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22.話し合い

長ぇよ!

 朝……だと思う。

 久々にゆっくりと眠れる環境があり、遂に誰に気兼ねする事も無く存分に睡眠を貪る環境が整った為、

 自然に目が覚めるまでぐっすり眠ってしまった。

 室内は、とても暗い。まだ日が昇ってない? それとも逆に寝すぎて夜になった?

 そんな事を考えていて、思い出した。

 そういえばこの部屋、窓も明かりも無いじゃない。

 そりゃ暗くて当たり前だわ。後で明かり用のランタンを出さないと。

 僅かに扉の隙間から光が漏れ出ているのを見付け、手探りで扉を開ける。

 坑道の外へ出ると、まだまだ寒い空気が肌を刺す。外は既に完全に日が昇っていた。

 太陽の位置的に、もう完全に昼であった。


「おはようございます、ミラさん」

「……おはよ。リュカは?」

「まだ寝ているようですね」


 ルークに軽く挨拶の返事をし、外で思い切り身体を伸ばす。

 ルークとリューテシアは既に起きていたようで、特にする事が無いので暇そうに外を眺めていた。

 やりたい事、やらなきゃいけない事ってのはいくらでもある。

 でもとりあえず今日は。


「昨日言った通り、今日は基本的にお休み。長旅に鉱山跡地までの強行軍、その後に仮住まいを一日中作ってたんだから。寧ろ一日丸々休んでもまだ足りない位よ」


 彼等三人を私は買い上げた。

 買い上げた以上、この三人に対して衣食住の保証、及び健康管理等私が責任を持って動くのは義務である。

 酷使して過労、注意力散漫になり大怪我、下手をすれば命を落とす。

 そのような未来にならぬよう配慮するのは、雇用主の義務、責任だ。


「まぁでも休みと言っても、生活に必要な分は動かないといけないけどね。流石にもう昼だし、ルーク、リュカを起こして来て。そしたら、三人で手分けして下の滝の辺りで漂着してる流木を一日分持ってきて、今日一日の薪にするから」


 完全に打ち上げられた流木は乾き切っているので、薪にはピッタリである。

 ルークに起こされ、目元を擦りながらもリュカは何とか起きて来たようだ。

 リュカはそういう種族なのかかなり毛深く、

 黒に近い茶色の体毛が寝癖で爆発し凄い事になっていた。

 この辺りは私達しかいないだろうけど、直しておけと言っておいた。



―――――――――――――――――――――――



 三人が流木を拾い集めている間に、私は私で一抱え分位の生木を切り落として持ってきた。重かった。

 一日使う分には充分な量の薪が集まったので、暖を取るのと同時にやっておきたい事を同時進行するべく、

 ものぐさスイッチの亜空間内から大き目の壺を一つ取り出す。

 蓋が付いており、密閉出来る形の物である。

 少量油を染み込ませた枯れ草に種火を放り込み着火、薪に火が移り、充分な火力になった所で焚き火の中に壺を置く。

 壺の中に先程切り落としてきた生木を適当な大きさに切って折って放り込み、壺に蓋をして密閉した。

 後は、火を絶やさぬように気を付けながら待つだけだ。

 暖まれるようにルーク、リューテシア、リュカの三人を焚き火の側に座らせて、こちらの考えを伝える。


「今日一日、休みにしたのは疲労回復の方が目的ではあるけどそれ以外にも理由はあるわ。貴方達三人を奴隷商から買い上げてから、有無を言わさず長々と連れ回したし、暇があれば基本的に作業ばかりさせていたから色々説明不足な所があると思うのよ。だから今日は、貴方達が私に対して何か質問があるかっていうのと、こっちからもより細かい質問をしたいっていう、まぁ簡単に言えば情報の刷り合わせ、話し合いの時間ね」


