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6.地理情報確認

 二日目にして仕事の全行程の大半が終わってしまい、天井を仰ぎ見ながら一息付き、今後の予定を考える。

 昨日は地図を確認しながら足を使い、この村の近辺を散策した。


 ――私は、この世界を知っている。

 私がいた世界とは異なる、この異世界。

 異世界なれど、この世界の情報はある程度頭に入っている。

 だが、私の知っている知識と今現在の状態には必ず齟齬がある。

 世界は常に変動しているのだ、当然と言える。

 だからこそ、私の知らない所に関しては手の届く範囲で調べて、その食い違い部分を可能な限り減らさなければならない。

 今日はこの村の周辺情報を整理してみよう。


 私がいるオリジナ村が存在するこのロンバルディア地方は、最大規模大陸であるファーレンハイト領と隣接しており、

 そこを南北に分断するようにファーロン山脈が大陸上を斜めに横断している。

 この山脈が実質国境線という事なのだろう。

 この地方は亜寒帯~寒帯に属しており、その植生も寒帯らしい針葉樹林が中心である。

 原則雪に包まれているが、最も気温の上がる季節になれば雑草位は生える程度には温かくなるようだ。

 鉱山や狩猟が貨幣獲得手段であったが、今は狩猟がメインとなっているらしい。

 そして、このロンバルディア地方を更に二分するかのようにテューレ川が走っている。

 これがロンバルディア地方のおおまかな地形のようである。


 一番目立つのは、この村から見て北東に存在する白霊山(はくれいざん)という場所だ。

 この世界で最大を誇る最高峰であり、また大陸中で最も寒い地域でもあるという。

 永久凍土まみれ、完全なる氷雪気候であり、まともな人間が生存するのは不可能な地域。

 凶暴な魔物も存在しているらしく、地元民も滅多な事では近付かない危険地域らしい。

 魔物とは知性の無い異形の生物の事を指しているらしく、その姿は多岐に渡るそうだ。

 私もそういう存在がいるという事は知識として持っているが、実際に見た事は無い。

 まぁ、野生動物と似たようなモノだと考えれば、この世界で生きていくに辺り否応なしに拝む事になるでしょう。


 オリジナ村から西へ向かい、テューレ川を越えた先には隣村であるルシフル村という場所がある。

 何でもそこは人類の敵である魔王に深手を負わせたという傑物、勇者の生まれ故郷らしい。

 勇者か、確かこの世界に存在するっていう特異点の一人だったわね。

 どんな人物かは知らないけど、戦闘能力だけは折り紙つきなのは間違いないはず。

 怖い怖い、敵にならない事を祈るばかりね。


 また、北西には鉱山跡地がある。

 テューレ川の源流にも隣接しており、この村からは中々距離がある。

 話によると昔は鉱石採掘で賑わっていたらしいが、何でもアーニャから聞いた話では正体不明の呪いが発生しているそうだ。

 鉱石も粗方採掘し尽くしてしまったので、そのまま破棄されたらしい。

 それにしても呪い、ね。馬鹿馬鹿しい。

 呪い悪霊エトセトラ、そんな物は恐怖心が生み出した幻想でしかない。

 この鉱山跡地は、私の持っている知識の中にその存在は確認出来ない。

 何時出来たのかは知らないが、ここは要確認のようね。


 川を越えて南下すると、ファーロン山脈にぶつかり、そこを横断するファーロン山道に出る。

 その山道を越え、平野部を抜ければこの世界における最大規模である国家、聖王都ファーレンハイトへと向かえる。

 一応知識としては持ち合わせてるけど、まだこの世界で現存してるなんてね。

 積み上げた歴史だけは随分と荘厳みたいだけど、アランやルドルフの反応を見る限り、蜥蜴(とかげ)の如く嫌われてるみたいね。


 これが現状、地図と伝聞、自分の足等を加味して知った情報の全て。

 私の持つ情報は古い。

 この世界が今どうなっているかは、伝聞と目で確かめるしかない。

 しっかし借り物にケチ付ける訳じゃないけどこの地図、等高線が無いのよね。

 そのせいで地形の起伏が全く分からない。

 どの辺りから丘だとか、ここは平野部だとかは書いてあるけど、大雑把すぎて正直な事を言えば目安位にしかならない。

 測量技術とか、この世界では発展してないのかしら。

 中世レベル以下の生活水準を魔法の力で強引に引き上げてる、って所かしらね。

 科学技術の発展した世界で育った私からすれば、生活水準が低すぎて余りにも辛い。

 もう冷たい水に触りたくない。


 私はこの世界で生きていかなければならない。

 その為にはこの世界、少なくとも自分が立っている場所の事を知る事は重要であり、手の届く範囲に関しては必要な事は大体知れた。

 だから次は遠出の準備とねぐらを用意しないと、こういう借り住まい暮らしでは本当の意味では落ち着けない。

 そうなればやっぱり必要なのは……金か。

 取り敢えず、現状の情報だけじゃどうしようもないわね。

 今の所一番気になる鉱山跡地ってのに行ってみたいな。

 あわよくば何か残ってるかもしれないし。

 残ってないなら別にそれはそれで良いや。



―――――――――――――――――――――――



 翌朝、残った仕事の全てを終わらせた私はアーニャへと地図を返却した。

 もう地図の中身は頭の中に入ったから必要無いからね。

 そして鉱山跡地へ行きたい事を告げる。

 しかし聞いた所、直線距離ではそう大した距離では無いらしいが、

 既に鉱山が破棄されてから長い年月が経っているらしく、

 元々往来に使用していた道は完全に荒れ果て、雪降り積もる悪路となっているらしい。

 馬車といった移動手段も使えず、そこを強引に進むとなると片道最低3日は見なければいけないらしい。

 往復でならほぼ丸々一週間の旅路である。

 流石にその距離を単身生身で踏破は……無理ね。

 アレが使えれば問題ないんだけど、今は使えないし。

 どうやら私がこの異世界に漂着した時期も悪かったようだ。

 アーニャいわく、雪や寒さが一番酷い季節こそ過ぎたものの、春は少々遠いらしい。

 本格的に動けるのは春先になってからという事か、じれったいなぁ。

 まぁ仕方ないか、それまではこの村で引き篭もり生活するしかないか。

 人様の家で、ってのがあるからイマイチ気が休まらないけどなぁ。

 折角なので、アーニャにこの村に技術職の人物はいるか訊ねてみる。

 聞いた所、この村にはオキという人物が鍛冶職を営んでいるとの事。

 オキ、か。確か以前アランが話してた人物が同じ名前だったわね。

 ちょっと訪ねてみようかしら。

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