第6話:vsセラム(激突編)
優馬達の旅は順調に進んでいき、地竜を使っての移動も今日で2日目になる。
「なあサラ、このペースで進んだらタルトまでどのくらいかかるんだ?」
「このペースでいけばもうあと4日くらいじゃないかの。」
「4日か~まぁいいんだけどさ、こう何もないと退屈だよな。なんか道に人が倒れてたりとか、洞窟っぽいのがあったり、急にバトルになったりとかさ、いかにも冒険って感じのが欲しいよな。」
「いや、そんな荒事よりも今は2人の時間を楽しむのが先じゃろ?」
今は優馬とデートをしてる最中なのだ。道に倒れてる人を拾ったり、何者かと争いになったりなどは必要ない。
「でもな~1日中座って揺られてるだけってもの退屈なんだよ。」
確かに初日の時以来どこにも立ち寄らず、そもそもこれより先にタルトの他に町もなく、ただただ広いフィールドが広がるだけでその風景もさほど変わらない。
しかしサラはそんな旅路でも優馬と2人で過ごせるだけで楽しかった。
今のこんな会話でも魔王という立場であの城に籠っていては出来なかったことだ。
城にいても部下に指示を出したり、悪事を働いた輩を処刑したりするだけでたまに会う兄と妹以外と気の許せる会話などなかったのだ。
ましてやその相手である優馬は自分にとって特別な相手で、初めてのデート中である。その全てが新鮮でありまた、気を張らなくていい自然体で楽な生活ができており、それはかつてない開放感をサラに与えていた。
だからサラはこの気持ちの少しでも優馬に感じてもらえたら少しは楽しんでもらえるんじゃないかと思っていた。
「じゃあ妾と話をするのじゃ。」
「話?なんの話だ?」
「優馬は勇者として召喚された時いきなり妾の城の前に居ってすぐ妾の所に来たのじゃろ?」
「まあそうだな。」
優馬はさも当然と答える。
「じゃったらこの世界はどんな所かとかも何も知らないのじゃろ?」
「そういやそうだな。」
「じゃったら妾がそれを教えるのじゃよ。」
「お、マジか。それは助かる。」
さっきまで緩んでた優馬の顔が一気に色を取り戻した。
「う、うむ。そうじゃな…ならば…。」
サラはこの魔界にどれだけの民が住んでいて、どこにどんな町があるのか、またそこではどんな物が作られていて何が美味しいとかどれが綺麗だとかをその日1日話続けた。
翌日
「それで人間界の方はどうなんだ?俺以外にも結構勇者が召喚されてたりするのか?」
「そうじゃの…妾も人間の国についてはそんなに詳しくはないのじゃが、勇者は結構召喚されてるはずなのじゃ。」
「そうなのか?」
「現に妾は戦ったことがないのじゃが四天王達からは勇者を葬ったとの報告を何度か聞いたのじゃ。」
「そうだったのか…。」
優馬の顔に少し影がさした。
「じゃ、じゃがもうこれからは少なくとも妾は人間を殺したりしないのじゃ。優馬が悲しむことはしないのじゃ。」
サラが必死にする。
「ん?いやそれは別にいいよ。俺関係ねぇし。それに殺されそうになったら正当防衛だろ。」
「じゃ、じゃがさっき優馬が悲しそうな顔を…。」
「あぁ、それは先に死んだ奴らはサラの顔も見ずに死んだのかと思ったら不憫でな。」
「ほぇ?」
「いや、だってどうせ死ぬのが確定してるならゴツゴツしてきしょく悪い四天王の奴らよりは可愛い女の子に殺される方がいいだろ?あ、でも勇者が女だったらその限りじゃないのか…う~ん…でもあいつらきしょく悪いしな…。」
「きしょく悪いって…皆優秀な部下じゃぞ…。」
「いや、あのよく絡んできたえっと…アザール?」
「アズールじゃ。いい加減覚えてやらないと奴が不憫なのじゃ。」
どこからか『アズールです!』と聞こえてきた気がした。