 数週間の馬車の道中、馬車に乗っていない休憩時間に作業をしていたので、休む時間は基本的に馬車の中であった。

 馬車に乗りながらノコギリを動かす訳にも行かないので仕方ないのだが、そのせいでこの三人としっかり時間を取って話し合う機会が無かったのだ。

 食料はファーレンハイトにて大量に仕入れた物でしばらくは食い繋げる、寝床も確保した。

 なのでようやく一息付ける環境が出来上がり、こうして話す時間を用意出来たのだ。


「明日からはまた作業を色々始めるし、そうなるとのんびり話し合える時間ってのもそんなに多く取れなくなるだろうし。だから今の内に疑問・質問・提案、そういうのがあったら全部言っちゃって。答えられる物に関しては全部答えるわ」


 あと、今後の方針を立てる為にもこの三人がどんな事をどれ位まで出来るのか、

 特に魔法使用の制限を掛けられていたルークとリューテシアだ。

 この首輪を付けられているイコール、魔法を使用する事が出来るという事なのだから。


「――では僕からまず、二つだけ聞かせて下さい」


 先陣を切って手を挙げたのは、ルークであった。

 その澄んだ青い瞳でこちらを真っ直ぐに見詰めながら、真剣な表情で訊ねてくる。


「ミラさん、貴女は僕達を最終的にどうする心算ですか?」

「私が貴方達三人をどうこうする気は無いわ、反抗するなら別だけど。最終的に貴方達がどうなりたいか、その中に奴隷身分から解放されたいというのがあるならば、貴方達を縛る奴隷契約書、破棄するのもやぶさかではないわ」

「……ではもう一つ、ミラさん自身は最終的に何をしようと、何処へ行き着こうと考えているのですか?」

「随分哲学的な質問ね、それ。何でそんな質問をするのかしら?」

「ミラさんの種族は人間なのでしょう? という事は、その見た目からして貴女の年齢はどう考えても少女同然なはずです。にも関わらず、見た事も聞いた事も無いような魔法や武器を操り、僕達を買い上げられる大金を持ち、このような辺鄙な所に居を構えようとしている。ミラさんの行動方針、目的が分からないのです」

「目的ねぇ。誰でも考えてるような事よ? 程々に働いて、衣食住に困る事無く自由に暮らしたい。私が今の所考えてるのは、それだけよ」

「それを成すだけであらば、こんな場所で暮らす必要は無いでしょう。僕達三人を買う為に払った金額、あれだけの額があれば少なくとも一生生活に不自由無く暮らす事が出来たはずです。にも関わらず、何故貴女はわざわざ僕達に大金を投じて、こんな場所に来たのですか?」

「――そうね……」


 ルークの質問に、何て答えるべきかしら。

 沈黙の中、焚き火から空気が爆ぜる音が弾ける。


「私が気楽に生活する、それを成す為にはその為の環境が必要。でも私一人じゃそんな事出来ないからね、だから人手が欲しかったのよ」

「なら、労働者を雇えば良かったのではありませんか?」

「……この世界を見て、確信したわ。私がこれからここで成そうとしている事は、間違いなくこの世界を変える。良くも悪くもね。そして私と一緒に働く以上、その知識の一端を貴方達にも見せるし教える事になる。そうなった時、途中で逃げない保証が欲しかったのよ」


 そう、だから私はわざわざ奴隷を買った。

 有限の手札はそのほとんどが戦う為の物であり、暮らしを快適にする物ではない。

 だから人手が必要だった、私を裏切らないという保証が付いた人手が。


「――こんなに長々と付き合わせた後に聞くのも遅い気がするけれど、ここで二つの選択肢を貴方達に選ばせてあげる。まぁ、今までの道中で私が貴方達にどんな仕事を与えるかは分かったと思うのよ。だから今までの試用期間を踏まえて、これからどうするかを決めてもらうわ」

