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63.足つぼマッサージ

許されるならもっとじっくりマッサージ描写をしたかった

「いやあああああああぁぁぁぁぁ!! 痛っ……痛い! 痛ああああぁぁぁいいい!!」

「ほーら、ジタバタしないの。後、喧しい。少し黙ってなさい、ルークやリュカに説明が聞こえないでしょう。あんまり煩いようだと猿轡噛ませるわよ?」


 車両内に響くリューテシアの悲鳴。

 痛いって言っても止めてあげない、オシオキだって言ったわよね。

 それに、これを受けた後は身体が寧ろ健康になるのよ?

 良かったわね、リューテシア!



―――――――――――――――――――――――



「リューテシアはそこの椅子に座って頂戴。ルークとリュカはリューテシアの両脇で待ってて、今準備するから」


 線路敷設作業を中断し、私を含めた全員が寝台列車内へと舞い戻る。

 これからオシオキをするので、リューテシアから再び魔法使用権限を取り上げ、反抗出来ないようにしておく。

 車内に備え付けてある椅子にリューテシアを座らせ、ものぐさスイッチ内からタオルを数枚と、壺に入った湯を取り出す。

 この湯を大きめの洗面器に取り分け、適温になっているかどうかを自分の手を入れて確認する。

 リューテシアの履いている靴を脱がせ、その両足を洗面器の湯に浸す。

 軽く足を揉みながら、足の汚れを洗い落として行く。

 こうして湯に漬けながら揉む事で、足の血行を良くし、マッサージの効果を高めるのである。

 リューテシアの足がしっかり温まったのを確認し、タオルで水気を拭き取る。

 壺に残っている湯にタオルを一枚浸し、絞って蒸しタオルを作る。

 蒸しタオルで片足を包み、その上から更にタオルを一枚重ねてくるみ、熱が逃げないように保温しておく。


 私がこれからリューテシアに対してする事は、足つぼマッサージである。

 足つぼにも種類はあるが、今回私が行うのは台湾式と呼ばれる物だ。

 足裏を強く指圧するのが特徴で、痛気持ち良い快感が病みつきになる事間違い無しである。


「じゃ、ルークとリュカには説明を交えながら実際に見て貰って、リューテシアにはこれから身を持って。足つぼマッサージの勉強をして貰おうかしら?」

「足つぼ……ですか? 初耳ですが、一体それは何なのですか?」

「足つぼは、リフレクソロジーっていう、特定の箇所を押したり揉んだりする事で刺激した箇所の疲労を取るっていう反射療法よ。肩が凝った時に自分で肩を揉んだり、目が疲れた時に自分で目を押してみたりとか、そういう経験って無いかしら?」

「言われてみれば、確かにそんな事をした事もありますね」

「今からやる足つぼマッサージっていうのも、それの派生系だと考えてくれて良いわ」

「何だ、何をされるかと思ったら……」


 そんなの大した事無い。

 そう言いた気に余裕の表情を浮かべ始めるリューテシア。

 さて、その余裕の表情が何時まで持つかしらね?

 足裏を軽擦(けいさつ)して緊張をほぐしながら、本格的な指圧に入る。

 石鹸製作でも使用している、植物性の油を少量手に取り、両手を合わせるようにして擦り、油の温度を体温で馴染ませる。

 この油を使った石鹸の影響で、以前アーニャの肌がスベスベになったという報告もある。

 だから、この油は人体に良い影響をもたらすのだろう。なら、マッサージの潤滑油としても最適である。

 温度を人肌程度に暖めた油を、リューテシアの片足に塗布して滑りを良くしていく。

 足裏だけでなく、足指に甲、踵といった足全体にしっかりと塗り込む。


「で、人間の身体の中でも足裏っていうのは非常に疲れが溜まり易い箇所の一つでもあるの。身体の中の悪い物、老廃物なんかも排出が滞る場所だから、『こうやって』外部から力を加えて排出を促すのは健康面で重要な事なのよ?」

「ふぎゅっ!?」


 息を吐きながら、深く腰を落とし、腕ではなく身体全体でリューテシアの足裏、その一点を親指で押し込む。


「あ、これオシオキも兼ねてるからルークとリュカはリューテシアが逃げられないように押さえ付けておいてね。大丈夫大丈夫、怪我もしないし寧ろコレを受けた人は健康になる位だから、リューテシアがどれだけ悲鳴を上げてても罪悪感感じる必要無いから、思いっきり押さえ付けてね」


