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43.本拠地作り! 頑張って!

 リューテシア、リュカ、ルーク。

 この三人の頑張りのお陰で、本拠地になるであろうその入り口が完成した。

 地上から真っ直ぐに伸び、駅となる終点、本拠地的には入り口にてこの鉄道は終着となる。

 駅となるこの空間は、後々の事を考えてかなり広めに空間を押し広げてある。

 横幅は三十メートル程、長さは一キロ程、天井までの高さは十メートル程確保してある。

 かなり広めだが、大は小を兼ねるという。大き過ぎて困る事は無いだろう。

 入り口を作ったので、次はいよいよ居住区画を作ろうと思う。


「良かったわね! これでいよいよあの仮住まいからの卒業も近いわよ! 頑張ってねリューテシア!」


 まだこの地下には光源が無いので、地下開拓の際は私もリューテシアもカンテラを持って行動している。

 カンテラの明かりのみなのでリューテシアの表情が伺い辛いが、返事が帰って来ない。

 喜びの余り言葉に詰まっていると思う事にする。


「――ま、一番最初に必要なのは大広間よね。じゃ、サクッと作っちゃいましょうか」

「人事だと思って……! 押し広げるのって相当体力も魔力も使うのよ!」

「知ってるわよ。だから頑張ってって応援してるじゃない」


 私はロクに魔法が使えないのだから、リューテシアに頑張って貰うしかない。

 魔法を扱える人物はルークもいるが、ルークの魔法に関する才能はリューテシアには遠く及ばない。

 こんな大規模な地形改変を行う魔法を使えるレベルには達していないのだから、やはりリューテシアに頑張って貰うしかないのだ。


 リューテシアに気合を入れつつ、頑張って大広間の作成をして貰う。

 休息を挟み、大広間の奥にもう一つ巨大な空間を頑張って作って貰う。

 がーんばれ。がーんばれ。

 こちらは広さも高さもかなり必要で、一日ではとても製作が終わらなかった。

 でもリューテシアに頑張って貰ったお陰で、二週間程でこの空間の拡張工事が終わった。

 次に作るのは――


「次は、個室ね。そろそろ一人きりになれる部屋が欲しいと思わない? プライベートを確保したいでしょ? したいよね? じゃあ頑張って行きましょうか!」


 リューテシアに激励を送りつつ、私達四人分の個室を作成して貰う。

 扉に関しては後付けで取り付ける予定なので、今は室内の作成だ。

 個室の広さはおおよそ十畳程と、上の仮拠点と比べると少々手狭だ。

 とはいえ、これは一人分の部屋。

 一人で十畳を使えるとなれば、そう容易く手狭になる事は無い。

 これだけあれば充分だろう。


 各人の個室が出来たので、今後は上の拠点から少しずつ荷物をこの地下に移していく事にする。

 一先ず、ベッドは各人の個室に配置する事にした。

 今後の寝泊りは、この地下で過ごす事になる。

 地上と比べて地熱でとても温かいので、下手したら掛け布団が年中必要無い程だ。


 寝泊りする分には困らないだけの、地下施設の開拓は完了した。

 明日からは、魔法を扱う事が出来るリューテシアとルークに少々お勉強をして貰う事にしよう。



―――――――――――――――――――――――



「な、何ですかこの部屋は――!?」


 翌日、カンテラ片手にリューテシアとルークを以前私が魔法陣を刻み続けた部屋へと案内する。

 部屋一面に書き巡らされた術式の数々を目の当たりにし、ルークは驚きを吐露する。


「この部屋に、地下施設を稼動させる為に必要な術式の全てを詰め込んだわ」

「……何だか良く分からないのが沢山あるんだけど……本当にこれ大丈夫なの? 暴発したりしない? こんな地下で爆発起きたらタダじゃ済まないわよ?」

「大丈夫に決まってるでしょ。誰が絵図引いたと思ってんのよ」


 リューテシアの疑問に関してはバッサリ切り捨てる。

 好い加減、カンテラに使う油も勿体無く感じて来た頃合だ。

 そろそろまともな光源が欲しいから、魔法の心得がある二人には頑張って貰わないと。


「で、この施設を動かすに当たってちょっと二人には充電に協力して貰おうと思ってね」

「じゅうでん?」

「ま、ちょっとそこのすみっこにまで来て。訓練用の区画を用意してあるから」


 私がこれから二人に任せようと思っている作業は、その稼動部分の一部にこの世界では入手が不可能な代物を使用している。

 使い方を誤れば、最悪部品の一部が破損して取り返しの付かない事態になる。

 出力ミスで術式の回路が焼けるだけなら書き直せば済むのだが、そうもいかない箇所があるなら慎重になるのは当然である。


「この一角に関しては練習用に用意した場所だから、ミスっても大丈夫よ。ちょっとここで練習して貰うから」

「練習は良いのですが、何をすれば良いのでしょうか?」