「せ、選択肢、ですか?」


 トライアル雇用制度という物がある。

 この仕事が自分に合っているか、そして雇用主が労働者の力量を見定める為の仮入社期間である。

 私はこの約一ヶ月間程、この三人の能力を間近で見させて貰った。

 私としては彼等の能力は全員及第点を越えていると判断した、

 なので是非ともこのまま居て貰いたいが、無理強いはしない。

 このままここに残るも、向こうへ戻るも彼等の自由だ。

 私は彼等から選択の自由を奪う気は毛頭ない。


「一つは、これから私と一緒にここで働きながら生活する事。今はまだ不便だけど、徐々に環境と待遇は良くする事を約束するわ。それと、望むなら奴隷契約書も破棄しても構わない。但し、奴隷契約書を破棄するのは貴方達がそれぞれ自分に付けられた値段分の働きを成してからだけどね。ま、簡単に言うと奴隷の境遇から抜け出したいなら、働いて賃金を稼ぎ、その稼ぎで自分の身柄を買い戻せって事よ」


 契約書の破棄、と聞いてリューテシアの目付きが鋭くなる。

 射殺すような眼差しではなく、希望の欠片を見付けたような光を宿している。


「奴隷から……抜け出せるの……?」

「相応の仕事を果たして貴女が望むならね。リューテシアなら、金貨五千枚分のね」


 その額面を改めて口に出した事で現実に直面したのか、唇を噛むリューテシア。

 それも当然だろう、そんな簡単に返済出来るような額ではない。

 私は別に、魔力量さえ充分保有してれば男だろうが女だろうがどうでも良かったのだけれど。

 無駄に若くて整った顔立ちだったのが災いしたわね。そのせいで金貨五千枚なんて馬鹿げた額に膨れ上がった訳だし。


「それともう一つは、また奴隷商の館に戻る事ね。もしかしたら、私よりも高待遇を提示した上で貴方達を買ってくれる人がいるかもしれない。まぁ十中八九、男は命を使い潰されて、女は慰み者になるのがオチでしょうけどね。でも可能性はゼロではないわ」


 そう、可能性は無くはない。

 何処かの貴族様に見初められ、ゴールインした上で幸せな生涯を送る可能性も、ゼロではない。

 例えコンマ以下小数点が無数に並ぶようなか細い可能性でも、無くはないのだから。


「だから、ここで選びなさい。仕方なく、ではなくて自分の意思で。今の貴方達にはこの二つの選択肢以外を選ぶ権利は無い、でも人生なんてのは不便なモノよ、毎回毎回自分が望む選択肢を選べる人なんてほんの一握りしかいない。だから――」