「そうそうアズール。あいつも腕4本に甲冑と兜の隙間からうっすらと煙が漏れてて目が赤く光ってるとかどこのホラーだよって感じだぞ?他にもゴリゴリのマッチョだけど下半身は獣みたいなので悪魔っぽい羽根と角生えた奴とかさ。とにかくお前の部下恐ぇんだよな。」
「まぁ魔人じゃからの。」
散々の言われようだがサラからはフォローはない。
「まぁ俺はその死んだ勇者とかどーでもいいんだけどな。会ったこともないし。」
「一応お主の同族じゃぞ?」
「そりゃ俺だって知り合いがそうなったら気にするけどさ、毎日どっかで誰かが死んでるだろ?そんなのいちいち気にしてられねえよ。そいつらが死んだのは己の力不足を知らずに無謀な攻めをやったからだ。いわば自業自得だ。そんなの馬鹿だなくらいしか思わねぇよ。まぁ、魔王はここにいるし、もう無駄な死人は増やさなくて済むとは思うけどな。」
「一応例の書状は人間の国にも出してるから無駄に城に攻める勇者は減ると思うのじゃ。」
「ならそれでいいじゃねえか。」
「そうじゃな。」
その日はこれ以上深く話はせず、そのまま会話も少なくゆっくりと過ごした。
さらに翌日
午前中何事もなく(ずっと何も起こっていない)進み、昼が近づいた頃。
そろそろ昼飯を食べようかと思った所でそれは起きた。
「やっと見付けたですよ!」
「ん?なんだ?」
「む?この声は…。」
俺達が振り返ると後方から凄い勢いで砂塵が迫ってきていた。
「うわっ!なんだあれ。」
優馬が走った時はそれよりも凄い砂塵とソニックブームが発生していたのだが本人は知らないので初めて見る脅威にびっくりしていた。
「落ち着くのじゃ優馬。恐らくあれは妾の…」
「やっと追い付いたですよ姉様!」
「お姉様!?なんだ?サラに妹がいたのか?」
「言っておらんかったかの?」
「いや聞いてねえよ。」
「そうか、すまんかったの。妾には妹と兄上が1人づつおるのじゃ。」
「それでその妹がなんでわざわざこんなとこに?」
「それは知らんのじゃ。」
ちょうどその頃砂塵は止まっていた地竜に追い付き手前で急停止した。
「とりあえず一回降りるのじゃよ。」
「そうだな、俺も近くで会いたいし。いや~サラの妹だろ?絶対可愛いもんな。」
「んなっ!?う、浮気は許さないのじゃ!しかも妹相手なんて絶対駄目じゃぞ。」
「そもそも俺はハーレム目指してるから浮気とかないんだけどな。」
「じゃからそのハーレムも認めないのじゃ!」
「そいつは無理だな。」
「なぜじゃ…妾と2人きりじゃ駄目なのかの?」
「俺の夢だからな。そこは譲れねえ。」
「優馬の…夢…。」
「おう、それにはサラの存在も必ず必要になってくる。」
「わ、妾が必要…。」
「だからこれからも頼むぜ。」
「うむ!」
あっさりと懐柔されているのはサラがチョロ(ry。
「姉様!どうかしたですか?」
「そういえば妹が来てるんじゃった。優馬も早く降りるのじゃ。」
「おう。」
俺達は地竜の上から飛び降りて地面に降りるとそこにいたのはサラより身長が低く、サラの髪を深紅のロングヘアとするなら彼女の髪はそれよりも明るい紅緋色の短いツインテール、角もサラと違ってツインテールの前にちょこんと可愛らしく生えている。顔立ちはサラに似ていて綺麗だが目元がまるで親の仇のように俺を鋭く睨み付けつり上がり
「あれ?俺なんかしんねぇけど初対面でめっちゃ嫌われてる?」
初対面の印象は悪かったようだ。
「そりゃそうじゃろ。初対面でそれだけじっくり観察されたら誰でも嫌がるのじゃ。」
俺はその言葉でやっと無意識に近づいてじっくり見ていたことに気がついた。
「おっと、失礼。また無意識にやっちまった。」
「姉様!なんなんですかこいつは!」
「書面で知らせた通り勇者優馬じゃ。」
「こんな失礼な奴に姉様が負けたですか!?」
「まぁ妾と初めて会った時もそんな感じじゃったからそこはもう仕方ないと思うのじゃが
