表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/209

40.地下開拓開始、出来損ないの『知識』

 更に翌日。

 再び軽く換気をした後に、空気の膜を解除する。

 完全に火山性ガスの排気も終わっており、空気の膜を解除した後でも呼吸に支障が無い。

 ただ、以前感じていた温かい空気は完全に霧散してしまっている。

 これは先程行った強烈な換気が原因なので、その内また地熱で温かくなるだろう。

 さて、それでは開拓するとしようか。

 空気の膜による束縛からやっとこさ開放されたので、ものぐさスイッチ内から一枚の羊皮紙を取り出してリューテシアへと手渡す。


「……何よこれ」

「この羊皮紙になるべく、思いっきり魔力を注ぎ込んで。換気も済んだから、ここでぶっ倒れる事になっても問題ないし」

「地属性魔法の術式なのは分かるけど……ぶっ倒れる位までなんて絶対嫌よ」

「ぶっ倒れるはまぁ、過剰な言い方だけど。それ位の気概でやってねって意味よ」


 リューテシアに渡したのは、以前空いた時間に書き溜めておいた羊皮紙の一枚だ。

 この坑道内に住処を作るのは決定事項だったので、前もって用意しておいたのだ。

 本来想定していた場所とは違う場所で使う事になったが、術の発動には問題ない。


 リューテシアが一呼吸置き、集中する素振りを見せた後に、羊皮紙に溢れんばかりの魔力を注ぎ込む。

 額に汗する程の膨大な量を術式に導通した反応熱で一気に羊皮紙が燃え上がり、構築された術式が発動する。

 リューテシアを中心に坑道内部、その外壁が次々に軋んだ音と共に押し潰されていき、

 外壁を押し固めながら広がっていく。

 やがて高さ3メートル程、広さは30平方メートル程の空間が出来上がる。

 出来上がった外壁を手で叩いてみると、ペシペシといった具合の音が鳴る。

 反響音のしない、強く固まった外壁に仕上がっている。これならば余程の事が無い限り崩落する事は無いだろう。

 それに、後から手を加えるし。


「……まさか、本当にここに住む気?」

「ここには住まないわよ。ここは中枢部にする予定だから」


 私達が本格的に住む、地下居住区は後で作る。

 科学で何とかなるなら科学で、科学で何とかならないなら魔法で。

 また魔法でどうにもならない事は科学で作り上げる。

 魔法と科学を折衷し、高みへと昇り詰める。

 そうやって私達人類は進歩発展を遂げてきた。

 この考え方、精神だけは尊い物だと私も認めてるからね。

 こっちの世界でも、存分に振るわせて貰うわ。



―――――――――――――――――――――――



 翌日から、私とリューテシアはこの地下空間にこもり切りになった。

 現状徒歩でしかこの地下まで降りて来れないのだから、片道で一時間も掛かる距離だ。

 風呂に入りに地上に上がる以外、私達は地下に潜りっ放しだ。往復する時間も惜しい。

 ルークとリュカがそれなりに石鹸作りも慣れてきたようなので、石鹸量産はこの二人に丸投げしている。

 リューテシアが日の光を浴びたいと嘆いているが、快適生活の為にはこの居住空間構築は避けて通れない。

 なのでリューテシアの尻を叩きながら構築を急がせる。

 竹で作った仮住まいからは早く脱却したいのだ、リューテシア自身もその恩恵に与れるのだから、頑張って貰わないとね。


 今、リューテシアにやって貰っている作業は主要幹線道の開通だ。

 精確に地上までの距離を計測する計器は無いが、一度換気口として穴を開け、その開通位置を見れたのでそこから適切な位置は導き出せた。

 丁度鉄道を敷設してある場所、その始端に繋がるように、スロープ状に道を魔法で伸ばして行く。

 最終的に今開拓している通路と敷設済みの鉄道を繋げ、この地下居住空間まで鉄道を延ばす予定だ。

 道作りはリューテシアに一任し、私は既に出来上がったこの空間で、私にしか出来ない事をする。


 ――頭の中に叩き込まれた、数多の記憶。

 私の世界の産物、英知の結晶。

 かつて私が、彼等の目指した頂へと登り詰める為に渡された、知識の数々。

 今ここで……解き放つ。

 目を閉じ、大きく深呼吸を一つ。

 身体から余計な力は抜き去り、この地に必要な式を刻むべくただただ無心に腕を動かす。


「――動力部は『フレイヤ』の予備バッテリーを使用。必要な術式羅列開始。この地には火山活動の兆候が見られる、最大懸念事項は地震による地下崩落、地属性魔法による継続的崩落防止……長期間状態維持は困難と断定。『時』の能力使用……消費が大きくバッテリーから供給出来る魔力量では困難。適用区画を限定、皮膜状に展開する事で消費量を低下、運用圏内まで消費量低下を確認。バックアップ領域構築、アンチウィルス、ファイアウォール術式構築。外部からの不正アクセス時強制カットアウト、カウンターアタック許可。プロテクト第一層、第二層、第三層、構築完了。座標固定、後日支保工による要補強。換気用風属性術式構築開始……構築完了、ラベル設定による自動認識、接続テスト開始……クリア。光源確保の為、無線方式による魔力供給、変換術式構築、応答テスト開始……クリア。光源には圧縮、出力調整済み『プロメテウスノヴァ』を使用。術式構築開始、クリア。排水用水属性術式構築開始……構築完了。逆流、出力過多による術式破損防止の為、魔力ヒューズ術式構築開始、構築完了。拡張端子構築開始、構築完了。端子部分にセキュリティ機構の構築開始、構築完了。セキュリティ機構とアンチウィルス、ファイアウォール術式の連動開始、クリア。システム強制シャットダウン用コード設定、設定完了。魔力認識による管理者権限委譲機構、プログラム構築。完了――」


 口に出しながら漏れがないように確認していく。

 このシステムが何十年、何百年、何千年と使われ続けたとしても、一切エラーが起きないように。

 完璧な術式を構築するべくその手を動かし、術式を刻む。


「――エラー発生時のヘルププログラム構築完了、リンクスタート、クリア。遠隔によるシステムロックプログラム、構築完了。魔力による廃熱冷却術式、構築完了……」


 ……ふぅ。

 とりあえずこんな物で良いか。

 これだけ用意すれば、少なくともこの中枢部区画はこの世界の人々の技術レベルでは難攻不落、不沈の要塞と言っても過言ではないレベルまで強化出来た。

 あー疲れた。帰ってお風呂入りたい。というか入る、絶対に入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