 私が連れて来たこの場所は、以前術式を仕込んだ後に余ってしまった余剰スペースだ。

 その足元には簡単に書き記した制御魔法術式が刻んである。


「そうね。ちょっとこの魔法陣の中心に立ってみて」

「こうですか?」


 私がそう指示を出すと、率先的に魔法陣の中心に立つルーク。


「そこで、魔法を発動しようとか一切考えないようにしながら、ただ魔力を放出してみて。イメージとしては身体の全身に纏うような感じで良いわ」

「……こんな感じでしょうか?」


 ルークの身体から放出される魔力に反応し、足元の魔法陣が発光を始める。

 魔法陣から放たれる光は赤色であった。


「まぁ、一回で成功するとは思ってないわ」

「えっと、駄目ですか?」

「赤色って事は、出力が大き過ぎるわね。もっと出力絞ってくれるかしら?」


 この魔法陣は、出力調整に慣れて貰う為の訓練術式である。

 魔法陣の上に立った者の魔力放出量に応じて、魔法陣から放たれる色が変化するようになっているのだ。

 適切な魔力量を放出できた時のみ、この魔法陣は青色に発光する。

 放出する魔力量が足りていないと黄色に、逆に多過ぎると先程のように赤色に発光する仕組みとなっている。


「この魔法陣は放出する魔力量に応じて発光する色が変化する仕組みになってるの。これから二人には、この魔法陣を常に青色に保てるように頑張って貰うわ」

「何故魔力量をそんな風に調整しなければならないのですか? 出せるだけ出してしまえば良いのでは?」

「馬鹿みたいに魔力出されると、術式に組み込んであるそこのバッテリーが破損しちゃうのよ。充電ってのはドバッて注げばドバッて溜まる、なんて単純な仕組みじゃないからね。適切な量を常に保って貰わないと困るのよ」


 過剰な魔力を注がれると、あの替えが聞かないバッテリーが破損する危険性がある。

 一応セイフティとしてヒューズの役目を果たす術式も存在しているが、過信せず慎重に行かせて貰う。

 それに、焼き切れたヒューズ機構の術式をイチイチ書き直すのも手間だし。

 焼き切れない適正出力を出して貰った方が良いに決まってる。


「ちょっとずつ魔力の出力量落として、落として……そう、そこ――あっ、逆にちょっと落とし過ぎ。黄色になっちゃったわよ、黄色だと量が足りてないのよ」

「こ、これ中々難しいですね……こう、でしょうか?」

「んー、青と黄色の明滅ね。匙加減位の量だけ上げて――そこでストップ。その量を常に維持してみて」

「かなり、青色の範囲が狭いですね……これは中々難しいですね」


 ルークの額に玉のような汗が浮かんでいる。

 魔力を放出した事による肉体的な疲れ、ではないはず。

 私にはこの量の魔力を出すのは厳しい物があるが、私が指定している魔力量は多少魔法の心得がある者であらば簡単に達成出来る量なのだ。

 出力調整がシビアなだけで、放出する魔力量的には大した量ではない。

 肉体的なカロリー消費量で例えるなら、早歩きからジョギング程度の量でしかない。

 慣れれば数時間位は垂れ流しにし続ける事だって余裕なレベルに収まっている。


「じゃ、リューテシアもちょっと感覚掴む為にやってみて。ルークは一旦休憩ね」


 ルークを魔法陣から下がらせ、入れ替わりにリューテシアがその上に立つ。


「……多過ぎると駄目なのよね?」

「そうね。抑え気味でスタートしてみてね」

「抑え気味ねぇ……こんなもん、きゃっ!?」


 リューテシアが魔力を放出した途端、カンテラの明かりすら溶けて消える程の赤い閃光が室内に閃く!

 一瞬光ったその光はすぐに収まり、再び室内はカンテラの明かりのみが照らす薄闇へと戻る。


「目が、目がああぁ……」


 モロにあの閃光を見てしまった。

 視力が戻らないが、私と同じ様に閃光の直撃を受けたであろうルークの呻き声が横から聞こえる。


「もうちょっと加減しなさいよリューテシア!」

「加減したわよ! かなり少なめに出したのよ!?」


 視界が回復してきたので、リューテシアの足元の魔法陣を確認する。

 あーあ、完全に焼き切れてるわこりゃ。書き直しね。

 どんな馬鹿魔力注ぎ込んだらこんな事になるのよ。

 幸いというか練習用なので当然というか、術式の補修はすぐに終わった。

 私の腕があればちょちょいのちょいよ。



 その後、リューテシアが術式を焼き切らないレベルまで出力を落とせたのは魔法陣を5回程潰してくれた後であった。

 二回目辺りからもう私とルークは学習して事前に目を覆っていた為に、視界を奪われる事は無くなっていた。

 魔法陣の破損こそしなくなったが、それでも未だに魔法陣の発光は赤色のままである。

 魔力量が多過ぎるのも考え物だなぁ。

 まぁ頑張ってね二人とも。こればっかりは私には出来ない事だから。

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