、確かにそうじゃ。妾は優馬に負けたのじゃ。」
「くっ!信じられないですよ。こんな奴と姉様が結婚なんて…。」
「結婚?俺が?なんで?」
「はい?」
セラムの目付きが一層キツくなり優馬を射殺さんとする目付きになる。
「あなたは姉様と結婚するのでしょう?」
「いやしないよ?」
「姉様?」
「い、いや、確かに優馬にハッキリと結婚の話はしてないのじゃが、優馬が『旅が終わったら魔王になる』って言ったからそれで…。」
「つまりこいつは魔界のルールも知らずに魔王になるとかほざいて、姉様もこいつと詳しく話をしていないという事ですね?」
「そ、そうなるのじゃ。」
「では姉様の結婚は嘘ってことですね。」
「いや、あながち間違ってないんじゃね?だってサラは俺のハーレムメンバーその1だし。」
「……こいつは何を寝ぼけた事をほざいてやがるですか…?」
セラムのこめかみがピクピクしてるが優馬は気がつかない。
「俺はハーレムを作りたいんだよ。それでサラはその第1号。」
「仮にも魔王に対してその暴言、殺されても文句はないですね?」
「なんでだよ。俺はただサラと仲良くしてるだけだぜ?」
「それが問題なのです!たかが人間風情が魔王相手に話しかけるだけでも頭が高いのにその人間の方が立場が上だなんてふざけるなです。姉様が駄目なら私が殺してやるです。お前私と戦えです。」
「俺は女の子に手をあげれないから駄目だ。」
「だったら姉様の時と同じ条件でいいです。私の魔法に耐えてみせろです。」
「それならオッケーだ。俺はどんな攻撃も避けない。けどサラでも俺に勝てなかったのにえぇーっとそう言えば名前は何て言うの?」
「セラムじゃ。」
サラが教えてくれる。
「それじゃあセラムちゃん、サラも出来なかったのにセラムちゃんに出来るのか?」
「その為の準備はあるです。あと気安く名前で呼ぶなです。」
そういってセラムちゃんは毒々しい色の瓶を取り出しそれを一気に飲み干した。
「セラム!お主それは!」
サラが驚愕して身をのり出す。
「これで私のステータスは全て5倍です。さあ、いくです!」
「よしこい!」
『フォースチェンジ魔力、防御、回避、幸運!』
セラムが両手を上に掲げ唱えるとまるで元○玉みたいな玉が出現し、徐々に大きくなっていった。
「私のステータスを犠牲にしてその分の固定ダメージを与える魔法です。今の私は姉様の『エンドレスサイス』よりも何倍も強いですよ。」
「優馬!セラムの飲んだあれは『五倍湯』と言って一時的に全ステータスを5倍にする代わりに効果が切れた後で耐性無視の麻痺と激痛を伴う激薬じゃ!気を付けるのじゃ!」
「なんだって!?くっ…なんてものを…。」
「何を言ってももう遅いです。私のステータスを5倍にして作ったこれでお前を消してやるです。」
「くっ…何とか出来ねぇのかよ…。」
「さぁくらうです!」
セラムが振りかぶり俺に向かってそれを当てる為にゆっくりと手を動かしていく。
その時俺達の間を風が吹き抜け俺の汗を冷やしていく。
このどうしようもない状況に俺も緊張しているという事だろう。
「へくちっ。」
その緊張に水を差す可愛らしい音が響いた。
見るとセラムが鼻を押さえていた。
しかしその可愛らしい状況も時と場合による。
今まさに降り下ろそうとしている最中に手を放し鼻を押さえてるのだ、その最中にあったそれは力を失い重力によってそのまま下に落下する。
「マズイ!」
俺は咄嗟に飛び出し上を見て固まっていたセラムを弾き出してそこに割って入る。
「がぁっ!」
セラムがサラの足下まで飛ばされ転がる。
「優馬!」
それも気にせずサラが叫ぶ。
直後、俺はセラムが作った玉に当たりそのまま飲み込まれた。
玉は勢いを止めることなく地面に当たり、爆音を轟かせて破裂した。