「僕は、このままミラさんと共にここで暮らさせてもらいます。いえ、させて下さい」


 遮るようにそう断言したのは、ルークであった。

 驚く程の即断であった。


「あら、本当に良いの? 億万長者の心を射抜いて生涯安泰豪邸暮らし、って可能性は私の元では絶対無いわよ?」

「ええ、構いません。そのような可能性は僕には有り得ないので。奴隷の身分に落ちて、一番最初に見つけられたのがミラさんで良かったと思っています。心の底から」

「貴方って中々の美貌持ってるし、ご令嬢をメロメロにするのも無理じゃないと思うんだけどなー」


 そう、ルークは最初こそあんな地下牢に押し込められていたせいで酷い身なりだったが、

 しっかりと栄養を取らせて身体を綺麗にしてやったら、見違えるようになった。

 目鼻立ちも整っており、甘いマスクを持った好青年だ。

 面食いの女性相手ならばちょっと流し目で微笑んでやれば簡単に落とせる位のイケメンだ。


「少々事情がありまして。僕がそういう路線で成り上がるのは絶対に不可能なんですよ」

「言い切るわね。一体貴方に何があったのよ?」

「ファーレンハイトのお上のゴタゴタに巻き込まれた、と言っておきます。どうしてもというなら、仔細お聞かせしても構いませんが」

「……良いや。私がこんな辺鄙な場所に居を構える理由の一つに、そういう面倒臭いしがらみに囚われたくないってのもあるし」


 私は自由に気楽に生きたいのだ。

 他者と繋がるのは一向に構わないが、他者に縛られたくはない。

 そうなっては、私が一体何の為にここに立っているのか訳が分からなくなる。


「――本当に良いのね? 私と一緒に来るなら、少なくとも借金を完済するまでは本当の意味での自由は与えないからね?」

「構いません」


 念を押したが、キッパリと再び断言するルーク。

 そうか、ならもうルークにこれ以上言う事は無い。


「ルークはそうするのね、分かったわ。それじゃあリュカとリューテシアはどうする? 質問内容を聞いてから考えたいなら質問受け付けるわよ」

「ぼ、僕も! ミラさんと一緒が良いです!」

「本当に自分で考えてそう言ってるのよね? ルークが言ったからじゃあ自分も、って考えだと後悔する事になるよ」

「ミラさんは、こんな奴隷で汚らしい僕にも優しくしてくれた。美味しいご飯や、あったかい布団をくれた。他の人は、こんな事絶対にしてくれない」

「貴方も言い切るわね、絶対なんて事は無いと思うんだけど」

「……リュカ、君は人と魔族のハーフなんだろう?」


 ルークの半ば確信に満ちた質問を聞いたリュカは、途端にその巨体を縮めながら怯え始める。


「何でそれが問題な訳?」

「ミラさんはご存知無いのですか? 人と魔族は、この世界を二分し何百年にも渡り血を流す争いを続けている怨敵ですよ? そんな両者から生まれた半人半魔である者は、人と魔族の両方から忌み嫌われる悪しき存在というのがこの世界の常識です」

「でもルーク、貴方は普通に接してるじゃない」

「生まれた命に罪は無いんですよ、だから僕はそんな理由で誰かを嫌ったりはしません。それに……そんなものよりもっと汚らわしく恐ろしいものを見ているので」

「生まれた命に罪は無い――――か」


 ルークが軽く言い放ったその言葉。

 その言葉が私の心に深く突き刺さる。


「……私も、生きていて良いんだよね……?」

「ミラさん? どうかしましたか?」

「ううん、何でもないわ」


 怯えきって身体を小刻みに震わせるリュカの肩を優しく叩く。

 まるで命乞いをする小動物のような深く沈んだ目が、こちらを向く。


「リュカ、別に貴方がどんな生まれだろうが私からすれば知ったこっちゃ無いわ。良いじゃない生まれなんて別にどうだって。貴方がここにいるという事は、少なくともリュカは両親に愛されてこの世に生まれたんだから。それに、私もルークもそんな事でリュカを傷付けたりはしないわ。そうでしょうルーク?」

「ええ、勿論です」

「こ、こんな僕でも……い、良いんですか……?」

「良いわよ別に。何なら、奴隷の身分から解放された後でもずっとここに居ても構わないわ。貴方の居場所が見付からないっていうならね」


 というか、そうしてくれた方がこっちとしても有り難い。

 まだ震えているリュカを両腕で背後から抱きしめる。

 奴隷という苛烈な環境に置かれていたのだ、どれ程酷い目にあったかなんて、私の口から言った所で白々しいだけだろう。

 だから私は何も言わない、何も言わずにただリュカを抱きしめてやる。

 こうやって人の温もりを感じるだけでも、多少は心の傷というのは癒える物だ。


「……落ち着いた?」

「は、はい」

「そう、なら良かった。それじゃあリュカもよろしくね」


 リュカの顔が何だか先程より赤くなってる気がするが、

 恐らく焚き火で血行が良くなった結果だろう。

 私だってさっきから大分身体が温かくなって来たし。

 というか後ろから抱き締めてて思ったけど、この子もふもふであったかい。

 良いなー、寒くなさそうで。


「じゃ、最後はリューテシアね」


 私が一番欲しい人材にして、恐らく一番の難敵。

 いきなり最初から私に怯えるでもなく震えるでもなく、敵意をぶつけてきたのはこの中ではリューテシアだけである。


「……私は、人間が憎い。人間を絶対に許さない」


 この場の流れや空気に感化されたのか、リューテシアは初めてその重い口を開き、感情を顕にする。

 年若い女性の物とは思えぬ、スレた刺々しい目だ。


「だから人間であるミラ、貴方が嫌い」

「好き嫌いは個人の自由だから私はとやかく言う気は無いけど、種族とかいう本人にはどうしようもない事で好き嫌いを決められるのはちょっと頂けないわね。何でそんなに人間が嫌いな訳?」