 逃亡阻止の無慈悲な宣告を告げながら、再び足つぼマッサージを続行する。


「私が今やってるのは台湾式っていう、刺激が強いタイプのマッサージね。マッサージにも色々種類があるから一口では全てを言い表せないんだけど、足つぼマッサージはその名の通り、足を重点的に指圧していく物ね」

「ふがっ!? 痛ッ!?」

「ちなみに、痛いって言ってる場所は主に老廃物が溜まってる箇所なので、台湾式足つぼマッサージでは悲鳴は気にせず寧ろ痛がってる箇所を重点的に攻めていってね」

「いやあああぁぁぁぁ!! やめてえええぇぇぇ!!」


 うるさいなぁ。


「で。最終的には私が今やってるみたいに、親指で指圧箇所を刺激していくのが出来れば理想的なんだけど、慣れてない内は滑ったりしっかりと力が伝わらなかったりで上手く指圧が出来ないと思うの。そういう時は、人差し指を折り曲げて、この間接部分で押すようにすると上手く力が伝わるのよ。こんな風に押すの」

「きゃああああぁぁぁ!! いやだあぁぁぁ!!」

「押す時は、指で押すというより全身を使って押す感じね。腰を落として、指でなく腕で押して、腕で押す際に全身の体重を上手く使って患部を刺激して行くの」

「ふんんんんんんッ!?」

「それと開いてる手で足がグラグラ動かないようにしっかりホールドしてね。自分の懐に抱き抱える位の心構えで押さえ付けるのよ」

「ふぎいいいぃぃぃん!」

「足裏指圧中に、しこりみたいなのを感じ取ったら得にそこを重点的に刺激してあげてね。それが老廃物の塊だから、」

「い゛や゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁぁぁ!!?」


 イチイチ悲鳴がなんか面白いわねこの子。

 顔を真っ赤にしながら、涙を流しつつ、まるで陸揚げされた鮮魚の如く椅子の上で跳ね回るリューテシア。

 しかしルークとリュカの二人にしっかりホールドされてるので、どれだけ泣き叫ぼうが、じっくりと私の施術を受ける事は確定している。


 オシオキをする為に、わざと台湾式足つぼマッサージを選択したのだ。

 マッサージにも種類があるが、罰ゲームとして通用するレベルに痛いのは間違いなくこの台湾式足つぼが筆頭候補である。


「でも勘違いしないで欲しいのが、足つぼマッサージっていうのは、ただただ力任せに足裏を指で押し込めばそれで良いって物でもないって事よ、指圧の心は母心、って言葉もあってね。相手を労わる、相手の疲れや痛みなんかを改善してあげたいっていう心構えが一番大切なのよ」

「痛いいいいぃぃ!! 痛いのおおおぉぉおおお!!」

「あ、あの……ミラさん? リューテシアさんが先程から凄く痛がってるようにしか見えないんですが……?」

「痛いって事は効いてるのよ」

「は、はぁ……そうですか……」


 次いで、足裏に存在する反射区を実際に指圧しながら説明していく。

 腎臓、膀胱、胃に心臓、目や腸……ここが痛い人はここの身体機能が不調なのだという説明を、リューテシアの面白い悲鳴をバックグラウンドミュージックとして奏でながら二人に解説する。


「――ま、こんな感じね」


 じっくりねっとり、リューテシアの足裏を刺激する事約30分。

 マッサージの講義とリューテシアへのオシオキを兼ねた一石二鳥の一時に一段落付ける。


「ふ、はぁ……ん……お、終わっ、たぁ……」

「何を勘違いしてるのかしら? まだ私の指圧フェイズは終了してないのよ?」

「――ゑっ?」


 そう、一段落付いた。

 これで「片足」の施術は終了したのだ。


「じゃ、最後に右足の方もやっていくわよ。勿論こっちも同じ位時間を掛けて、しっかりほぐして行くわよ」

「あ――や、いや……」



 車外にまで轟く、止まぬ悲鳴。

 周囲は人通り皆無の、未開の地。

 リューテシアの叫びを聞き付け、助けてくれる英雄はこの地に存在しなかった。

僕、マ民なんです

マッサージ動画、良いよね

見てるだけで癒されるよ

僕のマ民レベルがどれ位かと言うと、

小学4年生の頃温泉に行った際、親にねだって100円貰ってマッサージチェアに座るレベルである

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