表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/209

1.彷徨う命


「――私は、自由になりたかった」



「自由気ままに、ただ一人の人間として、気楽に世界で生きたい。今でもその気持ちは変わらない」



「実に下らない夢だと思う。だけど、私からすればそれこそ、魔法以上の夢物語だった」



「だから、私を縛り付けるこの地を去ろうと思うの。そろそろ、潮時だと思うから」






「だからサヨナラは言わないよ。……またね、――――」






―――――――――――――――――――――――



 (ほの)暗い雲天の空の下、闇夜の(とばり)が降りようとしている。

 容赦無く空から舞い散る雪の中、歩き続ける一人の影。

 切り揃える事も無く無造作に腰まで伸びた黒髪、吸い込まれるような深さの黒い瞳。

 服装は薄手の布切れ1枚のみであり、外套所か靴すら身に着けておらず裸足のまま。とても雪原を歩く装備とは思えない。

 当然のように、寒気に晒された肌は血色を失い白く染まっている。

 その人物は小さく白い吐息を散らし、歩を進める。


 その人影が進む先には、ぼんやりと小さく明かりが灯っていた。

 僅かに確認できる程度の光だ。恐らく距離にして数百メートルはありそうである。

 その光を目指しその者は歩く。

 小さな身体を揺らし、弱々しい足取りで懸命に進む。


 歩き続け、その光源の出所が一軒の家屋だと分かる程の距離まで歩み寄る。

 しかし、体力の限界が来たのだろうか。

 その者は降り積もり続ける新雪の絨毯の上に倒れこんだ。

 最早精も魂も尽き果てたか、動く気配は無い。



 そんな行き倒れた人物の側に、一つの人影が音を立てて近付いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