「人間達は、私の住んでいた村を襲った。村に火を放ち、お父さんもお母さんも殺された……! だから、絶対に許さない!」


 リューテシアの黒い感情を吐露する都度、リューテシアから放たれる魔力が揺らぎ、強さを増す。

 成る程ね、これが彼女の魔力の根源でもある訳ね。

 個人の魔力量というのは、感情によってその強さが増減するというのは私の世界での研究結果から既に分かっている。

 だからこのリューテシアが抱える心の闇こそが、彼女の膨大な魔力量の源。

 私はそれを利用しようとしているし、今更利用しないという考えも無い。

 それにその問題は、私が関知するものではない。


「許す許さないは貴女の勝手だけどさ、今この場では関係ないから少し落ち着いてくれるかしら?」


 折角落ち着いたリュカがまた怯え始めているし。


「それに貴女の好き嫌いは今関係ないから。リューテシア、貴女はここに残るのか、それともまたあそこに戻るのか、改めて選ぶ機会を与えてるだけ。それと質問の機会をね。貴女がどうしたいのかだけを今は答えれば良いの」

「私は……私は、レオパルドに戻りたい! 私の故郷に帰りたい! こんな場所、居たくない!」

「戻るにしても今すぐは無理ねー、貴女がどういう経緯で奴隷に落ちたか、何となく見えた気がするけど。どんなに理不尽でも今の貴女は借金持ちだから、奴隷契約書が存在する限り、逃げる事は出来ないわよ。私か別の人かを選ぶにしても、場所が変わるだけで境遇は変わらないわよ。貴女自身が行動を起こさない限りね」


 私は、自分で選んで行動したわよ。

 自分で選んで自分で動いた結果、今私はこの場に立っている。この場で生きている。

 

「だからその上で選ばせてあげる。さぁ、どっちにするの?」


 半ば恫喝に近い口調でリューテシアに選択を迫る。

 私は、例え奴隷相手でも指示はしても命令はしない、したくない。

 私自身が命令されたくないから、他人にもしない。

 だから多少不自由であっても、リューテシアにも道を自分の意思で選ばせる。

 人質を取って強要だとかそういう非人道的な手段は使わずにね。

 何かあっても、自分で選んだなら自己責任。

 選択肢なんて他にない状況を作っておいて選ばせる私も中々あくどいとは思ってるけどね。

 でも他人より我が身が大事、人間ってそういうものでしょう?

 人間は誰しも他者を利用して生きているのだから。


「…………私も、ここで良い。ここなら、少なくとも薄汚い人間のオスに犯される事もないし」

「操を守る為ねぇ、そういう事らしいよルーク?」

「……僕に言及したのは何か深い意図があっての事ですか? 言って置きますが例え奴隷になっても魂までは落ちたつもりはありませんよ?」


 口調は穏やかだが癪に障ったのか僅かに語調に怒気が混ざるルーク。


「ごめんね、気に障ったなら謝るわ。この辺りはデリケートな問題だから私は触らない事にするわ」

「それにしても何故、ミラさんはわざわざ私達にこのような事を問うたのですか? 奴隷相手なのですから、命令すれば良かったでしょうに」

「私、命令するのもされるのも大嫌いなの。だから誰が相手だろうと、命令だけは絶対しないわ。指示とお願い位はするけどね」


 「私」は命令しないけれど、他の奴隷を買った連中はそうではないだろう。

 契約書に縛られた奴隷は、主人の命令は絶対である。

 それ故に、肉体的な関係……性欲の捌け口にされている奴隷が存在しているのは容易に想像は付いていた。

 事実、ファーレンハイトでもそういう目的の為に買われた奴隷の姿も目撃している。

 リューテシアは恐らくそこを一番恐れたのだろう。

 だから、ここに残る選択肢を取ったのだと想像は付く。

 そういう意味では、同性である私という存在は無視出来ないファクターだったのだろう。

 同性ならば犯される心配も無いと。



 この娘、同性愛者って存在が頭からスッコ抜けてるみたいね。

 いや、別に私はレズじゃないけどさー。

 余計な事だから薮蛇やらかさない為にも黙っている事にするのであった。

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