、年季の刻まれた道具が見受けられる。

 奥には砂場がある。

 十中八九、利用目的は解ってはいたが、念の為近付きその土砂を手に取る。

 手触りを確認し、その利用目的を確信する。

 これがあるって事は……

 金床のすぐ側にあった、窯へと近付く。


「これって……万因(ばんいん)粒子を利用した溶鉱炉……?」

「? ああ、確かにそいつぁ溶鉱炉だな。それがどうかしたのか?」


 私の知っている物の比べて、大分小型な気がする。

 ……ああ、成る程。

 この溶鉱炉、送風に使うであろうふいごに当たる部分が無いんだ。

 だからこんなにコンパクトになってるのね。

 酸素を送る送風の役目は、この両脇に付いている宝石で行ってるのね。

 この宝石、良く見ると中に術式回路が刻まれてる。

 これで酸素供給をコントロールしてるのね。


 溶鉱炉があるなら、鋳型も出来るわね。

 というか、あの砂場ってそれが目的で置いてあるんでしょう。

 って事は細かい物こそ無理だけれど、ある程度の大きさまでは鉄細工も一応作れる訳か


 旋盤やプレス機は――流石に高望みか。

 この世界にそこまで望むのは流石に酷よね。 


「オキさん、もしかしたらここの設備を使わせて貰う時があるかもしれません、その時は使わせて貰えないでしょうか? 勿論、その際は謝礼を払うつもりではいます」

「使う? まぁ壊しさえしなけりゃ別に構わないが、いってぇ何に使うつもりなんだ?」

「……色々です。でも、まだ当分先になると思います、まだまだ準備が足りないので」


 そう、準備が足りない。

 資金も資材も人材も足りない。

 ああ、快適生活は何時になったら出来るのかしら。

 快適は歩いてこない、だから毎日頑張るよ。

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